体験してわかった高齢者医療の大問題−気管切開と胃ろう
2012年02月15日
余震が続く2011年4月に、近親の高齢者が脳梗塞で倒れた。右脳の大部分が損傷し、命にかかわるということで、脳を部分的に切除する減圧手術が行われた。担当医師の説明では、幸い左脳が無事なので、車イスでコミュニケーションがとれるくらいにはなるとのことだった。
ところが、手術後、出るはずの声が出なくなった。医師は「声帯がマヒしている。このままではいつ窒息するかわからないし、頭蓋骨を元に戻す手術もできないので、気管切開をする必要がある」という。さらに「手術は簡単で15分程度で終わる」と続けた。
家族側は慌てた。「気管切開」の影響がわからなかったからである。医師に説明を求めると、簡単な手術であること、けれども、患者の年齢と容態を考えると、元に戻せる可能性はほぼないとのことであった。つまり、自力で食事する可能性も、話をすることも、あきらめなさいということである。
家族側は話し合い、手術に同意することを拒んだ。三大疾病の中でも、脳梗塞は、一命を取り留めた後は、平均余命が健常者と変わらないという特徴がある。担当医が、頭蓋骨形成手術を無事に行って退院させたいという気持ちもわからないではない。しかし、家族は、その後、10年単位で介護にあたらなければならないのである。食事や会話は、患者本人にとっても家族にとっても、大変重要なことである。
また、当時の容態についても、担当医よりも長く患者の付き添っていた家族の目からは、医師が言うほど呼吸が苦しそうには見えなかった。さらには、患者本人が手術を強く拒否していた。
それでも医師は「声帯がマヒしたままで気管切開もしないとなると、受け入れてくれる病院はどこにもない」と、家族側からすれば、脅しにも聞こえるような説明を繰り返した。精神的な疲労が増していく中で、家族側は看護師長に「担当医を変えてほしい」と相談した。
病院のクレーム対応のためか、それを境に担当医の態度が軟化し、「しばらく様子をみる」ことになった。すると、・・・・・続きを読む
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- 伊藤智義(いとう・ともよし)
千葉大学大学院工学研究科教授。1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」を目指し研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など。
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