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医療・健康
朝日新聞社

お年寄りと薬 上手な付き合い方 〜患者を生きる〜

初出:2010年11月6日〜11月10日
WEB新書発売:2011年2月25日
apital

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量減らして症状改善

 一口大に切ったスイカに穴をあけ、錠剤と粉薬を入れる。それを口元へ。男性はゆっくりとのみ込んだ。「アイスクリームに混ぜて試したけれど、スイカが一番」。東京都港区のマンションで認知症の男性(75)を介護するヘルパーの女性は、そう話す。
 男性は8年前、都内の大学病院の神経内科でアルツハイマー型認知症と診断された。妻子はなく一人暮らし。身の回りのことができなくなった男性の依頼で、住み込みで世話を始めた。
 やがて、叫ぶような大声を出すようになった。心配になり、大学病院の医師に相談した。すると「興奮を抑える」という抗精神病薬を処方された。朝昼晩で各3錠。ほかに、アルツハイマー病治療薬やコレステロールを減らす薬、血圧を下げる薬など4種類を飲んでいた。
 抗精神病薬を飲ませても、30分もたつと叫び出し、よだれの量も増えた。ひどくなっているのではと、女性は不安になったが「医者は1日29錠まで大丈夫。ひどければ量を増やしてと言うばかりで」。
 ある日、同じ大学病院の精神科も受診するように言われた。そこで同じ抗精神病薬を1日6錠追加するよう指示された。心配でケアマネジャーに相談すると、認知症のお年寄りを中心に訪問診療をしている医師を紹介してくれた。
 男性を診察し、経緯を聞き終えた医師は「抗精神病薬の副作用でしょう」。朝昼夕各4錠飲んでいたのを、すぐに昼夕各1錠に減らし、様子が安定するまで日に2回は女性に電話し、確認した。すると3日目に歩き出し、次第に大声やよだれもなくなった。
 お年寄りは、痛みや症状をきちんと伝えられないことが多いという。「本人が難しいなら、家族や介護者に副作用を説明して状態をよく見てもらい、薬の処方にいかすことが大切。だが、医者と患者側のそうした意思疎通はなかなかできていないのです」。医師はそう話す。
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