初度費とは兵器など装備の生産を始めるのに必要なジグ(道具)やラインの構築費用などの初期投資にかかる費用のことだ。ライセンス品であればこれにライセンス料などが加わることなる。
そもそも平成20(2008)年度から初度費が支払われるようになったのは富士重工がライセンス生産をしている戦闘ヘリ、AH−64Dの調達停止が発端となっている。
陸上自衛隊は当初62機の調達を予定していたが、10機で調達を停止することとなった(後に13機に変更)。当時、初度費用にあたる初期投資は毎年納品される機体に按分されていた。これが10機で打ち切られては初期投資が回収できない。このため初期投資の支払いをめぐって富士重工は訴訟を起こし、現在も係争中である。
なぜこのようなことが起こったかというと、我が国の装備(兵器)調達が異常だからだ。普通、諸外国では兵器の調達は、総調達数、調達期間、総予算が議会で審議され、承認されて、国とメーカーが契約する。新規開発であれば開発費用も調達プログラムに含められる。ところが我が国では開発予算と調達予算は別個に承認される。
しかも、総調達数、調達期間、総予算とも国会で審議されずに初年度の調達が決定される。これはつまり、ある装備が何のために、いつまでに戦力化する必要があり、そのための総経費がいくらかかるか、ということを国会が議論もしなければ関知もしない、ということになる。
文民統制の根幹は人事と予算だ。その予算に対するコミットを政治がしていない。これは文民統制上由々しき問題なのだが、我が国のメディアにはその意識がない。だから報道もしない。
つまりこれまで、防衛省の装備調達は防衛省とメーカーの暗黙の了解、いわば口約束、よくいえば紳士協定で行われてきたのだ。ところが防衛省に紳士が減ったせいか、その紳士協定を都合のいいように利用しだしたのだ。
防衛産業の最大の旨みは、 ・・・・・続きを読む
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- 清谷信一(きよたに・しんいち)
軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03〜08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。
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