マイコンテンツ

宝塚プレシャス

タカラヅカ★列伝

貴城けいさん(後編)― 大切な宝物をたくさんもらった

(2007.9.22)
 貴城けいさんインタビューの後半は、宝塚歌劇団時代のお話。シャッフル時代にさまざまな組に出演したこと、そして宙組主演男役に就任したときのお話を伺いました。 (取材・文:榊原和子/写真:岩村美佳)

  激動の宝塚時代

―― ところで宝塚時代を振り返ると、貴城けいという男役はとても優等生だった印象があります。台本覚えとかも早かったみたいですね。
貴城けいさん
 いえ、そんなに早くないですよ。私から見たら(湖月)わたるさんのほうが全然早かったです。
 たまに下級生の子たちに「いつ覚えてくるんですか」って聞かれたりしましたけれど、私は器用でないので、自分一人でやれることはやっておこうということで、家でなるべく覚えてしまっただけで。
―― 睡眠時間とかを削って?
 新人公演時代もそうですけれど、ここ2〜3年はほとんど寝てなかったですね。もう削りようもないというくらい削っていました(笑)。
―― でも細いわりに元気な印象があります。
 おかげさまで15年間一度も休演したことないんですよ。たしかに丈夫かもしれない(笑)。
 たまに風邪ひくくらいで、それも人が1週間かかるような重い風邪でも2日で回復するんです。39度くらい熱が出ても、その日何とか2回公演をがんばると次の日に治ってしまう(笑)。
―― 喉も強そうですよね。
 たまにガラガラになったことはありますけれど、出なくなることはなかったですね。
―― 2004年のシャッフル時期から退団までが、いろいろな意味でいちばんたいへんだったと思いますが、まず2004年に他の組に出るというのはいかがでした?
 それまで雪組だけでしたから、最初にその話を聞いたときはおおげさですけど「えーっ、そんなだったら退団しちゃおうかな」(笑)というくらい不安でした。
 でも他の組に行ってみたら全然どうっていうことはなくて。お稽古の進め方というか、初日までの作り上げていく過程はどの組も一緒で安心しましたし、かえってメンバーが新鮮で面白かったですね。
―― 星組と月組に特別出演でしたね。星組の『1914/愛』は、楽しい公演でした。
 主演の湖月わたるさん自身がすごくパワフルなかたで、そういう組カラーだなという気がしました。ショーの『タカラヅカ絢爛l!』は、そのあと月組の『タカラヅカ絢爛ll!』にも引き続いて出たのですが、同じショーでも組によって違う雰囲気になるんだという気がしました。なかなか他のかたにはできない経験をしたなと思います。
―― 月組の『飛鳥夕映え』では役替わりがあって、たしか3役でしたね。
 同期の瀬奈じゅん大空祐飛と役替わりで、2人は2役なのに私だけが3役でした。稽古も遅れて入ったのに、なんで私だけ多いの?みたいな(笑)。
―― 中臣鎌足がとても印象的でした。
 本番はできるかぎりがんばりました。実はいろいろ失敗もやらかしていたんですけど、同期が一緒で心強かったし楽屋裏も楽しかったし、すごくいい思い出です。
―― そして雪組に戻られて1年後、2005年の11月に宙組主演が内定したわけですが、それまでなじみのない組のトップになるということに、不安はありませんでしたか。
 やはりすごく悩みました。宙組主演になるか雪組に残るかということでしたから、ものすごく迷いました。
 でも主演男役という立場は誰でもなれるわけではないですし、そういう機会を与えてくださったのなら、お受けしようと決心をしてお受けしたんです。もちろんものすごく不安でした。それまで特別出演などで1度でも出たことがある組であればまだ心構えができるし、安心感があると思うんです。ほとんど初めて会う人ばかりという組に主演で行く、その葛藤はすごくありましたね。
―― 雪組に残るという道もあった?
貴城けいさん
 そうです。そのあとどうなるかということについては話には出なかったのですが、絶対に宙組に行きなさいということではなくて、そのときの選択肢としては両方があったということです。ですから、宝塚大劇場のサヨナラ公演の記者会見でも「別の選択肢もあったかもしれない」とお話ししたんですが。
 でも最終的には宙組に来て本当に幸せだったし、もちろん雪組は初舞台以来14年いましたから愛していますけれど、宙組にいた時間が私の宝塚人生のなかでいちばん印象に残っていますし、今もまず思い浮かべるのは、宙組のみんなの顔なんです。
―― でもその時点では、あえて厳しいかもしれないほうを選んだ。それはすごい勇気ですね。
 自分でも勇気があったと思います(笑)。でも誰も決めてくれないし、自分が決めるしかないことですから。ものすごく迷いましたし、なかなか決められなかったですね。私はまだ結婚してませんけど、結婚を決めるときはこんなふうに悩むかもしれないとか、いや結婚を決めるより悩むかもとか(笑)。
―― 結婚は2人ですけど、主演は1人で責任を背負うわけですからね(笑)。これを引き受けた時点で起きる雑音とかは気になりませんでしたか?
