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宝塚プレシャス

宝塚コラム

男役の変貌〜荻田浩一論

演出家荻田浩一の宝塚時代の作品を通して、宝塚の男役の形を見定める

  XIV.興福寺の阿修羅像 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(7)(2009.08.28)

 ジョシュアがアレン・スローンの心臓を撃ち抜くと、背後の荒野にシェリル、殺された保安官ブルック、その妻アデラ、アンジェラの弟ルロイの姿が現れ、順に歌い継いでいく。死者が混じっていることからも分かるように、彼らは現実にそこにいるのではない。するとジョシュアの心中の存在であろうか。歌詞から考えるとそれも違っていて、一種のコロスである。すなわちジョシュアを見つめる作者の思…… 続きを見る

  XIII.エリザベート 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(6)(2009.08.21)

 フランスの文学理論家ジュリア・クリステヴァの「相互テクスト性(間テクスト性)」の概念によると、およそテクストというものは、いくらユニークに見えても、種々の別のテクストからの引用のモザイクである(私のこの文章が既にクリステヴァの引用で成り立っている)。

 宝塚の作品も同様である。「悲しみの銃弾」のアレン・スローンに、オーストリア・ミュージカル『エリ…… 続きを見る

  XII.継母の恋 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(5)(2009.08.14)

 アンジェラ・ルロイ姉弟のオルドラン農場には金鉱が埋まっている。もしブラントンがこの事実を知ったら大変なことになる。

 だからジョシュアはアンジェラに打ち明けられても、誰にも口外しなかった。しかしアレン・スローンが鉱石のかけらを拾ってブラントンに報告するので、不穏な空気が漂い始める。アレンが自分の権利を考えずにブラントンに話したのは、ジョシュアの善…… 続きを見る

  XI.ナグ・ハマディ文書 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(4)(2009.08.07)

 IXで述べたように、グノーシス主義の教会では、女性の地位が高い。そのことはナグ・ハマディ文書の『ヨハネのアポクリュフォン(ヨハネの秘密の書)』によっても知ることができる。

 この文書は1945年にエジプトのナイル河畔の町ナグ・ハマディで発見された。パピルスにコプト語で筆写されている。恐らく、発見地の近くに4世紀の前半以降存在したパコミオス修道院が…… 続きを見る

  X.エヴァ 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(3)(2009.07.31)

 世界は閉塞状況にあり、正塚晴彦と荻田浩一の主人公たちは、同じように孤独な闘いを強いられている。しかし意識の持ちかたがかなり違う。その違いはどこからくるのか。

 正塚晴彦の作品では、世界は不条理だが人間は自由である。主人公は苦しい状況の中で何とか自分の道を切り開いていこうとする。荻田浩一の作品では、世界は悪にからめとられていて、人間の自由の余地は少…… 続きを見る

  IX.女性司祭 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(2)(2009.07.24)

 ジョシュアとアンジェラもバウホール版で初めて出会う。

 ジョシュアは独り荒野で歌っている。

 

 ただここに生まれ

 ここに生きて

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  VIII.アダルトチルドレン 『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』(1)(2009.07.17)

 『夜明けの天使たち』は、初演の翌年1998年1月、同じ星組によってバウホールで再演されたとき内容を改訂した。バウホール版には、「悲しみの銃弾」というサブタイトルが付けられている。

 日本青年館版で主演した湖月わたるが、この年1月1日に発足した宙組に移って行ったので、彩輝直が主演を引き継ぐことになった。しかもこれは彼女のバウ初主演作である。 続きを見る

  VII.デビルマン 『夜明けの天使たち』(7)(2009.07.10)

 背中合わせに立ったアルヴァとジョシュアは、カラミティ・ジェーンが数えるカウントに合わせて、ゆっくり足を進める。兄弟の母オーガスタがそっと現れる。

 2人は同時に3歩進んで振り向き、銃を抜く。そこで2人共ストップモーションになると、上手の岩陰から白装のアンジェラの幻影が現れる。

 シェリルが歌う。

 

