マイコンテンツ

ここから本文エリア

特集 (1)明日海のトート、全身から妖しさ放つ

2014年9月16日更新
写真:「エリザベート」でトート役を妖艶に演じる花組トップの明日海りお=滝沢美穂子撮影 「エリザベート」でトート役を妖艶に演じる花組トップの明日海りお=滝沢美穂子撮影

 オーストリア・ハンガリー帝国に実在した皇后エリザベートの生涯を重厚な音楽と歌でたどる。義母の皇太后ゾフィー(桜一花〈いちか〉)との確執に悩み、頼りない夫の皇帝フランツ(北翔海莉)の裏切りに失望する。そんな姿は、いつの時代の女性にも通じる。やがて彼女は宮廷から遠ざかり、最期はスイスのレマン湖のほとりでルキーニ(望海風斗〈のぞみふうと〉)に刺殺される。

 皇后に常に寄り添うのが、「死」を意味するトート閣下だ。明日海のトートは青みがかったロングヘアに黒いマニキュアで、全身から妖しさを放つ。

 そんなトートの磁力に必死であらがうエリザベートには、この公演で退団する蘭乃(らんの)はな。難曲も歌いこなし、努力の軌跡が見てとれる。さらにりりしく、気高いエリザベートを最後まで突き詰めてほしい。

 一方、注文もある。

 冷酷で辛辣(しんらつ)であるはずのゾフィーに毒気がなく、暗殺者ルキーニもどこかさわやか。制御不能な狂気をはらんだ男には思えない。

 つまり、エリザベートの周りにうごめく人々の輪郭がはっきりしないまま、幕は降りる。とはいえ、それで作品の磁力が弱まるわけではないところが、名作の名作たるゆえんなのだろう。22日まで。(谷辺晃子)

戻る

【フォトギャラリーはこちら】