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ことばマガジン

ことばマガジン 昔の新聞点検隊

昔の新聞点検隊

 物置を整理していたら、長く使っていないお茶わんを包んでいた古い新聞を発見。捨てようと思ったけれど、ついつい見出しに目を奪われて読み込んでしまい……。現代とは違う言葉遣いや懐かしい内容にぷっと噴き出す。そんな経験、ありませんか?

 このコーナーでは、今では考えられないような表現や面白い出来事、現代の表記基準とは異なるような記事を、朝日新聞社のデータベースに残る過去の紙面から発掘。現在の校閲基準と照らし合わせてみて、現代風に朱を入れつつ書き直してみることを試みながら、昔と今の違いを楽しく探るコーナーです。昔の紙面と今の紙面、みなさんのお好みはどちらでしょう?

下町の怪談 踊り出す猫

2012年04月03日
(約3600字)
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【当時の記事】

本所の怪猫 七不思議以上の怪談

本所区長岡町四十三番地の一廓は其昔松平子爵邸にて十二年前迄は本所養育院なりしが同院の移転後は此処に多くの長屋が出来住む人も少からぬ数となりぬ さる程に廿三日の午後二時頃そぼ降る雨の最中に同番地家屋周旋業池田義敬方表口より何処よりともなく大きさ小犬ばかりもある赤白斑の一匹の古猫ニャンとも言はず台所に入り来り 両の前足にて団扇を挟みすっくと立ちて座敷の方へと進み入るにぞ折柄主人不在にて留守居し居たる下女おみね(十六)は此有様に仰天なし六畳の間に長女お安(三つ)を添乳し居たる義敬の妻お芳(二十七)を呼び起したるより斯くと見しお芳は傍なる雨傘取って打たんとするに件の猫は些の恐れ気もなく前肢挙げてお芳のそぶりを真似するよりお芳も今は怖気を立て其儘に打捨て置きしに猫の姿は程経て台所口より掻き消す如くに失せたりしが同三時頃又々同家の掾側に現れ其場にありし払塵子(はたき)を担いで踊り出す騒ぎにお峰は驚愕の余り早腰を抜かしぬ 猫は斯る間に表口を出でて行方知れずなりたれば同家にては其後の戸締り厳重にホッと息せし甲斐もなく同四時頃に至り三度台所の欄間より侵入し来りしにぞお芳は遂に夢中となり傍の襁褓(おしめ)を打附けしに今度は其を頭に被りて散々踊り散らして立去りしがこの以来長女お安は虫を起し犬を見ても怖い怖いと泣き立つる始末なるが此猫は同日昼頃同番地菓子商宇田川亀太郎方へ赴き同人妻の右手に咬附き翌二十四日には又同番地大工某方へ姿を現し白手拭の頰冠りにて踊る処を棍棒にてしたたか殴打せし為め其後は絶えて姿を見せずなりたれど雨が降らば又もやノコノコと現れ来るならん其時こそは美事に手捕にして見せんと近所界隈の若者等手ぐすね引いて待ち居るとぞ果して然らば奇猫とや云はむ珍猫とや云はん・・・・・続きを読む

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