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  VI.荒野の消滅 『夜明けの天使たち』(6)(2009.07.03)

 ジョシュアは父親ブラントンの屋敷にいてアンジェラ殺害を知ると、さえぎる父親の手下たちに発砲しながら、ブラントンの部屋へ向かう。この場にアルヴァが来合わせて止めると、彼にまで銃を向ける。

 シェリルもまたそこに居合わせた。彼女は捕らわれの身ながら、精神の自由を失っていない。

 この演出家の作品では男役だけでなく、娘役も明確な性格の…… 続きを見る

  V.死者の呪縛 『夜明けの天使たち』(5)(2009.06.26)

 アルヴァの課題は死者を鎮魂することだった。それは言葉を変えていえば、死者の呪縛から解放されることである。

 アルヴァは初め、酒場でジーン・ハモンドの家を聞いて彼女を訪ねて行く途中の荒野で、『憎しみの大地』というナンバーを歌っていた。彼がこの町へやってきた決意がそこに示されている。

 

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  IV.夢幻能 『夜明けの天使たち』(4)(2009.06.19)

 アルヴァの前には3つの選択肢がある。(1)初志を貫いてブラントンを撃つこと。しかしブラントンは実の父だと分かった。養父母の敵として実父を殺すのは正義にかなうのか。(2)ブラントンの身代わりとしてジョシュアと対決すること。しかしジョシュアはやはり血を分けた兄弟だと分かった。さらに2人の間には不思議に響き合うものがある。(3)アンジェラの指し示す道を行くこと。 続きを見る

  III.グノーシス主義 『夜明けの天使たち』(3)(2009.06.12)

 この作品はキリスト教を背景に置いて書かれているが、それは正統キリスト教ではなく、キリスト教の異端グノーシス主義の立場である。題名がこのことを宣言している。


 「夜明けの天使」という言葉は、「明けの明星」を連想させる。

 この星はラテン語でルキフェル(英語ではルシファ…… 続きを見る

  II.キリスト教 『夜明けの天使たち』(2)(2009.06.05)

 この作品にはキリスト教の影が濃い。しかも正統教会から見ると異端のにおいがする。カトリックと先祖の信仰を併せ持つプエブロ・インディアンを出したのは、この伏線である。

 アッシュ・クリークの町は悪にまみれている。

 ブラントンは、息子のジョシュアや、右腕と頼む大洋あゆ夢のクラレンスに町のことは任せて、よその町を荒し回っている。また駅…… 続きを見る

  I.文化人類学 『夜明けの天使たち』(1)(2009.05.29)

 アメリカ19世紀の西部開拓時代、世界の果てのような町アッシュ・クリークに、湖月わたるのアルヴァ・グレイというガンマンが、西部劇の約束どおり、酒場のスイングドアを押し開けて入ってくる。そこにやはりガンマン、彩輝直のジョシュア・ブラントンがいた。

 アルヴァはこの町のボス、夏美ようのバリー・ブラントンを、養父母の敵と知ってやってきた。ジョシュアはその…… 続きを見る

  はじめに(2009.05.22)

 私が初めて荻田浩一に会ったのは、人違いがきっかけだった。

 彼は1993年、大阪大学文学部日本学科(文化人類学・民俗学専攻)3年に在学中、宝塚歌劇団の演出助手採用試験に合格し、1年間嘱託(アルバイト)として働いた後、1994年、大学卒業を待って正式に入団した。

 「3年だから歌劇団を受けたのです。4年生だったら、多分研究者の道を選んでいた」

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男役の行方:正塚晴彦の全作品

「男役の行方」表紙
演出家・正塚晴彦の2008年までの全作品を通して、宝塚男役の行方を見定める

由美子へ・取材ノート

「由美子へ・取材ノート」表紙
御巣鷹の日航機墜落事故で亡くなった元タカラジェンヌ北原遥子(本名・吉田由美子)の生涯をつづるノンフィクション

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