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医療・健康
朝日新聞社

おなかの「相棒」とともに働く 〜患者を生きる〜

初出:2011年6月14日6月19日
WEB新書発売:2013年4月22日
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 ブティックの経営者だった仙台市の女性は、小腸がんと診断され手術を受けます。人工肛門になった体で仕事を探しますが、何度も不採用通知を受け取りました。(文中の肩書、年齢などはすべて掲載当時のものです)


体重減り、腹部に違和感


 植物から抽出した精油の香りで体や心をいやすアロマテラピーサロンを経営する仙台市の佐藤千津子さん(40)は4月、インドネシア行きの機内にいた。本格的な施術が学べる学校を現地に立ち上げるための準備だ。
 片道7時間のフライト中は始終、へその左側に顔を出す人工肛門(こうもん)につけた袋「パウチ」を気遣っていた。パウチは15×20センチほどのポリエチレン製で、腸から押し出された便をためる。
 機内で袋がよじれて中身が漏れれば、においや衣服の汚れで面倒なことになる。袋の膨らみ具合を確かめ、1〜2時間おきに狭いトイレの中で体を折り曲げ、中身を便器に捨てた。
 愛着を込め「相棒」と呼ぶ人工肛門とは、小腸がんの手術で直腸や肛門をとって以来、3年のつきあいになる。
 2000年に盛岡市の中心街に、若い女性向けの服飾雑貨店を構えた。立ち上げたブランドは人気を集め、東北に4店を数えるまでになっていた。流行を察知し、企画から3週間で商品化にこぎつける小回りの良さを強みに、月の半分は発注のためソウルや東京へ出張していた。
 不調の始まりは、05年8月だった。当時は長女が生まれて半年。事務所に一緒に通勤し、仕事の合間に授乳した。1歳の長男を保育所に迎えに行くため夕方に仕事を抜け、夕食を作り事務所に戻る毎日だった。「仕事や子育てが楽しくて、眠る時間も惜しかった」
 しかし店の仕入れのため東京に出張中、繊維問屋街でおなかの痛みに襲われトイレに走った。便器が赤黒く染まった。血便だった。自宅に戻り、胃や大腸の内視鏡検査を受けたが、原因がわからなかった。
 翌年春にも血便が出た。徐々に体重が減り始めた。「社長、無理してない?」。20代の従業員にも気遣われた。仕事の後のビールもおいしくない。
 07年5月、とうとう体が食事を受け付けなくなった。脱水と栄養不足で2週間で体重が8キロ落ち、31キロになった。歩けなくなり、岩手県立中央病院(盛岡市)に緊急搬送された・・・

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