クロード・シャブロルの遺作『刑事ベラミー』公開によせて(下)――ジョルジュ・シムノン、コナン・ドイルの小説とシャブロル映画をめぐる覚書
2012年04月24日
まさにベラミー警視の人物像の一面を的確に言いあてていると同時に、『刑事ベラミー』という映画の作風を簡潔に要約しているような文章である。
ベラミーも妻に向かって、ルレという人間に興味を持った、と言うシーンがあるが、それこそがルレの事件にベラミーが深く関わっていくきっかけになるのだ。
そういえば、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ譚などとはちがい、本作ではベラミーの妻が、夫の相談役になったり告白の聞き手になったりして、家庭生活がていねいに描かれるところも、メグレ物からの着想かもしれない(妻の入浴シーンが艶っぽく描かれたり、ベラミーが妻と義弟との仲を疑ったりするディテールもある。もっとも彼女は、ホームズ譚におけるワトソン医師に近い役どころだとも言えようが、しかしベラミーはメグレ同様、ホームズのような天才的な推理機械ではないし、彼の妻が彼よりも聡明さを発揮する場面もある)。
とはいえ、シムノンは当然ながら、性善説を掲げる「ヒューマンな」作家などではない。ときにその観察眼は読者をたじろがせるほど辛辣だ。
たとえば、・・・・・続きを読む
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- 藤崎康(ふじさき・こう)
東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。現在、慶応義塾大学、学習院大学の講師。専門は映画表現論。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)
WEBRONZA編集部
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