◆不幸中の…
都市の主要駅を結んで走る地下鉄は、便利な交通機関です。通勤通学で毎日使っているというかたも多いことでしょう。でも、大勢が利用しているだけに、事故があると大きな影響があります。2月に大阪市営地下鉄の御堂筋線梅田駅で起きた火災も、一時は運転を見合わせ、復旧後も梅田駅は通過するなどの影響がありました。御堂筋線といえば、新大阪、心斎橋といった主要な駅を結ぶ大阪市の大動脈。特に梅田駅はJRや阪急、阪神、他の地下鉄への乗り換え駅であり、周囲はデパートが並ぶ繁華街です。ホームの倉庫から出火したのは午前9時ごろ。通勤通学の混雑のピークは過ぎていましたが、約3千人の利用客が駅員の誘導で避難しました。この火災から地下鉄の安全対策を検証する原稿が用意されました。避難には駅員の適切な誘導が必要ですが、その駅員の数は、近年の省力化で減り続けているとのこと。「だが、今回は出火時刻が幸いした」。たまたま交代時間の直後で宿直明けの駅員もいたため、通常の倍の人手があったという状況の説明です。しかし、この「幸いした」という表現に、ちょっと引っかかりました。駅員が多くいたことは不幸中の幸いですが、朝から思わぬ事態に巻き込まれた乗客たちにしてみれば、何時であろうと出火は「幸い」とは言い難いはず。出稿部にアピールした結果、「だが今回は偶然、駅員が多い時間帯だった」という表現になりました。
この火災には、私たちの同僚も巻き込まれ、ホームに煙が満ちてくる中を避難しました。別の路線を使っている同僚は、振り替え輸送で超満員になった車両でぎゅうぎゅう押されての出勤でした。そんな彼らの声を聞くまでもなく、その場にいた乗客が読んでひっかかる表現はないかなど、いろいろな視点から読むよう心がけています。
◆エリコいろいろ
人の名前は、言語や文化によって様々ですが、日本語の名前は、世界でも数が多いのではないでしょうか。たとえば欧米の名前はキリスト教に由来するものが多く、つづりは大体決まっています。日本の名前は、読み方も書き方もいろいろありますし、「子」「太郎」などがつけば別の名前になります。「太郎」ではない「太朗」さんもいます。私の名前はワープロソフトで変換しても出てこない、というかたも結構いらっしゃるでしょう。
校閲の仕事の中で、名前の確認はとても重要なものの一つです。原稿の中に出てくる人名が正しいかどうか、できる限り調べますが、最初の箇所が正しかったからといって安心はできません。ある原稿に「恵理子」という名前が出てきました。ところが、何度か出てくる中で1カ所だけ「恵里子」になっていました。筆者が漢字に変換するときに間違えたり、デスクが手を入れているうちに違う字を入れてしまったり、こういうミスの原因はいろいろありますが、「理」と「里」は、見た目の印象も似ていて、うっかりすると素通りしてしまいそうです。
松任谷由実さんが「由美」になっていたり、仲代達矢さんが「達也」になっていたり――。変換ミス要注意の著名人の例です。このような情報の蓄積も、校閲の日々の仕事で役立てています。