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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

樹里咲穂さん

(2006.7.8)
 宝塚きってのエンターテイナーとして知られていた。豊かなヴォリュームの歌声、細身の体からくり出す切れのいいダンス、シリアスからコミカルまで、かっこいい男から色気のある女性まで、矛盾なく演じ分けてしまう“多才なスター”樹里咲穂。彼女が宝塚のステージを卒業したのは、昨年9月。だがショー・ビジネスの世界は、そんな多才なスターを放っておいてはくれなかった。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)
 
樹里咲穂

じゅり さきほ。女優、元宝塚歌劇団男役スター。大阪府出身。
 90年「ベルサイユのばら」で初舞台。月組、宙組に所属し、2000年から専科。
 宝塚時代の主な舞台に「ME AND MY GIRL」(95年)、「WEST SIDE STORY」、(98年)、「ベルサイユのばら」(01年星組)、「エリザベート」(02年花組)、「ファントム」(04年宙組)ほか多数。 05年「Ernest in Love」(花組日生劇場公演)を最後に退団。以降、舞台やコンサートで幅広く活躍。
 退団後の主な舞台・コンサートに「ベルリン・トゥ・ブロードウェイ」「エリザベート10周年ガラコンサート」ほか。

  アニタで変身

――樹里さんは05年の9月末に宝塚を退団されたんですが、それ以来、毎月のように舞台出演の仕事が続いてて、すごい活躍ぶりですね。
 自分でもびっくりするくらい、あちこちから声をかけていただいて、ありがたいですね。ミュージカルやコンサート、音楽劇、ショーやライブ。劇場も大きなところから小さめの空間まで、いろいろやらせていただいてます。でもそれは、たぶん宝塚でいろいろ経験させていただいたおかげだと思います。
――16年間という宝塚生活で、たくさんの役柄に取り組んでこられましたが、とくにポイントになる役というのはありますか?
 やっぱり『WEST SIDE STORY』(98年)のアニタですね。その3年前にも、『ME AND MY GIRL』のジャッキーという女役がきて、その頃の私って女役をやるとなぜか評判がよかったんですよ。男役ではどんなにがんばってもあまり誉めてもらえないのに。自分としては、“なんでやろ?”という思いがありました。

 そんな状態のときにまた女役のアニタがきたんです。この役をやった後は「これで退めようか」と一度は退団も考えました。でも「せっかく男役がやりたくて宝塚に入ったんだから、もう少し頑張ってみたらどうか」と劇団にも言って頂いたんです。

 アニタって、自分の殻を破らないと出来ない、いろいろなものをさらけ出さないと出来ない役なんです。おかげで自分の既成概念みたいなものを全部捨てることができたし、自分を見せることも怖くなくなりました。すごく意識が変わったんです。不思議なことにその頃から、男役でもだんだんいい役がつくようになり、バウホールの主役がきたり。男役としても舞台人としても、あそこから私は本格的に始動したんだと思います。アニタがなかったら、私は今、ここにいないかもしれませんね。

  歌はセリフのように

――樹里さんといえばなんでもできる、まさにプロフェッショナルなスターで、とくに有名なのが歌唱力なんですが、どんなふうに鍛えてきたのですか?
 それが申し訳ないんですが、なにもしてないんですよ(笑)。私はたまたま宝塚の中でもミュージカル作品に出る機会がすごく多くて。だから作品に育ててもらったんだと思います。ミュージカルってやはり難しい曲が多いんです。その曲を稽古期間も含めると3カ月から半年の間、ずっと歌い続けるわけですから、自然に力がついてくるんです。

