世界的に指導者の選挙が相次ぐ2012年の幕開けとなった台湾総統選は、国民党の現職である馬英九氏が民進党の蔡英文主席らを退けて幕を閉じた。統一など難しい政治問題は後回しにして、中国との経済関係改善を進めたことが評価されたといえる。だが、中国との関係が深まるにつれて、「政経分離」では対応が難しくなってきている。
1996年に初の直接選挙が導入されてから5度目の総統選。「台湾燃える」と形容されたほど、これまでの選挙戦は激しかった。与野党の支持者が暴力で対決したり、買収が日常茶飯事だったりした。メディアも中立ではなく、支持候補の応援団となっていた。
メディアの立場が鮮明であることには変わりはなかったが、選挙戦自体はおとなしくなった。立法院(国会)との同時選挙であったにもかかわらずである。
歩道を埋め尽くした候補者の旗は激減し、爆竹の音も聞こえなくなった。選挙につきものだった無料の食事提供もほとんど見られなかった。勝敗が決した後、馬、蔡両氏は互いの健闘をたたえ合った。私は台湾の民主主義は成熟したと実感した。
大陸と台湾を結ぶ航空機の直行便が毎週500便も飛んだり、1年で100万を超す中国人が台湾観光を楽しんだりして、このところの中台関係はすこぶる良好に見える。
しかし、大陸の中華人民共和国は台湾を自らの不可分の領土と主張しており、台湾の「中華民国」の存在は認めていない。中華民国の憲法は中国大陸も自らの領土と規定している。原則からいえば、中華人民共和国と中華民国は共存しえないのである。
そんな両者が交流を続ける前提としているのが「92年コンセンサス」である。中国語では「九二共識」という。 ・・・・・続きを読む
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- 藤原秀人(ふじわら・ひでひと)
1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員をつとめて、2012年4月から新潟総局長。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。
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