【映画で知る世界の現実(1)】 『ルート・アイリッシュ』に見る民間軍事会社
2012年03月30日
最近その思いを強くしたのが、3月31日に公開されるケン・ローチ監督の新作『ルート・アイリッシュ』だ。これはイラクでの民間兵(コントラクター)を描いたものだが、私はこの映画を見るまで、民間軍事会社(PMC=Private Military Company)の存在さえ知らなかった。イラクなどの危険地域に行く外国人兵士は、すべて各国の正式な軍隊だと思っていた。
映画は民間兵としてイラクに行ったフランキーの葬儀から始まる。彼の幼馴染みのファーガスは、軍隊を退役後に高給だからとこの仕事を勧めた仲だ。ファーガスはフランキーのイラク人助手が使っていた携帯電話を入手し、そこに残した映像を見つける。その映像を見ているうちに、フランキーの死に疑問が生じ、秘密を探るうちにとんでもない事実に気がつく。
まさかケン・ローチがイラク戦争を扱うとは思わなかった。彼は最初の長編『夜空に星のあるように』(1967)から、いつも労働者階級の日常を即興的な演出で描いてきた。シングルマザー、精神病患者、移民、失業者と描く対象は違っても、ある意味ではどの映画を見ても、おんなじだった。敵は政府か資本主義で、いつも恋愛や家族が救いになる。
そんな彼が今世紀になって、大きく変わってきた。・・・・・続きを読む
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- 古賀太(こが・ふとし)
1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/
WEBRONZA編集部
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