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特集 (3)14年間、ギラギラ走った

2014年3月31日更新
写真:舞台のフィナーレ。月組トップスターの龍真咲(りゅう・まさき)(中央)はひときわ大きな羽根を背負う=2014年3月、兵庫県宝塚市、諫山卓弥撮影 舞台のフィナーレ。月組トップスターの龍真咲(りゅう・まさき)(中央)はひときわ大きな羽根を背負う=2014年3月、兵庫県宝塚市、諫山卓弥撮影

 またですか? つい、そうつぶやいてしまう。宝塚歌劇団から、トップスター退団の知らせがくる。しばらくすると、また退団だ。

 わずか1年ほどで退団という例もあり、次々と変わるトップスターの軽量化が目立つ。命短し恋せよ宝塚ファンよ――とでもいうように。

 どうしても会いたい人がいた。眞帆(まほ)志(し)ぶき。海外の振付家が「連れて帰りたい」というほど、歌や踊りに抜きんでた元トップ。なにしろ1962年から14年もの間、主演で走り続けたのだから。

 ときは高度経済成長期。劇場には空席が目立ち、宝塚は解散説までささやかれた。「ベルサイユのばら」(74年)の大ヒットはまだ先で、時代の変化に取り残されてしまったかのようだった。

 そんな冬の時代を支えた一人が眞帆だ。抜擢(ばってき)は早く、宝塚大劇場での初主演は入団3年目、当時のトップの代役としてだった。

 「みんなが自分を見てくれる。すごく気持ちよかったのよぉ」

 下級生で、やはり元トップの汀(みぎわ)夏子はいう。「あまりにも芸達者で、すべてにたけていた。眞帆さんと一緒の舞台、本当にプラスになった」。汀もまた、入団1年目で準主役。スター路線を突っ走り、7年目でトップに。在任は10年間に及んだ。

 2人に会って感じるのは、いまだ失せぬスターの薫り。カメラを向けると、指先にまで神経をとがらせ、バシッと男役のしぐさを決める。背筋はピシッ。むせかえるような個性を全身から放つ。

 そうか。スターとは匂い立つことなのか。

 「最近の子は背も高くてスタイルもいいから、ほっといても男に見える。だからあっさりしすぎてる」。こんなベテラン演出家のぼやきを聞いたことがある。「昔は小柄な人も多いし、みんな必死で『スター』を強調していたんやけど……」

 「自然体」という言葉が歌劇の世界に現れ、個性という名の匂いが薄らいだのは、平成に入るころからだろうか。

 そして、スター誕生の道筋にも変化が見えてくる。

 「昔はいろんなチャンスがあって楽しかった」。戦前から戦後にかけて活躍した三枚目男役の神歌(かみうた)美鈴(91)は、こう話す。「通行人役で認められて、どんどん役のついた下級生もいたくらい」

 大抜擢という一種の変拍子に、演じる側も見る側も、心が揺さぶられ、沸き立った。

 ひるがえっていま。配役発表にそれほどの驚きはない。いつものトップが主役を務め、2番手、3番手と続く。天海祐希(46)は入団7年目でトップになり、主演していくが、これは異例。眞帆や汀が経験した「番狂わせ」の妙は楽しめなくなっている。

 ドラマに映画にCMに。かつて、スターたちは、いろいろな他流試合でもまれ、磨かれ、ふたたび宝塚の舞台で個性を競った。

 もっとくさく、もっとまばゆく。端的にいえば、物まねしやすいギンギラギンな個性をまとってほしい。スターはやっぱり、そうじゃなきゃ。=敬称略(谷辺晃子)

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