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早霧せいなさん・蓮水ゆうやさん ― 『殉情』谷崎の美と愛の世界

(2008.7.12)
 宙組のバウ・ワークショップは谷崎潤一郎の名作「春琴抄」を、石田昌也が脚色・演出した『殉情』。盲目の美しい春琴に対する奉公人・佐助の献身的な愛を、現代的な切り口も加えてアレンジ、宝塚らしいファンタジーとシリアスな愛の世界となっている。初演は95年にバウホールで、02年はシアター・ドラマシティと赤坂ACTシアターで、それぞれ絵麻緒ゆうの主演で上演されたもの。今回は宙組の若手男役スター早霧せいなと蓮水ゆうやが、谷崎の美と愛の世界に挑むが、そんな2人を初日直前にインタビュー。 (取材・文:榊原和子/写真:岸隆子)
 
早霧せいな

 さぎり せいな。宝塚歌劇団宙組男役。長崎県出身。
 01年、宝塚歌劇団入団。『ベルサイユのばら2001』で初舞台。
 06年、『NEVER SAY GOODBYE―ある愛の軌跡―』で新人公演初主演。06年、『維新回天・竜馬伝! −硬派・坂本竜馬III−』で新人公演主演。
 08年、『殉情』でバウホール公演初主演。(写真左)

蓮水ゆうや

 はすみ ゆうや。宝塚歌劇団宙組男役。神奈川県出身。
 02年、宝塚歌劇団入団。『プラハの春』で初舞台。
 08年、『殉情』でバウホール公演初主演。

  奉公人と男役のせめぎ合い?

―― 名作の再演なので、プレッシャーがあるのでは?
早霧せいな: 再演だからというプレッシャーはあまりないんです。ただ『殉情』という作品の難しさ――関西弁だったり、日本物の所作だったり、着こなしとか、お稽古を通しての難しさのプレッシャーはありますが、再演ということではそんなに意識していません。
蓮水ゆうや: 私もそうですね。有名な作品ということで、そちらのほうがたいへんかなと。
―― 早霧さんは、絵麻緒ゆうさんの再演を観ているそうですね。観ていたときと作品に入ってでは受け取り方が違いますか?
早霧: 違いますね。純愛は純愛なんですが、最後に自分も目を刺して2人で見えない世界で暮らすということを、観ているときは悲劇的に捉えていたんですけど、実際に自分が演じてみると、佐助は、ずっと恋い慕っていたこいさんと、念願かなって同じ世界になれたということで、最終的にはハッピーな気持ちで終わるんです。
蓮水: 演じてみるにつれ、本当に奥の深い作品だと思います。感情表現も豊かで、演じるというより生きた芝居ができる作品なので、楽しいですね。こう見せよう、こういう言い方をしようというよりも、感情のおもむくままに出たセリフ、というのが生きてくる芝居だと思います。
―― 佐助は主従でいえば従で、献身的で、そういう点では宝塚的ではない部分も多い男性像ですが。
早霧: 演出の石田先生も、宝塚の男役としてはあまりない設定だし、ちょっと違う男役像だからイヤだろうけど、みたいなことをおっしゃるんですけど、私はあまり抵抗なくて。
蓮水: 私も全然なさすぎて(笑)、むしろ男役っぽいところも、もっと見せないとダメだと言われるくらいなんです。この間も通してやってみたとき、最初に出てきてからのセリフのあと、“丁稚に戻りすぎ”だと言われて(笑)。そういう境目が難しいですね。
―― 早霧さんは、ふだんの返事も「ヘイ」と言いそうだと「宝塚スカイステージ」の番組でも言っていらして、ふだんから佐助的なところがあるんですね。
早霧: あまり腰が低すぎると宝塚としてはちょっと違うんだろうなと。
 日本舞踊のナンバーが2つ、1幕と2幕でそれぞれあって、そのときは本当に解放された佐助の心を表現して踊るのですが、そこであまりにもいつもの佐助の姿、丁稚・奉公人としての姿を念頭に置きすぎるといけないみたいです。
蓮水: そうそうそう。
早霧せいなさん
―― かっこいい男役で踊ってほしいんですね?
早霧: そうなんです。日本舞踊での男役の型も必要ですし、また、幻想という世界は佐助の願望であり春琴の願望でもあるので、ふだんとは別の夢々しい感じにしなくてはいけないんですが、でも最初はちょっと丁稚的な部分が残ったりしました。

