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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

成瀬こうきさん(その3) ― 色気があった悪役

(2006.12.23)
最後は「ただの二枚目じゃなかった」宝塚歌劇団時代のお話をじっくりと。そしてインタビュー時にはまだ“ほやほや”だった、驚きの報告もありました。動画メッセージとあわせてどうぞ。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)

  男役時代、そしてこれから

―― 宝塚に入った動機は?
成瀬こうきさん
 高校1年生くらいのときに観て、すぐ自分はあそこに立つぞと妄想の世界に入って(笑)、それからお稽古して、高校3年の時に受験したんです。
―― そのままでも男役に見えるタイプだったから、ラクにやれていたのではないですか?
 確かにスーツを着て立っているだけで男役に見えると、下級生の頃から言われていたんですよ。でも自分では欠点も痛いほど分かってて、一番は声の高さなんですけど、しゃべらないでそのまま立ってたらいいのにね、と言われていました。

 はっきり男役というものへの意識を持ち始めたのは、月組から雪組に組替えになった8年目くらいかな。芝居としても気持ちとしても、男役というものを作っていく魅力が、自分で分かり始めた気がします。
―― 月組時代ですが、『WANTED』で清々しい青年だったのに、『結末のかなた』で色っぽい悪役をやったり、ただの二枚目じゃない何かがあるなと思って見ていたのですが。
 『WANTED』はそのまんま等身大でやってましたね。『結末のかなた』はしんどかったんですよ。(演出の)木村信司先生に稽古で「声をあと3度下げて」みたいな注文をつけられて、「3度ってなに?」とか(笑)。でも声を気にしてた時期だったからよかったし。

 悪役でヒゲをつけてベッドシーンみたいなのもあって、そういう役をまだ4年目にやらされて、でも、これをやらないと自分が変われないと思ってがんばりましたけど、苦しかったですね。ただ、主演の姿月あさとさんと歌の掛け合いがあって、やりがいはあったし、毎日ずんこさんに食らいついてました。
―― 聞いているとのめり込み型のようですね。舞台と自分の区別がなくなるタイプ?
 そう。だから『WEST SIDE STORY』のアクション役をやってるときなんか、近所のお店の人から「目つきが悪くなったけど何かあったの?」とか言われたり(笑)。車の運転しながら「あ、サツだ」とか(笑)。
―― 成瀬さんは、作品では、正塚晴彦さんのものがとても多かったですね。
 私は恩師だと思っているんです。つまづいたときに正塚先生の役に当たると一から洗い直してもらえるのと、自然に無理をしないで芝居をさせてもらえたことで、芝居好きになれたから。正塚先生の作品に出ていたおかげで、メイコさんとの2人芝居にもポンと入れたのかもしれません。

 外に出てから共演する人たちにも「宝塚っぽくないね」とよく言われるんです。それは、正塚先生の稽古場で「なんでそこで正面向いてセリフ言うんだ? 誰に言ってるんだ?」と言われて、型でやらないように鍛えられてきたし、育ててもらったから。舞台でお客様にお尻向けるのも当たり前という感覚でやってきたのが、外では役に立ってますね。
―― だから、成瀬さんの役って人として生きてて、悪役がなぜ印象に残っているかというと、人間として素敵だったし色気があったから。
 悪役、けっこう多かったですよね。悪人にもその人なりの人生があって、そうならざるを得なかったというのを大事にしていました。

 小池修一郎先生の作品もそういう点では、私の男役のキーポイントになってると思いますよ。『PUCK』の新人公演は久世星佳さんのやった敵役だし、『ローン・ウルフ』もかなり変な人で、1人で理解できない難しい歌を歌わされて(笑)。
―― 『カステル・ミラージュ』の主人公を追いつめるギャング仲間も愛憎入りまじってて、死んでいく主人公に呼びかける声が切なかった。
 フランクですね。小池先生には、いつも何気なく冒険させてもらってたと思います。そういう点では私って本当に演出家の先生に恵まれていましたね。
―― 退団はどのくらいから考え始めていたんですか?
成瀬こうきさん
 10年目くらいで、『凱旋門』あたりですね。今すぐ退めようというのではなく、その先を考えながら、宝塚での終わりかたを考えました。ちょうど30歳だったし、人生先に進むならそろそろかなと。

