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医療・健康
朝日新聞社

ストレスで耳鳴り、めまい―メニエール病 〜患者を生きる〜

初出:2010年3月23日〜3月28日
WEB新書発売:2012年8月6日
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 「ストレスのない生活を」と言われても、どうしたら?メニエール病でひどい耳鳴りとめまいに苦しんだ男性は、戸惑います。一度は症状が軽くなりましたが…。(文中の肩書、年齢などはすべて掲載当時のものです)


耳鳴りと難聴から


 商社員の毎日は過酷だ。年に8回は海外出張に行く。日曜日に出発し、休まず働いて翌週日曜に帰国、次の朝には時差ぼけもいとわず出勤する。都内の大手商社に勤める竹内久博(たけうちひさひろ)さん(46)も、そんな毎日が当たり前だと思っていた。ひどいめまいで倒れるまでは。
 最初に右耳に耳鳴りが出始めたのは10年ほど前。6年間駐在したフィリピンから帰ってきた直後だった。寝る前や朝起きた時など、静かな場所にいると、キーンという音が聞こえてきた。
 疲れると、耳がふさがったような感覚にも襲われた。プールで耳に水が入ったときと似ていた。男性の声や低い音が反響し、聞きづらかった。ただ、少し休めば治った。
 フィリピンでは主に、日本から現地を訪問する取引先の応対に追われた。昼はプロジェクトの関連施設の案内や打ち合わせ。夜は会食。土日はゴルフがあった。若さと勢いでハードな毎日を乗り切って帰国した時、30代の後半になっていた。
 40代に入り、2006年ごろから耳鳴りが頻繁に起き、治りづらくなった。
 右耳の聴力が落ち、商談でも隣の同僚とのひそひそ話が聞き取れない。左耳で聞き取ろうと、つねに右側に座るようにした。それが難しいときは、その場の状況と上司や同僚の口の動き、時折耳に入る単語をヒントに、話の内容を推し量った。
 社内で「病気です」とは言えなかった。大した症状でもないのに担当を代わったり、仕事相手の信用をなくしたりしては困る。
 健康に自信があった。お酒も好きで、付き合いは断らない。自分は典型的な商社マンだと思っていた。ちょっとくらい体に無理してでも、周囲の期待に応えるつもりだった。でも、急激に悪化する耳鳴りに不安が募った。
 06年の暮れ、地元の耳鼻科に行った。ストレスなどを誘因に耳鳴りやめまい、難聴が起こる「メニエール病」かもしれない、でも、はっきりとはわからない、といわれた。
 「ま、ストレスのない生活をこころがけてください」
 そんな医師の言葉に憤りを感じた。
 「ストレスがないなんて、この仕事にはありえません」。そう言いかけて、言葉をのみこんだ・・・

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