  こんな至近距離は初めて

―― 佐助の献身と愛は素晴らしいと思うのですが、この物語の恋愛観についてはいかがですか?
蓮水ゆうやさん
早霧: やっぱりすごい愛の世界だと思います。観たお客様が、自分はできないかもしれないけどこういう愛もあっていいんだと思ってくださればいいなと。相手と同じ世界にいたいという気持ちはわかりますね。目こそ刺せませんが、いつかこういう大恋愛をしたいと思うし(笑)、身も心も通じ合えるような生活をしてみたいです。ある意味うらやましいですよね。
蓮水: うらやましいです。石田先生が「最終的に好きな人に染まりに染まって、染まろうとした男の話だ」と。
 それに先生は、自分は好きな人に趣味とか合わせるタイプではなく、「自分は自分」というタイプなので、作家の谷崎さんの気持ちはわかるようでわからない、というようなことをおっしゃっていて。でもやってる私たちは本当に抵抗がないんです。
―― それから、表面的には主従を通していますが、実際には結ばれている。そういうニュアンスも難しいのでは?
蓮水: 佐助のほうがまだストレートに出していますよね。春琴のほうが難しいと思います。言葉と感情がまったく裏腹ですから。
早霧: そう、難しいのは春琴かもしれない。
―― 春琴役は、和音美桜さんとすみれ乃麗さんが演じていて、早霧さんは同期生の和音さんとですね?
早霧: まだ1回1回が試行錯誤というか、お互いに今日はこうやろうとか細かくは言わないんですが、違いはなんとなく感じ合いながらやってます。あとで「あそこはああだったよね、こうだったよね」というのは同期だから言いやすいし、いろいろ演技を練れますね。
―― 目の見えない春琴ということで、普段からつい面倒を見てあげたりとか?
早霧: いやいや、全然(笑)。わりとはっきりと役と普段は分けてて、あんまりプライベートまでベタベタした関係にはならないというか、私自身こざっぱりしてるんだと思います。
早霧せいなさん
蓮水: 男前なんです。
早霧: 劇中でも肩を組んだり手をつないだりしたことがあまりないので、今回ほとんど座ってるとき以外は手をとっているという設定が珍しくて。一応“手引き”という設定はあるにしても、至近距離に相手役がいるというのは新鮮です。2人で1つということが観ている方たちに自然に見ていただけるように、そこにぎこちなさがないように、つないだ手が自然に見えたらなと思います。
―― すみれ乃さんはだいぶ学年が下なので、蓮水さんは引っぱって行く佐助ですか?
蓮水: かなり下級生だから、とりあえず場慣れすることに一生懸命という感じですし、お互いに試行錯誤するところまではまだいかないですね。すごくがんばってる姿を、佐助としては見守っていきたいなと思ってるんですが、自分のほうも必死です(笑)。

  1人タイプの2人?

―― お互いのことを、こういう人だよと語っていただきたいのですが。蓮水さんから見た早霧さんは?
蓮水: 下級生のころからバウホールもよくご一緒させていただいて、出るシーンも一緒、みたいな感じでした。『維新回天・竜馬伝!』(06年)の新人公演でもご一緒しましたから、そういう感覚が強くて、仲間という感覚が抜けないんです。しかも学年も1つしか離れてないから、ふだんもよくしゃべりますよね。
早霧: くだらない話ばかりだけど(笑)。
蓮水ゆうやさん
蓮水: さっきの話ではないんですけどサバサバしたかたで、そこが好きなんですが(笑)。
―― 蓮水さんはかなり男役らしい風貌ですね。
早霧: それが見かけと違って女性的な部分がたくさんあって、料理もできるし絵も描けるし、物まねもうまいし。ファンの方には知られてないところがたくさんあって、これから徐々にそれが皆さまの前で開花していくんじゃないかと。根が優しくて、明るい部分がいっぱいあるし。でも自分ではネクラと言ってるね。
蓮水: 自称ネクラなんです。ふとしたときにネクラになる。家にいるときとか暗いですよー(笑)。みんなとしゃべるときは明るいんですけどね。どっちかというと1人タイプなんです。
早霧: 私も1人タイプ。
蓮水: え?(笑)
早霧: 見えない?
蓮水: 休みっていうと家にいないような(笑)。
早霧: そうだね(笑)。
―― そういうお2人が、それぞれ佐助になりきるのを楽しみにしてます。
早霧: そうですね。素敵な作品ですから心をこめて演じたいです。両バージョンともお見逃しなく。
蓮水: 7月後半から私の番ですので、がんばります。ぜひ両方、観にいらしてください。
早霧せいなさん・蓮水ゆうやさん

宝塚バウホール開場30周年
バウ・ワークショップ

『殉情(じゅんじょう)』
−谷崎潤一郎作「春琴抄」(中公文庫版)より−

脚本・演出:石田昌也
場所:宝塚バウホール

公演期間:2008年6月28日(土)〜7月8日(火)
主演:早霧 せいな
公演の詳しい情報は⇒宝塚歌劇団公演案内ページへ

公演期間:2008年7月17日(木)〜27日(日)
主演:蓮水 ゆうや
公演の詳しい情報は⇒宝塚歌劇団公演案内ページへ


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