特捜の「妄想」はなぜ生まれたのか。それは、功を焦った検事たちが「04年10月15日、胆沢ダム工事受注の謝礼として石川秘書(当時)に5000万円の裏金を渡した」という水谷建設元社長の供述をろくな裏付けもなしに信じ込んでしまったからだ。
たまたま同じ04年10月に陸山会は世田谷区の土地を買っていた。特捜部がその購入資金4億円の流れを調べると、石川議員 が10月13日からいろんな銀行口座に5000万円〜1000万円に分けて入金し、売買直前に集約して土地の売り主側に払っていた。
しかも、石川議員は土地の本登記を翌年1月にずらし、4億円の定期預金を担保に同額の融資を受けていた。これは水谷マネーを含めゼネコンから集めた裏金4億円で土地を買い、それを隠蔽するための工作だったにちがいない、と特捜部は色めき立った。
石川議員らを政治資金規正法違反(04年の土地売買を05年分の政治資金収支報告書に記載しているから一応外形的には成立する)で逮捕して追及すれば、石川議員は水谷マネーの受け取りを自白する。それを突破口に4億円の出所を追及していけば、他のゼネコンからの裏金も芋づる式に明らかになり、小沢 氏側の巨額の収賄事件を暴くことができる――。
それが特捜部の描いたシナリオだった。だが、案に相違して石川議員は水谷マネーをはじめゼネコンからの裏金受領を頑として認めず、取り調べを担当した田代政弘検事らは「石川さんは嘘をついていない」という心証を持った。他のゼネコンを事情聴取していた検事たちも小沢氏側へのヤミ献金を認める供述をまったく得られなかった。
決定的だったのは、石川議員が水谷マネーを受け取ったとされる日より3日前の10月12日に小沢氏から現金4億円を受け取ったことが確実になったことだ。これで購入資金4億円のなかに水谷マネー5000万円が含まれているとの見立てが崩れた。巨額のヤミ献金を隠すために収支報告書に虚偽記載したという筋書きが成り立たなくなったのである。
検察が2010年2月に小沢氏を不起訴処分にしたのは、こうした捜査の破綻を認めざるを得なくなったからだった。しかし、・・・・・続きを読む
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- 魚住昭(うおずみ・あきら)
ジャーナリスト。1951年、熊本県生まれ。一橋大法学部卒。75年、共同通信社入社。社会部記者として87年から司法クラブに在籍しリクルート事件などを取材。96年退社。司法分野や人物フィクションの執筆をしている。著書に『特捜検察』『渡邉恒雄 メディアと権力』『特捜検察の闇』『野中広務 差別と権力』(講談社ノンフィクション賞)など。
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