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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

香寿たつきさん(後編) ― 運命に導かれて

(2007.1.6)
 香寿たつきさんロングインタビュー後編では、バレエが好きで好きで仕方なかった少女時代から宝塚入団までのエピソードや、入団後、異動を重ねて星組トップに就任したときのお話などを伺いました。動画メッセージもご覧いただけます。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)

  バレエ好きの少女

―― 香寿さんは、確か、入る前はクラシックバレエの稽古しか行ってなかったとか?
香寿たつきさん
 そうなんです。バレエが大好きで、とにかく踊っているのが楽しくて楽しくて、たとえばお友達と遊ぶよりもバレエをやってるほうが楽しいというくらい、好きだったんです。

 バレエ漫画を読んでは、このヒロインのようになりたいとか、こういうレッスンを受けてみたいとか思うと、お腹のあたりがカーッと熱くなって火の玉が私を突き動かすんです(笑)。そのくらいバレエのことばかり考えていたし、好きでした。

 北海道に住んでいたんですが、東京にレッスンに来たときは、朝のレッスンを受けて、昼はどこか違うレッスン場でチケット制のレッスンを受けて、また夜にはバレエ団の夜レッスンを受けるというくらいで、1日中でも平気だし、楽しくて仕方なかったですね。
―― それだけやってたら上達するでしょうね。それで宝塚受験はどういう経緯から?
 あるレッスン場で、私より2期上で宝塚に入られた方と知り合いになって、その方にすすめられたんです。でもその前にも小学校時代に、バレエの仲間に宝塚ファンがいて、受けてみたいねと言ったりはしてましたけど。

 高校生になって進路を決めていくとき、好きだというだけではやっていけないさまざまな条件、身体的なものとか技術的なことが出てきて、いろいろ考え始めていたんです。経験が少なくてもいきなりプリンシパルになれるようなすごい才能の人もいますから。私の限界みたいなものが見えてしまったんですね。

 ちょうどその頃、素晴らしいステージを見せていたNYの「アメリカン・ダンス・マシーン」というダンスグループがあったのですが、それを観て、こういうダンスを踊りたいと思ったんです。そしたらアメリカから1週間に一回、メンバーの方が来日してダンスレッスンをしてくれるというので、レッスンを受けに行ったところ、先ほどの2期上の方と出会ったんです。
―― それで、宝塚受験を決心したんですね。
 もう高校3年の夏休みでしたから、ラストチャンスでした。でも人生って、まるで決められていたようにそちらに流れるときがあって、本当に全てがうまく運ばれていったんです。
 たまたま私の入っていたバレエ協会の全国規模の発表会が東京であって、それは高校3年の最後の春だったんですけど、その時期が宝塚の試験と重なって、しかも、私たち北海道支部の舞台は1日目で、2日目は夜のパーティに出ればいいだけ。その2日目がちょうど東京の宝塚音楽学校の受験日だったんです。
―― 入れと言われてるみたいですね。運命的な流れというか。
 私って、いつもそうなんですよ。宝塚に入ってからも、自分の中で流れを変えたくなって退団とかを考えていると、突然劇団から呼び出されて組替えになったり。一番最初は、1990年の『ベルサイユのばら フェルゼンとマリー・アントワネット編』の東京公演で退めようと思っていたのに、私だけ東京公演に行けずに雪組に異動ということになって。本当に不思議でした。
―― 花組時代、すごく抜擢されていたのに、退団される当時のトップの大浦みずきさんと一緒に退めたかったとか?
香寿たつきさん
 まだ5年目なのに、新人公演の主役のフェルゼンもやらしていただいて、もうこれでいいと思って、親にも「もう退める」と言っていたんです。本当のことを言うと、宝塚にはあまり長くいるつもりはなくて、もう宝塚の良さは満喫したと思っていたんです。
 でもそれも運命ですよね。そこで退めていたら別の人生になっていたと思いますから。でもダンスの花組から離れるのは正直つらかったです。本当にダンスが好きで、とくに花組のダンスが好きでしたから。
―― 雪組というのは、カラーがすごく違いますね。当時はとくに杜けあきさん、一路真輝さんと、日本物の作品が多くて。
 私が異動してすぐ、1本立て大作の日本物が2作続いたんです。『この恋は雲の涯まで』と『忠臣蔵』と。その2本とも新人公演で主役をさせていただいて、慣れない日本物の主役というだけでもたいへんでしたが、新人公演の最上級生になってましたから、長としてみんなの面倒もみないといけなくて。本当によく乗り切ったなという気がします。
―― 新人公演の長というのはまとめ役みたいなものなんですね。
 私は主役をするので、同期の人にまとめ役を頼んでもよかったんですけど、花組の上の方たちって、すごく面倒見がよくて、そのやり方を見てましたから、スケジュール管理からみんなの役割りまで全部考えながら行動していました。

