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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

朝澄けいさん

(2006.09.21)
 宝塚の男役になるために生まれてきたような人だった。美しく気品があり凛としていて、だがどこか憂いを秘めてはかなげで、夢の世界の王子様のような…。それだけに、トップの座にあと少しという時期の退団は、歌劇ファンの間に大きなショックをもたらし、嘆きの声をあげさせたものだった。その衝撃の退団劇から3年半、容姿はほとんど当時のままに、だが中身は一回り大きくなった朝澄けいがそこにいた。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)
 
朝澄けい

 あさずみ けい。アーティスト、女優。元宝塚歌劇団星組男役。東京都出身。
 94年「火の鳥」で初舞台。
 宝塚時代の主な舞台に「エリザベート」(96年)、「WEST SIDE STORY」(99年)、「聖者の横顔」(00年)、「風と共に去りぬ」(01年)、「ヴィンターガルデン」(02年)ほか。03年「ガラスの風景」を最後に退団。以降、ライブを中心に活動。今年3月の「アルジャーノンに花束を」で女優としても活動を始める。

  歌うことは生きがい

―― いよいよ3度目のライブですね。取り組み方は変わってきましたか?
 最初の『GALAXY』(04年9月)は、退団したとき自分の中では再び舞台に立つことを全然考えてなくて、ただ、歌うことは大好きでしたから、その機会をいただけたことでとにかく興奮してました。そのせいで記憶もだいぶ抜けているんですが(笑)、宝塚時代の曲も歌えたし、歌いたかった曲にもチャレンジできたし、終わったあと「ああ、やっぱり歌うって本当に楽しいな」と心から思いました。
―― その次の年も、同じホテル(ホテルグランパシフィックメリディアン)でしたね。
 有り難いことに、2度目もさせていただけて、そのときはだいぶ落ち着いてきました(笑)。宝塚の男役というものから少し離れて、自分のやりたいこと歌いたいものを歌ったり、舞台上でもだいぶ力を抜いて立つことができるようになりました。

 今回は、まず場所が素晴らしいんですよ。芝公園の側にある新しいホテルのジャズバーで、昼は緑が美しいし、夜はライトアップされた東京タワーが見えるんです。たった100人限定のプレミアライブで、入れなかったお客様には本当に申しわけないのですが、昨年は広い会場でしたから、今回はあえてアットホームな空間で歌いたいなと思って。曲目は主にスタンダード・ジャズのバラードっぽいもの。宝塚時代に歌ったジャズもあるんですが、アレンジを変えてます。あとは皆さんがよく知っているポップスや、いつも歌う「スマイル」のジャズ・アレンジとか。ほとんど英語なので、今覚えるのに七転八倒してます(笑)。
―― 退団して3年半になりますか?
 そうですね。本当に早かったです。考えたら舞台に立っていた年月の半分近くがもう過ぎてしまいました。
―― 在団は9年間?
 まる9年ですね。10年目になる3月に退団しました。
―― お父さまのご病気とか、理由は一つではなかったんですよね。でも退団は宝塚ファンに本当に残念がられて。期待のスターでしたから。
 そう言っていただくと、9年間がんばったかいがあります。
―― 退めてからも宝塚もよくご覧になっているそうですが、どんな感覚ですか?
 退団して間もない頃は、知ってる人たちが舞台に立っている姿を観る物珍しさと、「ああ、この中に私はいないんだ」という寂しさがあって複雑だったんですけど、徐々にそういう気持ちは薄れてきて、今はすごく楽しんで観ています。でも最近、下級生に知ってる顔が少なくなったし、楽屋に行っても知り合いが少ないのが寂しいんですよ。
―― 宝塚時代を振り返って、自分の舞台で印象的なものは?
 私は、すごくバウホールに出る機会が多かったんです。全国ツアーとバウに分かれるときは必ずバウ組で。だからバウに育てていただいたという思いがあります。最初は96年の『黄色いハンカチ』で、次が97年の『武蔵野の露と消ゆとも』。これは上級生の方の代役で、いきなり大役がまわってきて、ただもう必死で、千秋楽のあと倒れてしまったくらい緊張しました。それから荻田(浩一)先生の作品、『夜明けの天使たち』シリーズも忘れられませんし、『聖者の横顔』も大好きでした。
朝澄けいさん
―― 朝澄さんの透明感が、荻田作品には欠かせないという感じでしたね。でも明るい役もやってますよね。
 シェイクスピア作品『エピファニー(十二夜)』では三枚目もやりました(笑)。
―― 毎年といっていいほどバウに出て、しかもいろいろな役に挑戦できたわけですね。
 最後になった『ヴィンターガルデン』では主演もさせていただいて。バウホールの真ん中に立てたという満足感もあって、退団する決心がついた作品です。
―― 本公演のほうでも、新人公演の主役を何本もしましたよね。
 はい。でも私は『我が愛は山の彼方に』のチャムガという二番手の役が、いちばん好きだったんです。周りの方から「今回は主役じゃないのね」みたいな同情の目で見られたりしたんですが、私自身は、申し訳ないけど内心喜んでいて。絶対やりたい役でしたから。
―― 確かに朝澄けいのためにあるような美しくてはかない武人の役で、よく似合ってました。それに、たまに見せる女役も綺麗でした。
 ショーの女役は、どちらかといえば笑われ担当です(笑)。でも私、入る前は娘役志望だったんですよ。みんなに「その大きさで娘役になっても邪魔だよ」と言われて諦めましたが(笑)。全国ツアーの『風と共に去りぬ』のスカーレット2をさせていただいて、憧れの輪っかのドレスを着られたのも退団のきっかけになりました。
―― スカーレット2は、芝居も自然で生き生き演じてましたね。
 スカーレット1の星奈優里さんや周りの娘役さんたちから、手取り足取り教えていただいたのでなんとか形になりました(笑)、でも、あまり肩に力入れずにできたし面白かったですね。そういう意味では娘役もできたし、思い残すことはなかったです。
―― 朝澄さんにとって男役というのは、どんな感じだったんですか?
 現役の頃は、“男役を演じている”という意識が抜け切れなかったし、どこか恥ずかしさがあったと思うんですよ。でも退めてから、男役ってやっぱり面白かったし好きだったなーと改めて思いました。退めてから、すごくいろいろなことを実感するんですよ。お客様の温かさとか、スタッフの方とか仲間の存在とか。在団中も自分なりに精一杯感じているつもりだったんですが、やっぱり自分のことでいっぱいいっぱいで、ちゃんと見ていなかったなと。とにかくスケジュールを消化していくだけで必死だったなと思います。

(この後は、退団後に評価が変わった?朝澄けいの声。また退団後初の舞台についても。動画もご覧いただけます。)⇒続きを読む

TOKYO TOWER View Live“Only100”

日時:9月24日(日) 14時/19時
場所:東京プリンスホテル パークタワー1階 Jazz Bar「メロディーライン」
定員:各回100人
本ライブの応募受付は締め切りました。


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