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宝塚プレシャス

スペシャルインタビュー

宝塚歌劇団演出家50周年 植田紳爾さんインタビュー(前編)

(2006.12.9)
 今年、宝塚の演出家として50周年を迎え、同時に演出作品が100本を越えるという大きな足跡を残した植田紳爾。今もなお第一線で舞台作りに大きな意欲を燃やす、その作品作りの根幹にあるものと、これからの展望を聞く。 (取材・文:榊原和子)
 
植田紳爾

うえだ しんじ。宝塚歌劇団演出家、理事・特別顧問。
57年、宝塚歌劇団入団。最初の演出作品は「舞い込んだ神様」(57年)。
『ベルサイユのばら』(74年初演)、『風と共に去りぬ』(77年初演)等の大ヒット作品を生む。
1996年〜2004年の歌劇団理事長時代に宙組創設や東京宝塚劇場の改装を手がけた。
理事長退任後は特別顧問をつとめながら劇作・演出を続け、2006年に演出家50周年、演出作品が100本という節目を迎えた。
96年に紫綬褒章、04年に旭日小綬章受賞。

★  ★

11月27日に、植田紳爾氏演出家50周年記念を祝う『夢のメモランダム』が開かれた。そのときの様子をレポート

《Memo》
  • 1.楳茂都陸平:日本舞踊楳茂都流家元。小林一三に招かれ、宝塚歌劇団で舞踊教師を手がける。古典舞踊に洋舞を取り入れたことで知られる。
  • 2.白井鐵造、高木史朗、内海重典:宝塚歌劇団草創期の演出家。戦後の宝塚歌劇を盛り上げ「御三家」と称された。「すみれの花咲くころ」の詞は白井氏による。
  • 3.菅沼潤:元宝塚歌劇団演出家。代表作に近松門左衛門の「冥途の飛脚」をミュージカルにした「心中・恋の大和路」など。
  • 4.鴨川清作:元宝塚歌劇団演出家。代表作に「ノバ・ボサ・ノバ」など。

  日本物からスタート

―― 演出家生活50周年と100本という節目が同時ということで、本当におめでとうございます。
 ありがとうございます。めったにない幸せと思っています。
―― 宝塚にお入りになった頃のことからうかがいたいのですが、最初は日本物を主に手がけられていたそうですね。
 小さい頃、バレエも日本舞踊もピアノも三味線も習っていまして、でも最終的には日本舞踊をずっとやっていたんです。

 大学に入って将来を考えはじめたとき、このまま日舞の世界で古典を守っていくことでいいのだろうか、僕に出来ることは他にあるのだろうかと、いろいろ探っているうちに、「そうだ、洋楽で日本舞踊をやっているところがある」と宝塚のことを思いついたんですね。

 宝塚歌劇団創始者の小林一三先生も海外公演のときに「洋楽で日本舞踊を踊るところは世界で宝塚だけだから、こういう形で日本の文化を紹介することこそ宝塚の仕事だ」とおっしゃっていて、その言葉に感動したことも、宝塚に入った動機の1つでした。
―― 楳茂都陸平(*1)さんから始まって、日本物というのは宝塚の1つの柱になっていますね。
 楳茂都さんが90何年前に始められたものを継承して、次の時代につないでいきたいという気持ちもありましたし、その頃の宝塚は、白井鐵造先生、高木史朗先生、内海重典先生(*2)などそうそうたる演出家の先生がたがいらしたので、若手が出ていくには、何をやったら存在感を示せるかと考えました。そして、その先生がたは主に洋物の大作を手がけていらっしゃる。だったら日本物なら出ていけるんじゃないかと思ったんです。
―― いわゆる“すきま”で、1年目にデビューしたんですね。
 そうです、そうです。今の若い人たちはいろいろチャンスがありますが、当時はお三方のもので1年間の演目はほぼ決まってしまうような状態でした。そこに潜り込んでいくためには、自分が学んできた日本舞踊が役に立つなと。白井先生も高木先生も日本物を作られるときは、僕に「ちょっと手伝うて」と声をかけられるんです。

 ですから昔、よく宝塚を志望する若い人に言っていたんですが、「宝塚の演出に入ろうと思ったら、何かやってないとダメなんだよ」と。白井先生はバレエ、菅沼潤(*3)さんは歌舞伎の経験がある。鴨川清作(*4)さんは音楽の学校に行っていた。そういう経験を持つことは、やる側の気持ちや感覚をつかむうえで大切なことですから。
―― 植田先生は、一幕物を初期によく作られていましたが、それがのちに大作をダイジェストにするうえで役に立ったのでは?
 早稲田の大学生の頃に、まず学んだことなんですが、一幕物をちゃんと書けるようになって三幕物を、三幕が書ければ長いものをやってもいいと。その頃の劇作家の1つの道としてそういうものがあって勉強になりました。戯曲を作るうえで、何が無駄で何を残すかということを学んだ。だから『ベルサイユのばら』でも、どこから始めて、途中をどう切っていくか考えるとき役に立ちました。基本的なルールみたいなものがあってこその自由な崩し方ですからね。