 その頃は同期の安蘭けいと朝海ひかると一緒にやることが多かったから、とにかく一度1人になりたいと思ったんですよ。先に安蘭けいが星組に行くことが決まって、その時に「私は?」って思ったんですけど「あなたはまだ雪組にいて2人でがんばってほしい」と言われて、でも私そんなに長くはいないかも…、と心では思っていたんです。

 それで自分でいろいろ考えて、できればどこかほかの組に出してほしいなと思ったんですが、でも行く場所がなかったんですよね。各組に同期がいてがんばってるから。どこに行っても同じ状況かな、同期とセットで使われてしまうかな?って感じでした。セットで使われてることで勉強になったことは多かったけど、でもずっとそのままでいるのはいやだったんです。出番も2人とか3人一緒みたいなのが続くと、1人の成瀬こうきとしてがんばってみたいなと思ったり。

 それで、専科入りを希望したんです。1人でとにかく羽ばたきたいなと思ったから。「専科というのもありますか?」と劇団に聞きに行ったら「エーッ」と言われました(笑)。でも、先はどうなるかわからないけど、まず1人になりたいという気持ちだけで、お願いしたんです。
―― 意外と骨っぽいというか、専科って一匹狼的なところがあったでしょう? 度胸あるんですね。
 でも組替えもしたあとだから、別によその組に出ることが恐いということはなかった。それより自分が1人でどこまでできるか、それが楽しみだったから。

 それがフタを開けたら意外と早く退めることになったのは、もともと正塚先生の作品で絶対退めたいと思っていたところ、翌年正塚先生の作品があって、しかも大好きな雪組、というのがわかったからで。それで一気にこれかなと思ったんです。いわば鐘が鳴った感じですね。これで最終章が飾れたらそれが一番いいと思えたし、実際、望み通りにやらせていただけて、本当に幸せでした。
―― 見ている側からは、もう退めるの?というのがあったけど、自分では納得の流れだったんですね。
 ファンのみんなも、最初はついてこれなかったみたいで動揺してましたね。でもちゃんと理由も話して納得してもらって、最後はそういう私をわかって応援してくれました。
―― 成瀬さんてお嬢様育ちって思ってたから、そんな風にきちんと計算してどんどん決めていくタイプには見えなかった。意外と意志の強い人なんだ。
 実は流されているようで、計算野郎なんです(笑)。負けず嫌いなのか、ただ流されるのは不安なんですよ。必ず先に目標を持っていたいし、持ってないと生きていられないんです。40歳になったらこうしていようとか。もしそれで目標に追いつかなくても、それなりにそこからまた新たな目標を考えていけるんです。
―― 未来を考えられる人って楽天的だと言いますね。
 よく言われます(笑)。たとえ失敗しても、やらないといられない。負けてもいいいんですよ。またそこから新しいことを考えていくから。こっちの道が閉ざされても、そっちがあるんじゃないかって思える。
―― そういう意味ではこれからの変化も楽しみですね。
 最初にも話したように、シルバータレントが目標ですから(笑)。中村メイコさんは子育てしながら女優もやってらしたし、素晴らしい生きかただなと。私は仕事もしながら本名の自分も持っていたいんですね。芸名の自分も大好きだけど、でも本来の自分が基本にあって、それが失われてしまうと私でなくなると思っているんです。

近況報告

結婚しました
成瀬こうきさん

―― 私生活といえば、結婚とかは考えたりするんですか?

それが、実は結婚しちゃったんです、11月の1日に。まず入籍だけして、来年、式を挙げるんですが。

―― えーっ、1週間前じゃないですか?こんなところにいていいんですか(笑)。ちょっと詳しく聞かせてください。相手の方は?

普通の、一般の方なんですが、私の仕事にも理解があって、やれる範囲内でやればいいと言ってくれているんです。

―― 炊事洗濯とかは?

 できますよー! がんばってます。実は私、両立できないタイプかと自分では思っていたんですよ。それがこの1年の間、仕事も何本かやってきたのに私は私でいられたし、集中できたし、こっちがあるからこっちができないということがなかったんです。そのうえ、何か困ったことがあって相談すると、ちゃんと解決できる関係だったから、あ、これは大丈夫だなと。

―― それは恵まれてますよ。このまま所帯じみないで、うまく切り替えながら女優業もやっていってくださいね。

 所帯じみたら言ってください(笑)。私生活も大事にしつつ、女優としても息の長い存在になっていけたらいいなと思っています。

成瀬こうきさん動画メッセージ

インタビューの様子、読者の皆さんへのメッセージがご覧いただけます(6分21秒)

成瀬こうきさん動画メッセージ

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