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宝塚プレシャス

エリザベートの魅力

美々杏里さん ― ゾフィーの悲しさを持ちながら

(2007.7.14)
 宝塚時代には名歌手として知られ、舞台を引き締めるだけでなく、女役として大きな役をたくさん演じてきた美々杏里。『エリザベート』出演は、雪組(東京)、宙組、月組と3回、最後はゾフィーという大役を見事に演じている。そんな美々杏里に『エリザベート』と自分の歌について話してもらった。 (取材・文:榊原和子/写真・吉原朱美)
 
美々杏里

みみあんり。大阪市出身
1988年 宝塚歌劇団入団
2005年 宝塚歌劇団退団
宝塚退団後は、舞台などで活動中      

  代役と本役で演じたゾフィー

―― 美々さんは宝塚時代に、『エリザベート』は3つの公演に参加されたんですね。
 そうなんです。96年の雪組初演の頃、私はまだ星組にいたのですが、組替えで雪組に行くことになって、6月の東京公演から参加することになりました。宝塚大劇場だけで退団されたかたが何人かいて、そのかたたちのところに入ったんです。役は女官とか各国の美女とか、親戚の叔母とかいろいろやりました。そうそう、「夜のボート」で後ろのベンチに座っているお婆ちゃんもやりました。
―― 素晴らしい作品にいきなり入るのは、なかなかプレッシャーですよね?
 まだ雪組が大劇場公演のお稽古中でしたから、とにかく観なくてはと思いました。雪組の組長さんからも「大変な作品だから、とにかく稽古場に観にいらっしゃい」と。
 やはり圧倒されました。音楽の素晴らしさも感じましたし、一路真輝さんの退団公演でしたから、雪組の全体の息込みもたいへんなもので、団結力というものを目の当たりにしました。そんな中にあとから入るのですから、本当に必死。歌も動きも、まず自分なりに出来ていないと稽古場で足手まといになるので、まず譜面や動きを雪組公演のビデオを見て、全部覚えていきました。
―― 音楽の素晴らしさは、どんなところに感じましたか?
 『エリザベート』は、メロディは耳になじみやすいのですが、耳で聴くのと自分で歌うのとでは違うんです。日本人にとって難しい音階というか、音をとっていくのが簡単ではないんです。それに、全体を通して不協和音がたくさんあって、それは役の性格とかそのときの心理状況とかを表しているのですが、それもまた難しかったですね。聞いていらっしゃるかたには、それが実際には魅力になっていると思うのですが。
美々杏里さん
―― 歌いこなすのがたいへん?
 そうなんです。『エリザベート』は、とにかく歌がメインの作品なので、いつも以上に歌に集中して、音に対する意識というのを強く持っていないとできない作品だと思いました。
―― 次に再び宙組で、98年に『エリザベート』に出合いますね。
 宙組には発足から参加して、組ができて2作目が『エリザベート』でした。姿月あさとさんのトートは、とても力強い歌声だったのを覚えています。私はこのときは女官長のリヒテンシュタイン役を演じていました。
―― リヒテンシュタインという役柄は、存在感を見せられる役ですね。皇太后ゾフィーとエリザベートの間にいるような立場で。
 私が理解した限りでは、はっきりとゾフィー側の人間になっていいと思いましたし、そう演じていました。エリザベートの孤独感や孤立感をより際立たせる役割りですね。物語全体を観たなかでの自分の役割りとして、そのほうが有効だと思いました。
 そして、2幕になったら年齢を感じさせたほうがいいと思って、白髪にして目の下にクマを描いたりしたんです。それまでリヒテンシュタインを演じたかたたちは、たぶんされてなかったと思いますが、私は、年月の流れを外見にも出したかったんです。
―― 3組目というのは、いろいろな意味でプレッシャーが、皆さんにあったんでしょうね?
美々杏里さん
 やはり、名作という評価を頂いていたし、雪組や星組版を観ているお客様も多く、それぞれのイメージがあったり、作品への理解度も深まってきていました。でも、姿月さんをはじめみんなが「自分が考える人物像を演じ、表現していこう」という気持ちだったと思います。
―― そして、月組に組替えになって、05年にまた『エリザベート』に出合うことに。ここでは大役のゾフィーを見事に演じられてますね。
 実はゾフィーは、宙組『エリザベート』のとき、代役になっていたんです。『エリザベート』の公演では必ず代役稽古をするのですが、たった1日、それも通しで一回きりしかさせてもらえないんです。その一回の通し稽古のために、毎日ひたすら本役さんを見て覚えて、音符と闘って歌を覚えるわけです。
 そのとき、代役として取り組んだゾフィー役が本当に面白くて、一度でいいからお客様の前でやりたいなーと思ったんです。そうしたら、本当に月組の『エリザベート』ゾフィー役をやれることになって、すごく嬉しかったですね。
―― そんなふうに大好きな役でしたら、いろいろ工夫して取り組んだのでしょうね?
 やはり、ゾフィーを悪役にしたくないという思いがありました。ウィーン版のゾフィーには、「ベラリア」というソロの曲があって、私はその曲が大好きなのですが、宝塚版にはないのが残念でした。でも心のなかでは、その曲の歌詞、「厳しくするのはたやすいことではなかった」という言葉を感じながら、国のため、そしてフランツのために生きてきたゾフィーの悲しさを持ちながら演じていました。
 それに、ゾフィーを演じたことで、音域も広がったんですよ。ゾフィーは宝塚の女役にしては、低音域の部分も多いんです。でも、私はソプラノでしたから、低音域まで出すために、一生懸命トレーニングをしたんです。おかげで低い音も出るようになりました。