 でも何かを行動する時は、いいと思ってくださるかたもいれば違うと思うかたもいて、みなさん人それぞれですから。だからこそ自分の気持ちをちゃんと見つめて決めないといけなくて。意図と違うことを言われたときに自分で責任を取れなかったり、自分で納得できなくなってしまうのはイヤですから。自分で考えて責任を取りたい。自分が決めたうえで、いいことも悪いことも引き受けたいタイプなんです。
―― そして、捨て身で飛び込んでいったんですね。
 本当に捨て身というのがぴったりかもしれない(笑)。
―― 宙組のみなさんも、率直で素直な貴城けいさんにかなりカルチャーショックがあったと思いますよ。
 私はずっとそれで生きてきてしまったというか、作ったりできないんです。みんなとしゃべりたいほうだし、それまでと同じように、話しかけたいと思うとすぐ話しかけに行っていました。
―― 下級生も驚いたでしょうね。でも、いい風が吹いていました。舞台の雰囲気も明らかに変化が観てとれました。
 そう言っていただけると、私が宙組に行った意味があったなと思います。もちろんまずは自分自身のために行ったんですが、自分だけがよければいいわけではありませんし、私が行ったことで少しでもよかったと思ってもらえるにはどうしたらいいのだろうと、いつも考えていました。
 博多座公演コンサートも全員ではなかったし、本当に宙組全員でできたのはたった1公演だったんです。でも、その短い期間のあいだ、みんながこちらを向いてくれたのは本当に嬉しかったです。もちろん長くできたらそのほうがいいけれど、たとえ短くても通過点ではなく宙組のみんなに少しでも何かを残せたらいいなと思っていましたから。でもみんなもものすごく私を支えてくれていたんですよ。だから今でも宙組を本当に愛しています。
―― たった1作というのは残念で、もったいなかったなと思います。
貴城けいさん
 でも、今考えるとこうして新しいスタートをきって、いろいろお仕事をいただいて、今がとても幸せだし、これでよかったんだと思っているんです。
―― 潔いですね。そういえば2月の東京の千秋楽のあとには桜の花を抱えて沿道を歩かれて、それが話題になりましたね。
 何を持とうかなと思ったんですよ。大劇場では胡蝶蘭でしたが、東京では変えたいなと思っていて。舞台では無理ですが、桜を持ちたいなと思って探してもらったんです。おかげで、みなさんにだいぶ早い春をお届けできました。
―― さて、今、宝塚生活を振り返っていかがですか? 
 宝塚の舞台で過ごした15年間に宝塚音楽学校時代の2年を足すと、私の人生の半分以上になるんです。それだけの時間を宝塚で過ごしてきて、本当にいろんなことを教えていただいたし、たいへんなこともありましたけど、本名の私にとってもすごく成長させていただける場だったなと思います。舞台というものの魅力も厳しさも教えてもらったし、一生の仲間とも出会えたし、大切な宝物を本当にたくさんいただきました。
―― そして、これからの貴城けいはどうなっていきたいですか?
 たぶん、やってきたこととか経験してきたことで無駄なことなんか1つもないと思うし、成功したことも失敗したことも含めて、今までの全部があるから今の私がいるんだと思っています。
 これからは、同じ芸能界ではあっても仕事の中身は違いますから、宝塚の貴城けいとは違う新しい貴城けいを見せていけたら。これまでの貴城けいを全て消化して、そのうえで新しい貴城けいを生みだしていければいいですね。そしてその努力は惜しまないつもりです。
―― 貴城さんは、この仕事がやっぱり好きなんですね。
 いえ、宝塚時代から何度、私は向いていないのかなとかやめようかなと思ったことか(笑)。でもお客様が笑顔で帰られるのをみると嬉しいんです。サヨナラ公演は客席も涙ぐんでるかたが多かったんですけど、『コパカバーナ』のあのノリノリの楽しさの中にいたら、「私なんかたいした人間ではないし、自分が好きでやっていることなのに、こんなに喜んでくださるんだ」と本当に嬉しくて、自分自身もそれですごく幸せだったんです。そういうことを知ってしまうと、やっぱりやめられないなーと思いますね(笑)。

『愛、時をこえて─関ヶ原異聞─』

期間・場所:
《大阪公演》2007年9月9日(日)〜10日(月) 浪切ホール 大ホール
《名古屋公演》2007年9月12日(水)〜13日(木) 中京大学文化市民会館 プルニエホール(旧名古屋市民会館中ホール)
《東京公演》2007年9月19日(水)〜24日(月・祝) THEATER1010
出演:貴城けい、市川段治郎、華城季帆、市川笑也 ほか
作・演出:岡本さとる
音楽:加藤和彦
衣装スーパーバイザー:ホリ・ヒロシ

公演の詳しい情報は⇒宝塚プレシャス公演情報ページへ


バックナンバー

宝塚インタビュー

宝塚ZoomIn!

注目の公演・話題の舞台に臨む宝塚スター、演出家の素顔に迫る!

スターNow!

舞台やライブで活躍中のスターの“いま・この瞬間”を、5つのQUESTIONで探る。

タカラヅカ★列伝

退団後もますます輝きを増す宝塚スターにインタビュー。当時のお話や、退団後の活動を聞く。

スペシャル

話題作を手がけた宝塚歌劇団演出家へのインタビューなど、従来のコーナーにおさまらない特別インタビューをお届けします。


このページのトップに戻る