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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

久世星佳さん(後編) ― 素直さが生んだ包容力

(2007.3.10)
 久世星佳さんロングインタビュー後編では、「宝塚は私の庭?」「『愛してる』なんて言えない」「衣装部さんに誉められた理想の体型」など、宝塚歌劇団時代のお話を伺いました。動画メッセージもご覧いただけます。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)

  理想の体型

―― 月組トップをつとめて、宝塚時代を退団したのが97年ですね。
久世星佳さん
 14年いて退めたんです。初舞台はもう24年も前で、そう考えると人生の半分以上、舞台に立ってますね。
―― 宝塚はお好きだったんですか?
 好きだったんだと思います。でも受けた理由はすごくくだらないことなんです。その時自分が通っていた学校がイヤでしかたなかったんです。中学2年の頃で、なんとか逃げ出したかったんですね。

 それに劇場という場所が、どういうわけか小さい頃から大好きだったんです。劇場に入ると赤い絨毯が広がってて、客席と舞台という空間そのものが好きだし、ちょっと自分の庭みたいな感覚でいました。
 子供だから、母親たちがお茶を飲んでいる間に楽屋口まで行って遊ぶんですよ。そうするとファンのお姉さまがたがすごく優しくしてくれて、それにも味をしめて(笑)。そういうこともあって、宝塚は自分にすごく近いところにあると錯覚していたんだと思います。
―― そんな自由な気性だったら、宝塚音楽学校にはじまる現実の窮屈さはけっこう辛かったのでは?
 受験会場の坂道で、もう後悔しました(笑)。今からすでに宝塚の人?みたいな、髪をお団子のひっつめにしてる人たちがたくさん歩いてて、私は浮きまくっていて、初めて、「ひぇーっ、こんなところなんだ」と(笑)。
―― でも、劇団側から見たら、背も高いし男役顔だし、条件は揃ってたわけですよね。
 ところが、私は女優さんに憧れていたわけですから、娘役をするつもりでした。入学してもその気でいたんですが、1年目の初めの演劇の時間に『安寿と厨子王』の安寿を1回読ませてもらっただけで、娘役のパートは終わりました(笑)。
―― 声も低かった?
久世星佳さん
 そうですね。でも小さいときはそれなりに可愛い声をしてたんです(笑)。それがある時期から、喋るのが好きじゃなくなって。面倒くさいというか。その頃からこういう低めの声に変わっていった気がします。
―― 男役の声にはぴったりですよね。
 いえ、声が低くなりきれないで苦しんだ時期もあったんです。男役の声にするにはいろいろな方法でつぶしていく場合もあるのですが、私はタバコも吸わないし簡単にはつぶれなかったんです。舞台で実際にやってる間に、だんだん低くなってきたんだと思います。

  幸せなトップ生活

―― そんな男役を最終的にはまっとうしたわけですが、どのあたりから変わりましたか?
久世星佳さん
 やはり正塚晴彦先生とご一緒したのがきっかけですね。「あ、がんばって“男役”することないんだ」と思ってから、男役で芝居するのが面白くなってきたんです。

 私は宝塚の男役の“型”というのが苦手で、ショーとかで、みんなウインク飛ばしたりするでしょう? あれはかっこいい人がすればいいけど、私がやったら絶対気持ち悪いし(笑)、自分でも気持ち悪くてできなかったんです。男役失格なんですけど。
 キザって踊るのもダメだったし、お芝居で女の人に愛してると言うのも、最初は本当に気持ち悪かった。でも役をいただいてしまうから、がんばる自分がいたりして、どこか曖昧なままでいたんです。芝居は好きだけどどこか気持ち悪いんだよなーというような。

 その時に正塚先生の演出に出合って、「あ、無理することないんだ。その人の気持ちで素直にやればいいんだ。“男役”やろうと思うことないんだ」と。それからすごく変わりました。
―― どんどん男くさくなりましたよね。スーツが似合うと言われたし。自然に立ってる後ろ姿がサマになって。
 それは体型的なものでしょうね(笑)。宝塚にいた最後の頃は、衣裳部さんに「理想の体型」と誉めてもらいました。
―― それに、男の本質というか、内からにじみ出る大きさとか包容力があると言われましたね。
 それは、たぶん、がんばり過ぎなかったからよかったんじゃないでしょうか。根っこが単純なのでその気にはなりやすかったんですよ。
 というか、自分はかっこいい男役、いわゆる宝塚ファンのかたが好きなタイプの男役では絶対ない、と自信を持って思っていたし、がんばらないぶん、自然な大きさみたいなものが出たのかもしれませんね。
―― そして、トップになってからは、男役も宝塚もすごく楽しんでいるように見えました。
 実際楽しかったし、本当に恵まれてたと思います。今思うと、よく劇団のかたたちが最後まで育てててくださったなと感謝してます。
 優等生でもなかったし、すごい華があるわけでもないし、性格的にも宝塚生活をエンジョイしてますというタイプでもなかったし。
 植田紳爾先生にも、もっと社交的になりなさいと言われたりしました。でもそう言っていただけたのもありがたかったなと。本当にちゃんと見て育てていただいたんだなという思いがあります。
―― 久世さんの退団の時を覚えていますが、こんなに幸せそうな人はめったにいないというくらいいい顔してました。
 トップになったときも、もっとたいへんかなと思っていたら、こんなに楽しくていいのかなという感じでしたから。退めるときも、改めて宝塚の楽しさを感じたし、本当にすごく幸せな毎日でした。
―― そんな宝塚生活だったから、女優になろうと、前向きになれたんでしょうね。
 それもありますし、やっぱり、ずっと男役でセリフをしゃべってましたでしょう? では、女の人のセリフを喋ったらどんな気持ちなんだろう、どこか違うんじゃないか、と興味がわいてきたんです。
 男役の私は、決してウソの気持ちでは言ってないんだけど、女の人のままで言ったら、どう違うのかなと、それがどうしても知りたくなったんですね。だから、私って、結局は、ずーっと、どんな形でも芝居をやりたいと思っていたんだと思います。
―― 小さいときに劇場で女優さんを見ていた原体験、そこに戻りますね。
 本当にそうです。子供のときの記憶で、いちばん印象に残っているものは、友だちと遊ぶことでもないし他のなにものでもない、劇場に行ってる自分なんです。

久世星佳さん動画メッセージ

インタビューの様子、読者の皆さんへのメッセージがご覧いただけます(5分42秒)

久世星佳さん動画メッセージ

グッドラック、ハリウッド

期間・場所:
2007年3月2日(金)から18日(日) 新宿・紀伊國屋サザンシアター
2007年3月27日(火) 福岡・メルパルクホールFUKUOKA
2007年3月30日(金) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター中ホール
2007年4月1日(日) 名古屋・中日劇場

作:リー・カルチェイム
翻訳:小田島恒志
演出:山田和也
出演:長塚京三、久世星佳、筒井道隆
※詳しくは⇒公演情報へ


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