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NYを舞台に、IRA(アイルランド共和軍)の活動家として本国アイルランドのために闘う人々の30年間にわたる人間模様を綴るストレート・プレイ「THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー」(東京・兵庫公演は上演終了、全国3か所にて順次上演)。“正義の戦い”に身を投じながら、信念を揺さぶられ葛藤していくIRA活動家たちの姿を、スピード感あふれる会話劇でスリリングに描き出す。(フリーライター・岩橋朝美)
本作は “Work Play(労働の演劇)”の書き手として脚光を浴びる、イギリスの人気作家リチャード・ビーンによる戯曲だ。日本では養豚業の一代記を描いた『ハーベスト』に続く、2作目の翻訳上演。アイルランドとイギリスの血で血を争う抗争の歴史を背景に、究極の状況下に生きる人間の行動と、その裏にある複雑な心理を容赦ない筆致で描き込んだ物語は、骨太な輪郭と奥深い魅力を持つ。また、ブラックユーモアをふんだんに盛り込んだ台詞がシリアスな物語に緩急を生み、冒頭からグイグイと引き込まれた。
この日本人には難解なテーマの物語を、知的好奇心をくすぐるエンタテインメントとして立体化したのは、数々の賞に輝く注目の若手演出家・森新太郎。最近作『幽霊』でも見せた、メリハリのある照明や静寂を効果的に使い、人物の深層心理をあぶり出す手法が鮮やかだ。そして、本作の個性豊かな登場人物に命を吹き込んだのは錚々たる実力派役者たち。
有能な実業家としての表の顔も持つIRAのNY支部リーダー、“ビッグ・フェラー”ことデイヴィッド・コステロを演じた内野は、あふれるカリスマ性や人間的魅力とともに、後半に向けて30年という時間の経過の中でコステロが見せる多面性を見事に表現し、あっと驚かせる。彼の部下であるルエリ・オドリスコルを演じた成河(ソンハ)は、ただのお調子者のようでいて一筋縄ではいかない人物を練り上げ、また、IRAの隠れ家として自身のアパートを提供するマイケル・ドイルを演じた浦井健治は、人のよさとともに、確固たる意志を持たずどこまでも流されていく人間の“罪”をも感じさせた。
◆「THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー」
《東京公演》2014年5月20日(火)~6月8日(日) 世田谷パブリックシアター ※この公演は終了しています
《兵庫公演》2014年6月12日(木)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール ※この公演は終了しています
《新潟公演》2014年6月21日(土)~22日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
《豊橋公演》2014年6月28日(土)~29日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
《大津公演》2014年7月5日(土) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/05/the_big_fellah.html
《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。