医療・健康
朝日新聞社

糖尿病で傷つけた腎臓 〜患者を生きる〜

初出:朝日新聞2007年5月1日〜5月6日
WEB新書発売:2011年10月11日
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 糖尿病になると様々な合併症のリスクが高まりますが、腎臓機能が低下する糖尿病性腎症もそのひとつです。横浜市の男性は、治療をせずに悪化し、人工透析が必要になってしまいました。(文中の肩書き、年齢などはすべて掲載当時のものです)


週3日、4時間かけて人工透析


 赤い血液が透明なチューブの中を流れてゆく。人工透析装置のかすかな音が、ベッドが並んだ病室に響く。
 横浜市の製薬会社員、松本秀和さん(49)=仮名=は糖尿病性腎症で、昨年3月から人工透析を受けている。
 週3日、月水金の夕方、外回り先から市内にある血液透析専門の東神クリニックに行く。午後5時半から4時間。その日はフレックスタイム制を利用して、いつもより30分早い午前8時15分に出社し、午後5時に勤務を終える。
 腎臓の「糸球体」は細い血管のかたまりで、血液をきれいにして尿をつくる場所だ。だが、糖尿病で血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続くと、その血管が傷つき、機能が低下してしまう。それが糖尿病性腎症だ。
 4月末の金曜。松本さんはクリニックに着くと、更衣室で背広からパジャマに着替えて、ベッドに横になった。
 右腕の内側には小さな黒いあとが2カ所ある。人工透析装置とつなぐために針を刺す「シャント」がある場所だ。手首に近い側から動脈の血液が1分あたり約250ミリリットル引き出され、透析装置を通って老廃物や余分な水分が除去された後、ひじに近い側から静脈へ戻される。
 30分ほどして夕食が配られた。鶏肉のそぼろといり卵の丼もの、野菜のてんぷら、酢みそあえ。熱量は718キロカロリー、たんぱく質は23・2グラム。塩分は1・9グラムと抑えられているが、熱量やたんぱく質は少ないわけではない。柴田和彦院長(44)が「透析患者には一定量のたんぱく質が必要なんです」と説明する。
 松本さんは利き腕の右手が透析装置とつながっているので、スプーンとフォークを使い、左手で食べた。
 透析中はベッドから離れられない。松本さんは、イヤホン付きの小型テレビでプロ野球中継を眺めて過ごすことが多い。「なかなか時間がたたなくてね」
 透析を始めて1年2カ月。生活リズムには慣れてきたものの、週3回、長時間拘束されるのは楽ではない。
 健康診断で血糖値が高いといわれたのは、30代の前半だった。だが、病院へも行かず、食事も改めなかった。それをいまは悔やんでいる・・・

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糖尿病で傷つけた腎臓 〜患者を生きる〜
216円(税込)

糖尿病になると様々な合併症のリスクが高まりますが、腎臓機能が低下する糖尿病性腎症もそのひとつです。横浜市の男性は、治療をせずに悪化し、人工透析が必要になってしまいました。[掲載]朝日新聞(2007年5月1日〜5月6日、5900字)

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