 本役さんの衣裳を借りに行く時間を考えて、スタッフさんとか上級生に挨拶回りをしてとか予定を立てると、稽古したものを上級生に見ていただくためには、朝6時前に集まって予習しておかないといけなくなって、その時間にみんなを呼び集めたり。
―― よくやりましたね。でもリーダーシップをとる立場が嫌いじゃない?
 そうですね。もう(自分は)出ないロケットの稽古を見てあげたり。「見てください」と言われると、どうしても見てあげたい。使命感というか、それは花組で培ってきたんです。

 『ショー・アップ・ショー』というショーだったと思うんですが、ダンサーの大浦さんを囲んで研3以下の下級生だけで踊るシーンがあって、それは上級生たちにしてみれば、なんで下級生ばかりが選ばれるの?という気持ちを抱かれたと思います。私たちもプレッシャーを感じていて、そのシーンを絶対いいものにしなくてはと、やっぱり朝早く(笑)、その当時の同期の紫吹淳とか、1期下の匠ひびきとか姿月あさととか、みんな呼び集めて稽古して。あるとき大浦さんがそれをそっと見に来てくださって、そんな姿も見ていましたから。

  専科から星組トップへ

―― 花組から雪組、雪組からまた花組と、1991年から1997年のあいだ行ったり来たりして、翻弄されたり悩んだりする時期があったと思いますが。
香寿たつきさん
 今も、ときどき自分のビデオを観るんですよ。
 そういうのを見ていると、あ、これはこんなことを思いながらやってたなとか、その時々の状態を思い出しますし、自分がくさってたなとかいうのもよくわかるんですよ。お客様には別にわからないことなんですが自分には見えるんです。

 それに、たとえば三番手から二番手というふうに一見ステップアップしていても、自分自身にはその資格はまだなかったなとか、この時の私は、いくらスターダムにのってるようでも前に進んでいないなとか、客観的にわかるんです。今の私だからこそ見えるんだなと思います。
―― 2000年の6月には専科入りしますが、これも、それまでまとめ役をやっていただけに、さまざまな思いがあったでしょうね。
 専科に行ったとき、専科入りがイヤだとかどうとかではなくて、宝塚を好きになってここまでやってきたんだから、自分の納得いく作品と役に出合えたら退めようと決心したんです。
 ただ、本当に組に所属しているときは組の上級生として手本になろうと、いつも考えていたけど、専科だと楽屋も1人だし、どこまで意見を言っていいかも考えてしまう。ですから、とにかく舞台で、「あの人が出てるだけのことはあったよね」と言ってもらえるようにがんばろうと、その気持ちだけでしたね。

 でも、いろいろな組に出ることで出会えた人もたくさんいたし、同じ場面に出ている下級生たちとご飯を食べたり、しだいに人間的なつながりを持てるようにもなりました。
―― そして2001年7月から星組トップになって、本当の長になりましたね。
 嬉しかった反面、星組というのはそれまで出ることのなかった組でしたから、『花の業平』と『ベルサイユのばら2001』で共演した前のトップの稔幸さんを送り出すサヨナラショーで、同じ思い出をあまり共有していなかったことが寂しかったですね。

 でも、先日の星組公演で湖月わたるさんを観ていたときに、1人1人、組の人たちの顔を見たら感慨深かったですね。やっぱり私が最後にいた組ですから特別の愛着はあります。

 私の宝塚生活って、本当にいろいろあって、退めようと思うと異動異動で引き留められて、でも全てが運命というか、それがあったからこそ、今の私がいるんだと思います。こんなふうに女優になって、今ここにいて、こういうふうにしゃべっているのも、運命というか。
―― もう退めるわけにはいかないですね。運命なら。
 大丈夫、退めません。この仕事、大好きですから(笑)。

香寿たつきさん動画メッセージ

インタビューの様子、読者の皆さんへのメッセージがご覧いただけます(6分43秒)

香寿たつきさん動画メッセージ

コリオレイナス

香寿たつきさん

2007年、香寿たつきさんの始動はシェイクスピア作「コリオレイナス」から。本作品では唐沢寿明さん演じるコリオレイナスの妻を演じます。
埼玉公演: 2007年1月23日(火)〜2月8日(木) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
大阪公演: 2007年2月13日(火)〜18日(日) 大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
福岡公演: 2007年2月23日(金)〜27日(火) メルパルクホールFUKUOKA
名古屋公演: 2007年3月9日(金)〜11日(日) 愛知厚生年金会館
英国公演: 2007年4月25日(水)〜29日(日) ロンドン・バービカンシアター
演出:蜷川幸雄
作:W・シェイクスピア
出演:唐沢寿明 白石加代子 勝村政信 香寿たつき 吉田鋼太郎 瑳川哲朗 他
※詳しくは⇒公演情報へ


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