竹とんぼは、翼が回転すると上向きの揚力が働き、その力で空に舞い上がる。下降する際も、この揚力でふんわりと降りてくる。ヘリコプターが、長い回転翼で揚力を発生させるのと同じ原理である。ヘリには、エンジン停止で航行不能に陥っても、「オートローテーション」と呼ばれる機能がある。落下時の空気抵抗により回転翼を回して揚力を得るため、軟着陸できるのはこの原理のおかげである。
一方、グライダーも長い翼の周辺に生じる揚力のおかげで、動力がなくてもゆっくりと滑空して着陸することができる。翼の大きな旅客機などが、エンジン故障などがあっても無事着陸できるのはこの原理による。
オスプレイは、万一の際、航空機のもつこうした原理の「恩恵」を受けないのだろうか。
ベトナム戦争当時から使ってきた米海兵隊の輸送ヘリCH46の後継機として開発されたオスプレイは、回転翼機と固定翼機の特徴を兼ね備えている。ヘリほどの大きさではないが、2つの回転翼(直径約11メートル)があるし、短いながら翼もある。垂直に上昇した後、飛行中に回転翼の角度を変えて、飛行機のように高速で水平飛行に移ることができるのが特徴だ。もし両者の機能が十分に備わっているならば、ひょっとすると開発段階から繰り返されてきた悲劇は避けられたかもしれない。
ところがベル・ボーイング社のトップが「現代の名機」とまで呼ぶオスプレイは、コンピューターですべての飛行を管理された特殊な航空機でもある。乱暴な言い方をすれば、ロールス・ロイス社製の2基の強力なエンジンで、重い機体を無理やり飛ばしているような印象さえある。オスプレイが抱える危険性については、米誌「タイム」が2007年、「V22 Osprey : A Flying Shame(空飛ぶ恥)」と題する記事で、徹底的に洗い出している(http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1666282,00.html)
オスプレイは、ヘリと固定翼機の「利点」を兼ね備えた航空機ではなく、反対に両者の「悪い特徴」を兼ね備えているとまで、この記事はこき下ろしている。
同誌によると、米国防総省の研究機関でオスプレイの主席分析官を務めていたレックス・リボロ氏は、2003年に内部報告書で同機にオートローテーション機能がないことを問題点として指摘している。竹とんぼの原理は働かないということだ。また、グライダーのように着陸しようとしても、独特の機体設計のために大きな回転翼が地面に触れて粉々に破損してしまうという。
日本の国会では、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員がこうした問題点を重ねて指摘している。ところが、防衛省側の説明は歯切れが悪い。社民党の照屋寛徳衆院議員の質問趣意書に対しても、2011年7月に出された菅内閣の答弁書は、機能の有無についての直接の言及を避け「回転翼航空機において、飛行中に全エンジンが不作動となった状態で、オートローテーションによる飛行に移行しない場合は、安全な着陸に支障を来す可能性があるものと考えられる」と述べるにとどまった。
オスプレイはかつて「欠陥機」と呼ばれた時代もあった。 ・・・・・続きを読む
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- 谷田邦一(たにだ・くにいち)
1959年生まれ。1990年に朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員などを経て、編集委員。カバーエリアは主に防衛問題。主要国の防衛政策から最新兵器、軍用技術まで軍事全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識が、現実の紛争地でどのくらい役立つのか検証取材するのが夢。2012年4月より長崎総局長。
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