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宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

湖月わたるさん ― たいへんなのは承知のうえ。今は「楽しみ!」

(2007.5.12)
 昨年11月12日、宝塚を卒業したばかりの湖月わたるが、まもなく女優としての初舞台を踏む。星組の主演男役として『王家に捧ぐ歌』から『愛するには短すぎる』まで、幅広い男性像を舞台で描き出し、スケールの大きい包容力に溢れた男役だった湖月わたる。そんな彼女が取り組む女優初仕事は、トニー賞受賞の傑作ミュージカル『Damn Yankees〜くたばれ!ヤンキース〜』。役はセクシーでキュートな可愛い魔女役ローラ、今までとは対極にあるような役である。まさに新しい1歩といえる舞台にチャレンジする湖月わたるに、稽古場でインタビュー。 (取材・文:榊原和子/写真:吉原朱美)
 
湖月わたる

 こづき わたる。女優。元宝塚歌劇団星組男役トップスター。埼玉県出身。
 89年「春の踊り」で初舞台。翌年、星組に配属。宙組、専科を経て2003年、星組主演男役に就任。
 宝塚在団中の主な作品に「若き日の唄は忘れじ」(94)、「エリザベート」(96、98)、「夜明けの天使たち」(97)、「風と共に去りぬ」、「フォーチュン・クッキー」〈外部出演〉(02)、「王家に捧ぐ歌」(03)、「花舞う長安」(04)、「長崎しぐれ坂」、「ベルサイユのばら」(05)ほか。06年「愛するには短すぎる」を最後に退団。
 退団後、初舞台にして初主演作「Damn Yankees(くたばれ!ヤンキース)」で女優活動をスタート。8月には「DANCIN' CRAZY」に出演。
        ※   ※

Damn Yankees
期間:5月25日(金)〜6月6日(水)
場所:東京・青山劇場
出演:湖月わたる、川崎麻世、大澄賢也、矢口真里、杜けあき 他
※詳しくは宝塚プレシャスの公演案内をご覧下さい。

  誘惑する魔女

―― この作品でスタートを決めたのはどんなところから?
 出演のお話をいただいて、最初にビデオで映像を見たときに「やってみたいなー」という気持ちになりました。この作品に出られることも嬉しかったし、ローラの役も「魔女役ということで、これはできるかもしれない」と思ったんです。男役からの転身という意味では、かなりがらっと変わると思いますが、だからこそやりたいなと。
―― やりたいと思えるのが、いちばんいいことですよね。
 決めてからは迷いはなかったですね。
―― ミュージカルということですが、女声ナンバーに取り組むのは初めてですよね?
 ローラのナンバーは4曲あるんですが、でも音域などはあまりこれまでと変わらないですね。男役のクセをつけていた部分を削ぎ落として、自分のナチュラルな状態に戻してるという感じなんです。
―― 女性のセリフはいかがですか?
 1人の人物を演じるうえでは、違和感はないんですが、たまに「あたし」とか言いながら、ちょっと不思議な気持ちになったりしてます(笑)。
―― 2002年に外部出演した『フォーチュン・クッキー』という作品で、とても自然に女性役をやってらしたのを覚えてます。でも、そのあと、宝塚の舞台ではどんどん男役らしくなっていった。
 1998年の宙組発足にともなって星組から組替えになり、その頃から、すごく自分の男役としてのカラーや個性を考えるようになりましたね。そのあと2000年に専科に異動し、個性を打ち出していく機会が増えてから、ますます男役くさい男役を目指していったところがあります。考えてみたら中性的な役は、ほとんどこなかったですから。
 そんななかでの『フォーチュン・クッキー』は、自分でも新鮮でした。
―― 素顔みたいな感じにも見えて、ふだんはこんな女性なのかなと。
 演出の謝珠栄先生は、それまでもダンスの振付などで、私のことをよく知っていただいてましたから、「ふだんのわたるでやればいい」と。伸び伸びやらせていただきました。
―― 1度でも外の舞台を踏んでると、女優になるうえでの安心感は大きいのでは?
 でも宝塚を退めたあとで、女優になってというのは、また少し気分が違いますね。
―― 何が違うんでしょう?
 たぶん『フォーチュン・クッキー』は、男役湖月わたるがモナちゃんを演じている、というのが面白いところでもあったと思うんですが、宝塚歌劇団の男役ではない湖月わたる、という立場で舞台に立つのは初めてなので、ちょっと心構えが違う部分が、自分としてはあるなと。
―― 女性らしさというのが、やはりたいへんですか?
 ローラってすごく魅力的で、男の人がイチコロになるという設定は、どうにも変えられないので(笑)。
 モナちゃんのときは私に近づけてくださったんですが、今回はローラに近づかなくてはいけない。そのなかに私なりのローラらしさを出したいと思うのですが、なにしろ“魅力的”というのは欠かせない設定なので(笑)。自分の男役としてのクセを捨てて、もちろん男役をやれと言われたら、いつでもやれると思うんですけど(笑)、変身するのはなかなかたいへんだと思うので、がんばって調整中という感じです。
―― 劇中で誘惑するシーンなどがあるんですね。
湖月わたるさん
 素敵なダンスシーンなので、自分が培ってきたダンスの力を生かして頑張って誘惑したいと思います。
―― ダンスの振付はローリー・ワーナーさんですが、もとはボブ・フォッシー振付のものですね。わたるさんは、宝塚ではフォッシー風のものも踊ってましたよね。
 そうですね。いろいろ躍らせていただきました。フォッシー風の振り付けは難しいけど楽しみでもあり恐くもあり。でも挑戦できる機会を与えていただいたことが嬉しいです。
―― わたるさんにとってダンスは武器の1つで、男役のダンスを極めてきた。でもこれからは、女性としてのダンスを踊ることが課題になるわけですね。
 男役として宝塚らしい踊りを踊るのも好きでしたけど、退団公演の『ネオ・ダンディズム!』謝先生が振り付けされたシーン「惜別」では、性別を超えて1人の人間として踊るという場面をいただきました。そういう意味で、踊りで表現することに関しては「女性として」という構えはないです。
 ですからこの『Damn 〜』のローラの踊りも、自分らしく出来たらいいかなと思っているんですけどね。ただ、大澄賢也さんとデュエットダンスがあるんですが、かなりご迷惑をおかけすると思うので、ちょっと心配ですね(笑)。でもデュエットダンスではどんな要素が大事かということは重々わかっているので、ローラになりきって踊りたいですね。
―― リードしていた側だから、リードされるにはどうしたらいいかという想像力は働きますね。
 働くんですけど、ちゃんとできるかはね(笑)。これから実際に体験していくことでわかることが多いと思います。いつも新しいことに取り組む時ってワクワクするじゃないですか? なので、たいへんなのは承知のうえで、今は「楽しみ!」という気持ちが勝ってますね。

