国内生産を前提とするのであれば、次期戦闘機(FX)で予定されている40〜50機という調達機数は余りにも少ない。まともにコンポーネントの多くを国産化するライセンス生産を行うのであれば最低でも70〜80機は必要だ。
コンポーネントを生産しない、単なるノックダウン(組み立て)であれば、主契約社はともかく、下請け企業にはろくに仕事が回ってこない。結局調達コストが上がる(恐らく約2倍程度)だけで、メリットはほとんどない。単にコストを押し上げるだけだ。
まして戦闘機の機能のコアであるレーダーや火器管制装置、ソフトウェアなどがブラックボックスだらけの米国製戦闘機であればなおさら国内生産する必要性は低い。
多くの報道ではライセンス生産と、ノックダウンあるいはアッセンブリー生産を混同しているものが見られる。確かに両者の明確な定義はないが、空自の調達関連の書類によると「ライセンス生産とは海外で設計・製造された航空機を日本国内で生産する手法で設計・生産した外国に於ける会社にライセンス料を支払って設計図やノウハウを購入し、国内ではほとんどの部品を生産して組み立てる方法である」と定義している。
対してノックダウン生産とは、部材のほとんどを輸入し、国内で組み立てることをいう。防衛省・自衛隊はMCH101やAH−64Dなどのヘリコプターを「ライセンス国産」と称しているが、これらはほとんどのコンポーネントを輸入しており、その実態はノックダウン生産だ。
繰り返すが今回のFXで予定されている調達機数では、コンポーネントの多くを「ライセンス生産」するのは不可能。せいぜい2〜3割程度のコンポーネントを国産化できれば御の字だ。となれば実質的にアッセンブリー生産となる。その場合、主契約企業には仕事は落ちるが、戦闘機生産の基盤を支えている多くの下請け企業に仕事は回ってこない。となれば戦闘機の生産基盤は事実上崩壊する。
F−35の開発パートナーであるイタリアはアッセンブリー生産を国内で行うが、コアな部分は米国から技術者がやってきてイタリア人を排除して生産する。我が国が、開発のリスクを負っているイタリアよりも好条件でアッセンブリー生産ができるわけはない。とならば ・・・・・続きを読む
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- 清谷信一(きよたに・しんいち)
軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03〜08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。
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