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医療・健康
朝日新聞社

「うつ」からの職場復帰 〜患者を生きる〜

初出:2006年7月25日〜7月30日
WEB新書発売:2011年3月11日
apital

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 「うつ」で仕事を休んでしまったら、もう職場に戻れないのではないか…。患者はそんな不安でさらにストレスにさらされます。10カ月の休職で自信を失った金融機関の営業マン、抗うつ剤を飲みながら4年間働き続けた末、休職するに至った女性。2人を支えたのは、家族と、復職を支援する自助グループの仲間でした。(文中の肩書き、年齢などはすべて掲載当時のものです)


仕事で評価されず、自信失う

 「ここの仲間たちや家族に支えられました。ひとりで抱え込まずに済んだのが、復職できたポイントでした」
 6月3日、東京・九段下の会議室。約20人を前に、東京都内の岡野高芳さん(31)=仮名=は口を開いた。
 うつ病患者と家族のための自助グループ「うつ・気分障害協会」(MDA―JAPAN)が開く復職支援プログラムの会合。集まったのは、30〜49歳のうつ病患者たちで、職場復帰が共通の目標だ。
 MDAは01年、北米の自助グループをモデルに、保健師の山口律子さん(日本うつ病学会評議員)を代表にして設立された。産業カウンセラーや臨床心理士らとともに復職に向け訓練をする。
 この日、復職した人は「成功のポイント」、会社に復帰しようとしている人は「課題」について、それぞれ発表した。
 山口さんは「『復職の成功例』を身近に感じ、刺激を受けてもらうのが狙い」という。
 岡野さんは金融機関の営業マン。うつ病と診断され、治療のため10カ月に及ぶ休職期間を経て、復職を果たしたばかりだった。
 もともと責任感も上昇志向も強いタイプで、がむしゃらに仕事に没頭した。2年前、大きな契約をまとめたが、冬のボーナスには反映されなかった。正当に評価されていないと思い、仕事への疑問がわき始めた。
 「何のために、働いているんだ」
 昨年春にはさらに仕事が増え、上司に「過重だ」と訴えたが聞き入れられなかった。
 集中力がなくなり、ミスが出始めた。「どうしちゃったの」。周囲のそんな声に次第に追いつめられていった。
 夜、眠れなくなり、会社で居眠りするようになった。6月、会社のトイレで暖房便座に座ったとたんに寝てしまい、気付くと数時間がたっていた。お尻を低温やけどした自分にがくぜんとした。
 「自分は人と折衝する能力がない。営業に向いていない」。自信がなくなる一方、仕事の納期は迫る。空回りし、頭は混乱していった。
 7月、出張先の大阪から、逃げるように自宅に戻っていた。どういうルートで帰ったのかも覚えていない。気付くと布団のなかで震えていた・・・

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