  共演者は知り合いばかり?

―― 主人公ジョーの妻役の杜けあきさんは、宝塚の先輩でもありますね。
 杜さんは大先輩で、私が入団したころにはもうトップスターさんでした。イベントなどでご一緒しても、話しかけたりできるようなかたではなかったんです。『王家に捧ぐ歌』を観にきてくださったときに、お話しさせていただいた覚えがあります。個人的にはあの素敵な歌声を、毎日聞かせていただけるのが嬉しいですね。
湖月わたるさん
―― ローラはジョーが好きで、杜さんのライバルになる?
 ライバルというのとはちょっと違うかもしれません。杜さん演じるメグのご主人ではなく、悪魔に魂を売ったジョーを好きなので。何か次元が違うんですよね。
 でもローラは、ジョーの人間的な部分に惹かれてもいるので、戻してあげたいという気持ちとこちら側にいてほしいのと、そのはざまで悩むんですよ。2人の魂は一瞬、重なり合うのですが、最終的にジョーはメグのところに戻っていく。最後に「おめでとう」というところは、本当に胸にくるんですよ。
―― 大澄賢也さんが変身したジョーですが、彼の舞台は観ていらっしゃいますよね?
 よく拝見してます。大澄さんも宝塚を観にきてくださって、お話をさせていただいたことがあるので、すごく安心です。ダンスも芝居もリードしていただいています。
 悪魔の役の川崎麻世さんも、やはり以前お話したことがありますし、勝手にみなさんに親しみを持ってます(笑)。
―― そして元モーニング娘。の矢口真理ちゃん。
 私と身長差が30センチあるんですよ! 本当にキュートで女の子って感じで、でもこのミュージカルに取り組む意気込みがすごいので、いい刺激になります。
―― 稽古場は、いろいろなところからきたかたばかりで、そこが宝塚とは違うところですが、そのなかにどう入っていこうと思ってますか?
 まずは思い切って体当たりで入っていくしかないですね。かっこつけててもしょうがないし、持ってるものをみんな出していくしかない。共演する先輩のかたたちから、たくさん学びたいです。そして演出の寺崎秀臣さんを信じてついていきたいですね。今私が持っているのは、宝塚の舞台での引き出ししかない。そういう意味では、この作品で引き出しを増やしていきたいと思っています。

湖月わたるさんインタビューの後半は昨年、退団発表を行った頃の心境の変化について、また、星組主演男役として組を率いていた頃、そして退団を決めるきっかけになったあるエピソードなどのお話をじっくり伺いました。動画メッセージもお楽しみに。

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