  『ベルサイユのばら』から『風と共に去りぬ』へ

―― そして『ベルサイユのばら』の伝説的な大ヒットですが、それほどのブームになるとは思わずに手がけられたそうですね。
 まだ漫画文化をどこか下に見る時代でしたし、僕自身そういう気持ちで読み始めたら、池田理代子先生の素晴らしい世界に触れてびっくりしました。それに本屋さんに行くと売れてしまっていて、全然ない。

 周辺の女性たちに聞いてみたら、70〜80%が読んでいて、年齢も職業も幅広い。宝塚を観たことのない方も『ベルばら』なら少しは興味を持って来てくださるかな、くらいの気持ちでした。それが社会現象とまで言われるほど、たいへんな人気になったのは嬉しい驚きでしたね。
植田神爾さん
―― 植田さんのアレンジ力も大きかったと思います。宝塚のよさを生かしたアレンジというか。
 僕はここに入る前に、宝塚の演出家は劇作もできないとだめだと聞かされていたので、大学の休みになると、書きためたものを白井先生のところに持っていって見ていただいていたんです。すると「そこは詞にして歌にしなさい」とか「ここは踊り」とか手を入れてくださって、手取り足取り教えてくださった。

 僕も歌劇団に入る前で白紙でしたから、宝塚が女性ばかりということを、ごく当たり前のこととして受け止めて、大きい舞台で何をやるのか、男役をどう見せるか、女性だけというハンディをどうカバーするか、そんなことを教えていただき、それがとてもよく僕の中に染み込んだと思います。

 今の人を見ていると、大学を卒業する頃、「就職をどうしよう」と考える。でも自我というものが既にできてますから、いい悪いとか、好き嫌いとかがまず本人の意識の中にあって、そこから作ろうとする。僕の場合は、まだそういうものがないときに、観客の視点やニーズも含めて、作るということを覚えられた。
―― そのことが、また次の『風と共に去りぬ』につながるわけですね。
 あの頃は、音楽の寺田瀧雄さん、振付の喜多弘さんと、毎晩のようにディスカッションしては、「次は何にしよう、どうしよう?」と。誰ともなく「やっぱり『風(と共に去りぬ)』やろ!」と言うと、みんな「そうだねー」と言ってはいたけれど、ロイヤリティが高いから無理だろうと思っていたんです。

 それがあるとき、当時の理事長の小林公平さん(現在は宝塚音楽学校校長)から「何をやりたいんですか?」と聞かれたので、「『風』をやりたいけれど、ロイヤリティの問題で無理だと思っています」と。
 「そうですか」で、そのときは話は終わったんですが、4ヵ月ほど経ってから呼ばれて「あれ、やれますよ」と。

 本当に有り難かったですね。恵まれていたと思います。いい方たちに囲まれていた。白井先生との出会いもそうですが、公平校長とも火花を散らしたりぶつかったりしながら、たくさんの仕事に花を咲かせることができた。
―― そして上演にこぎつけられた。その甲斐があって、『ベルサイユのばら』同様、大ヒット作になりましたね。
 そうはいってもたいへんでした。当時は本当に分厚い契約書で、あれをやってはいけない、これをやってはいけない。ポスター等を作るとき、タイトル文字の大きさや作者のマーガレット・ミッチェルの字の大きさまで決まっていましたから。
 してはいけないことをまず頭にたたき込んで、ダイジェストを考えるんですが、有名な映画もあるし、その頃ちょうど東宝で菊田一夫さんのミュージカル『スカーレット』があったし。我々がいくら『ベルばら』で当てても、そんなにお客様は甘くないだろうと思いましたから、どうやったら原作を生かしながら宝塚の『風』にできるのか、スタッフみんなで汗をかきながら取り組んだ覚えがあります。

 しかも少し前まで、宝塚の観客動員は沈んでいて、『ベルばら』で当てたときも、内部では「どうせ一過性のものだろう」と、一時代の流行ですぐ消えると思われていた。でも僕は『ベルばら』は宝塚の演目としていつまでも残していきたいと考えていたし、そのためにも『風と共に去りぬ』で次の勝負に出ていかなくてはと思っていたんです。取り巻く状況は本当に厳しかった作品でした。

インタビュー後半は、理事長時代に感じたジレンマについて、今、そして未来の日本演劇界と宝塚の関係について、最後に101本目の作品となる07年新春の月組公演『パリの空よりも高く』についてお話を伺いました。

植田神爾さん動画メッセージ

インタビューの様子がご覧いただけます(3分29秒)

植田神爾さん動画メッセージ

宝塚歌劇月組公演
宝塚ロマンチック・コメディ『パリの空よりも高く』
〜菊田一夫作「花咲く港」より〜

期間・場所:
2007年1月1日(月・祝)〜2月5日(月) 宝塚大劇場
2007年2月17日(土)〜4月1日(日) 東京宝塚劇場
脚本・演出:植田紳爾

⇒公演の詳しい情報は宝塚歌劇団HP公演案内ページでご確認ください。


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