医療・健康
朝日新聞社

三浦雄一郎の挑戦 〜患者を生きる〜

2012年03月19日
(7000文字)
apital

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 70歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さん。不整脈の一つ、心房細動と診断され、医師には「山に行かなければ、不整脈は起きない。山に行かないのが、最大の解決法だ」と言われていました。三浦さんが選択したのは、カテーテル・アブレ―ションを受けて、75歳で再挑戦することでした。(文中の肩書、年齢などはすべて掲載当時のものです)


心臓が空回りする


 息が切れる。脂汗が出てくる。
 札幌市郊外の藻岩(もいわ)山。11年前、531メートルの頂上に向かう道で、あえぐ一人の男性がいた。
 抜き去っていく人は、それが三浦雄一郎(みうらゆういちろう)(76)とは気づかない。当時65歳。身長165センチに体重86キロと太った体形に、プロスキーヤーとして、冒険家として、名をはせた三浦の面影はなかった。
 苦しい理由は運動不足だけではなかった。子どものころからの不整脈が、50代後半からひどくなった。何かに胸をつかまれるような痛みと不快感。
 頂上を目前にあきらめて帰った。「これは大変だな」。三浦の実感だった。
    *
 85年、三浦は世界7大陸最高峰のスキー滑降を達成すると、大きな目標を失った。大好きな飲み食いに明け暮れた。「毎日なんやかんやと食べ、週に1回はビールを大ジョッキ5杯飲んで、その間に日本酒も飲んで、さらにジンギスカンを1キロも食べた」
 しかし、アルプスの4千メートル級の山々を88歳で縦走した父の故・敬三(けいぞう)や、フリースタイルスキーのモーグル種目で94年リレハンメルと98年長野、2回の五輪に出場した次男の豪太(ごうた)(39)に、刺激された。
 藻岩山を再起の第一歩と考えていた。いきなりの挫折。
 「まずは普通の60代の健康体に戻ること。ついでに運動習慣をつけて、エベレストに登っちまおうと。むちゃくちゃな計画だが、最初が散々の方がおもしろい」
 さっそく、足首に1キロの重りをつけ、リュックサックに10キロほどの重りを入れて、歩き始めた。酒の量もほどほどにし、体を絞るようにした。
 まもなく富士山に登れるようになった。その後、3年かけてヒマラヤに6回行き、5千、6千メートルと高度を上げてチョーオユー(8201メートル)まで登った。
 「少しハードな運動をすると不整脈が出たが、気にならなかった。慣れているせいか、出るものだと思っていた」
 03年春。世界最高峰制覇を目指してネパールに入った。
 途中、4千メートル付近で、それまで経験したことのない、ひどい不整脈に襲われる。シェルパのロッジで昼食を終え、外に出た時だ。階段を上がろうとした瞬間、気が遠くなって動けなくなった。
 「心臓が空回りを始めた」・・・

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三浦雄一郎の挑戦 〜患者を生きる〜
210円(税込)

70歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さん。不整脈の一つ、心房細動と診断され、医師には「山に行かなければ、不整脈は起きない。山に行かないのが、最大の解決法だ」と言われていました。三浦さんが選択したのは、カテーテル・アブレ―ションを受けて、75歳で再挑戦することでした。「患者を生きる」心臓・血管シリーズ[掲載]朝日新聞(2009年6月30日〜7月5日、7000字)

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