  年齢とともに歌も変わる

―― 美々さんは女役として、とても恵まれた宝塚生活でしたね。代表的なのが「ばらの騎士」をアレンジした『愛のソナタ』で、主人公に恋される役でした。
美々杏里さん
 そうですね。もちろん辛い事もありましたけど、今振り返ってみると色々な経験をさせていただけたという意味も含めて、恵まれていたな、と思います。
 宝塚は、やはり男役中心の世界なので、女役のいわゆるメインキャストといわれる役が、非常に少ないんです。でも、私は舞台の上では同じ役者同士、という思いがあって。もちろん男役のかたあっての宝塚ですから、たてなくてはいけない部分はきちんとたてますが、最終的には男役も女役もない、まず一人の人間、役者として存在することが大事なんだという意識が基本にあったんです。ですから、どんな役でもやらなければならないことはきちんとやろう、といつも思っていました。
―― そのためにも、歌えるということは大きな自信になったのでは?
 そうですね。でも小さいときは、こんなに歌うことが面白いとは思っていなくて。歌うのはきらいじゃなかったんですよ。けっこう大きい声を出していろいろ歌ってましたし(笑)。
 でも自覚したのは、宝塚受験を考えてレッスンに行き始めてからですね。「私、歌好きかも」と思ったんです。そしてレッスンして、音域が広がったり、表現力がついてきたりするとともに、どんどん歌うことが面白くなっていきました。
―― 美々さんはいつも正確に、美しく歌われるなと思います。
 でも、すごく大事なのは内面なんですよ。内面が歌には出るんです。そしてそれが一番大事なんです。たとえば感情が乗ってきて、ほんの少し音程がはずれる。でも私は、それはそれでありかなと思うんです。気持ちがつながっていけばいい。ただ歌うだけではだめなんです。心がもっとも大事。正確にきれいに歌うにこしたことはないのですが、そこにばかり捉われて役の心が伝わらない事は避けなければいけないので、私はなによりも内面を表現することを心がけていました。
―― なるほど。歌うこと、歌の世界というのは技術も心も上を見れば限りにない世界ですね。
 そうですね。だからやりがいがあります。私はせっかくこういう声をいただいて生まれたのですから、それを大切にして、どういう形でも歌は続けていきたいと思っているんです。それに年齢を重ねていくことで、若いときには歌えなかった歌が歌えるようになってきました。その楽しさもわかってきたので、これからも歌い続けていきたいと思います。

美々杏里さん動画メッセージ

インタビューの様子、読者の皆さんへのメッセージがご覧いただけます(3分21秒)

美々杏里さん動画メッセージ
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宝塚歌劇雪組『エリザベート』−愛と死の輪舞(ロンド)−

2年ぶり6度目の宝塚上演は、雪組の新主演コンビ、水夏希と白羽ゆりの大劇場お披露目公演にあたります。

東京宝塚劇場公演:2007年7月6日〜8月12日
主な出演:水夏希、白羽ゆり、彩吹真央、音月桂、凰稀かなめ 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池修一郎
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ


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