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医療・健康
朝日新聞社

がんと障害年金 〜患者を生きる〜

初出:2011年6月21日〜6月26日
WEB新書発売:2013年4月22日
apital

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 薬剤師の女性はがんのため働くことや家事が満足にこなせなくなり、障害年金の支給を申請しました。二人の子育てもするシングルマザーの女性にとって、貴重なお金です。(文中の肩書、年齢などはすべて掲載当時のものです)


「手術が必要」突然の告知


 3月下旬、埼玉県白岡町の薬剤師、小野崎卓子(おのざきたかこ)さん(50)の元に障害年金3級の支給決定を知らせる封書が届いた。
 シングルマザーとして、月十数万円の収入で大学1年生の長女と高校1年生の次女を養う。卵巣がんの再々発による治療の影響で、働けるのは週約10時間。体力が落ち、家事もほとんどできない。これからは2カ月に1回、約10万8千円が銀行口座に振り込まれる。「これで、生活費の足しになります」
 体の不調が始まったのは2006年春。フルタイムで勤務中に突然、猛烈な吐き気に襲われた。その後、下痢や腹痛にも見舞われることが続いた。「さすがに我慢できない」。7月に入り、自宅に比較的近い総合病院に駆け込んだ。
 超音波で診ると、左の卵巣に4センチほどのチョコレート囊胞(のうほう)が見つかった。経過観察となったが痛みは続き、徐々にひどくなっていった。10月に再び病院を訪ねると、卵巣が少し大きくなっていた。11月にMRI検査を受け、結果を聞きに行くと、医師がいきなり告げた。「手術が必要です」「なぜ、手術が必要なのですか」。何度も問いただすと、MRI検査の診断報告書を読み上げ始めた。
 「卵巣がんとして説明可能な所見です。骨盤内両側にリンパ節腫大がみられ、リンパ節転移と考えます――」
 「まさか。私が、がん?」
 自分が入院している間、娘たちはどこで過ごせばいいのだろう。当時、長女の慈慶(ゆき)さんは中学2年生、次女の有慶(ゆい)さんは小学5年生で、まだまだ親の助けが必要だった。これから進学でお金がかかる時期なのに――。頭の中が真っ白になった。
 両親と姉の家族が暮らす栃木県の実家に電話した。小野崎さんは三人姉妹の末っ子。実家のみそ製造業を継ぐ上の姉(54)、自分と同じ薬剤師の仕事をしている下の姉(52)、どちらも頼りになる存在だった。
 「とにかく家に来て。これからのことを相談しよう」
 上の姉の言葉にうなずき、娘たちを連れ実家へ向かった。
 勤務先の薬局の上司には、その日のうちに電話で告げた。「すみません。私、がんです。とりあえず何日か休みます」・・・

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