 ミュージカルの歌は、結局セリフと一緒ですから、ちゃんと伝えなくてはいけない。もちろんバラードで聴かせる部分もあるんですが、ほとんどの曲はセリフを言うような気持ちで、歌ってしまわないように気をつけていました。よくビブラートを効かせたり崩したりしがちなんですが、それをすると伝わらないことがあるんです。そのままきちんと歌うことで心をぐっとつかめる。本当に難しいなと思います。
樹里咲穂さん
――そういえば、今年1月の『エリザベート』のガラ・コンサートでは、ルキーニ役に初めて挑んで、素晴らしい歌を聴かせてくれました。
 せっかく女優になったのに、汚い横ジマのシャツでヒゲつけてね(笑)。私、なんでこんなカッコしてるんやろ?とか思いながら(笑)。あの役も語りかけが多かったですね。「キッチュ」とかは歌ってかまわないけど、物語の進行を伝える部分は、ちゃんとセリフみたいに聞かせないといけなかったんです。
――そして、“男役”樹里咲穂のもうひとつの武器がダンスで、とにかくキザでカッコよく踊るんですよね。
 キザってました(笑)。顔つきからして、ふだんと違ってると言われましたから(笑)。そういうところが宝塚の男役ならではの魅力ですし、お客様にもそれを期待されているので、気張ってやってました(笑)。楽しかったですね。
――男役として、とくにこだわっていたことはありますか?
 背中! 映画を観ても、ふだん身のまわりにいる男性を見ても、女性とは絶対に違うのが背中なんです。背中の表情ひとつで哀愁が出たり、包容力が出たり、男らしさが出る。だから後ろを向いたときにも、絶対気を抜かないというのを心がけていました。面白いことに自分では見えないんですけど、今、自分の背中がどんなふうになっているか、それもわかるんですよ。その時の感情がストレートに反映する。男役って本当に奥が深い面白さがあるんですよ。

  ボロボロです!

――そして8月に博品館劇場ほかで上演される『花嫁付き添い人の秘密』で、ついに女優としての主演第一作を。
 いやー、緊張しますね。役もこれまでやったことがないような女の人なんですよ。天真らんまんで結婚願望の強い33歳の女性で、周りの人を気にかけるいい子で、それでやっと結婚相手が見つかって、いざ結婚式という日に、相手の男性の浮気がばれてという(笑)。
樹里咲穂さん
――大騒ぎですね。
 もうボロボロですよー(笑)。泣くわ、わめくわ、すごく純粋なだけにどんどん泥沼にはまっていって(笑)。私が演じるメグは観ている方たちとそんなに遠くないから、感情移入してもらえるのではないかと思っているんです。
――樹里さんの場合、男役だったことは、女優への転身に全然ハードルになってないみたいですね。
 そうかもしれませんね。このままの自分でいればいいので、無理してないんですよ。本物の男の人って、やはり迫力はあるし大きいので、少しボーイッシュな女性でいても可愛く見えるでしょう。そういうところがラクですね。もともとオンナオンナするのは似合わないし、カマトトぶるのもダメなほうなので。

 でも男役をやっていたことがトクだなと思うこともあって、男役のしぐさとか動きって、面白く使えるんですよ。普通の女優さんなら、キザリを入れるなんて考えられないでしょう? でも私の場合、そういう小ワザを遊びとして入れられるんです。そういうときは男役をやっててよかったなと思います。
――さて、これから女優としてめざすものは?
 今でも徐々に、自分の女性らしさみたいなものを出せてはいるのですが、もう一回り変わりたいですね。ふだんの自分も、舞台の上も変身していきたい。あと、がんばっちゃうところがあるので、うまく力を抜いて“普通で行こうよ!”と自分に言い聞かせながら行こうかなと思っています。

樹里咲穂さん動画メッセージ

インタビューの様子、読者の皆さんへのメッセージがご覧いただけます(6分00秒)

樹里咲穂動画メッセージ

花嫁付き添い人の秘密

ビジュアル

99年初演時にオーストラリアで大ヒット、映画化もされたコメディプレイを、華も実力も兼ね備えた宝塚歌劇出身女優が演じます。

期間・場所:
8月2日(水)〜8日(火) 銀座・博品館劇場(⇒劇場のHP
8月11日(金) 茨城・つくばノバホール(⇒劇場のHP
8月19日(土) 大阪・シアタードラマシティ(⇒劇場のHP

出演:樹里咲穂、香坂千晶、星奈優里、森ほさち、戸井勝海、安奈淳

作:エリザベス・コールマン
翻訳・演出・美術:三輪えり花
音楽:石井一孝



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