実際、石原の思惑通りと評すべきであろうか、「尖閣買収発言」は、様々な反響を呼んでいる。たとえば、野田佳彦(内閣総理大臣)は、衆議院予算委員会質疑の席で、「尖閣がわが国固有の領土であることは国際法上も歴史的に見ても明々白々だ。所有者の真意も確認する中で、あらゆる検討をしたい」と語っている。
石原も、本来は尖閣諸島が適正な国家管理の下に置かれるのが望ましいと語っている。「尖閣買収発言」は、確かに日本政府の尻を叩く程の効果を示したのであろう。
ただし、留意すべきは、こうした諸々の反応の中でも、「尖閣買収発言」を「対中関係への配慮」の観点から批判する向きは、決して勢いが強くないということである。「尖閣買収発言」には、「東京都が買収するのは筋が違う」とか「そもそも東京都予算を尖閣買収に寄せていいのか」とかといった批判が主に寄せられているけれども、対中関係への配慮を軸とした批判は、『朝日新聞』や『毎日新聞』の社説を除けば、誠に弱い声でしかない。
無論、中国政府は、「尖閣買収発言」に定例通りの反発を示している。しかし、そうした反発を切実なものとして受け止める空気は、明らかに後退している。特に二〇一〇年の尖閣諸島沖漁船衝突事故の経緯は、中国の対外姿勢における「横暴」と「驕慢」の様相を世に印象付けた。
これに加えて、中国がヴェトナム、フィリピン、インドネシアといった国々との間に生じさせた軋轢は、既に広く知られるようになっている。もはや、日中関係の「過去の経緯」は、日本にとっては、多分に挑発的、膨張的な現下の中国の対外姿勢を容認し、黙過する材料とはならない。「尖閣買収発言」に対する反応が暴露しているのは、中国に対する視線やそれを取り巻く空気の変化である。
ところで、尖閣諸島にせよ竹島にせよ、昨今の領土に絡む「紛糾」の意味を考える際、想起されるのは、 ・・・・・続きを読む
この記事の続きをお読みいただくためには、WEBRONZA+の購読手続きが必要です。
WEBRONZA+(政治・国際 / \262(税込))を購読する方はこちら
朝日新聞デジタル有料会員の方ならログインするだけ!
「朝日新聞デジタル」を有料購読中の方は、ご利用中のログインIDとパスワードで
WEBRONZAのコンテンツがお楽しみいただけます。

- 櫻田淳(さくらだ・じゅん)
1965年生まれ。東洋学園大学現代経営学部教授。専門は国際政治学、安全保障。北海道大学卒、東京大学大学院法学政治学研究科博士前期課程修了。自民党衆議院議員の政策担当秘書などを経て現職。著書に『国家への意志』(中公叢書)『国家の役割とは何か』(ちくま新書)『漢書に学ぶ「正しい戦争」』(朝日新書)など。最近著に、『「常識」としての保守主義』(新潮新書)がある。
関連記事
WEBRONZA編集部
@webronza からのツイート購入手順 ヘルプ
- 朝日新聞Jpass新規登録(無料)
- Astandは朝日新聞Jpassの決済サービスを利用しています。朝日新聞Jpassに登録してログインIDを取得してください。
- 商品の購読開始
- 購読したい商品のページにある「購読する」ボタンを押して、購読手続きを完了させてください。
- マイコンテンツから閲覧
- ご購読いただいた商品は、ページ右上にある「マイコンテンツ」からご覧いただけます。




