陸自の10式戦車、海自の哨戒機P−1、実質的には多目的空母であるヘリコプター護衛艦22DDH、空自のC−2輸送機など、自衛隊は近年、多くの新型装備(兵器)を次々と導入している。これらだけを見ていると非常に頼もしい感じを受ける。
だが、財政面からみて、本当にそのような新しい装備を次々に導入して、まともな調達と運用が可能かというと、実は難しい。予算がかなり逼迫しているからだ。予算が確保できなければ、30機必要な新型機が10機で調達を終わらざるを得ない。実際、陸自の戦闘ヘリAH−64Dアパッチや、偵察観測ヘリOH−1は調達数を大幅に減らされている。これでは想定した作戦は遂行できない。また整備の予算が確保できなければ、せっかく調達した新兵器もがらくたの山になる。兵器は必要な数を調達し、動かせてナンボである。そうでなければ高価な「玩具」に過ぎにない。多くの自衛隊の装備が予算不足で稼働していない。
新型装備も、ちまちまと毎年少数調達されるために調達が長期化し、途中で旧式している。しかも数が揃わないうちに調達が廃止され、次の装備の調達が開始されたりする。つまり調達計画は瓦解している。
防衛省の報告書「防衛生産・技術基盤」のグラフ、「防衛生産・技術基盤を取り巻く環境(2)〜正面装備の調達と装備品の整備維持に要する経費〜」(グラフ1)をみて見よう。装備調達の予算は平成2年(1990)の1兆727億円をピークに減少を続け、平成22年度(2010)には6837億円、およそ64パーセントまで減少している。
これに対して装備の整備維持費用は平成2年が4769億円で、金額的には装備調達費の約45パーセントだったが、その後増え続けて平成17年(2005)には金額で装備調達費を追い抜いた。平成22年度では7923億円となり、装備調達費よりも1086億円も多くなっている。
財務省が発表した報告書「日本の財政と防衛力整備」(平成22年度版)でも同様の指摘が行われている(グラフ2「防衛関係費の主要経費項目の推移」)。
なぜこのようなことになっているかというと、装備(兵器)の高度化・高額化に伴って整備や修理費などの維持費が増大し、装備調達費を圧迫しているからだ。今後もこの傾向が続く。つまり必然的に装備調達費が圧迫されていく。さらに実質的な装備調達費の一部である研究開発費も圧迫される。
しかもこれほど巨額の予算が充てられているにもかかわらず、装備の維持は充分ではないのだ。海上自衛隊は約80機の哨戒機P−3Cを運用しているが、その整備費が捻出できず、既存機から部品を取り外して別の機体の整備に使用する、いわゆる「共食い」整備をしているようなありさまである。当然稼働できる機体は減っている。陸自では最精鋭で、最も装備が充実しているとされる北部方面隊の攻撃ヘリでも予算不足、整備費不足、人員不足で稼働率は6割程度に過ぎず、8月に行われた演習では、他の方面隊から機材と人間を搔き集めて定数の12機を揃えた。
同じく陸自の偵察用オートバイ、トラック、無線機などは定数が足りない上に、現在使用している装備は既に耐用年数を過ぎてまともに動かない装備が多く、稼働率は低い。まともに動くものはわずか2〜3割に過ぎない。またトレーラーの類では、可動するのが数パーセントしかないものすらある。演習のたびに装備を周囲の部隊から掻き集めているのが現状だ。演習での通信は隊員の私物の携帯電話に頼っている。既存装備の整備や、兵站関連など地味な装備の調達はなおざりにされている。意外に状況がいいのは施設科(工兵)や汎用ヘリで、これは災害派遣やPKO(平和維持活動)などの「実戦」が常に存在するからだ。
装備調達を圧迫しているのは整備維持費用だけではない。燃料調達費も増加傾向にある。 ・・・・・続きを読む
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- 清谷信一(きよたに・しんいち)
軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03〜08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。
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