医療・健康
朝日新聞社

天疱瘡 〜患者を生きる〜

初出:朝日新聞2012年12月4日〜12月9日
WEB新書発売:2014年2月10日
apital

このエントリーをはてなブックマークに追加

 口に口内炎が次々とできた女性。のどの粘膜がただれていた男性。いずれも天疱瘡という難病でした。皮膚や粘膜が重いやけどのような状態になるのです。(文中の肩書、年齢などはすべて掲載当時のものです)


口がしみて食べられない


 「わっ、何これ。のどがしみて、痛い」。車のエンジンをかけ、エアコンの冷風を顔に受けたとたん、思わずせき込んだ。
 東京都に住む女性(62)がのどの不調に気づいたのは2007年暮れ。ゴルフの練習に出るときだった。次第に痛みは増したが「おせちを作らなきゃいけないし……」と我慢した。
 翌年の正月休みが終わったころ、近くの耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、うがい薬をもらった。しかし、歯が茶色になるほどうがいをしてものどの痛みは消えない。友人の皮膚科医に相談しても原因は分からなかった。
 やがて口内炎が次々にでき始めた。ほおや舌の粘膜のただれが常に3〜4カ所あり、歯ぐきは「吸血鬼のように」真っ赤になった。
 「私の歯、まさか抜け落ちるの?」。3月ごろには、歯肉がそげていくように感じた。近くの大学病院の口腔(こうくう)外科に行くと単純疱疹(ほうしん)(ヘルペス)ウイルスの感染が疑われ、抗ウイルス薬が処方された。しかしやはり症状は変わらなかった。
 虫歯が1本もないのが自慢だった。なのに痛くてちゃんと歯を磨けない。若い歯科医が「きたない口だなあ」とつぶやくのを聞き、悲しくなった。
 痛みが増すにつれ、食事が難しくなった。辛いものやしょっぱいものがしみる。サラダドレッシングやトマトの酸味も絶対だめだ。
 食べられるのは、コーンスープや具なしの茶わん蒸し、プリン、おかゆ……。ホウレン草や白身魚はミキサーにかけ、のどに流し込んだ。
 「それは天疱瘡(てんぽうそう)という病気かもしれない」。心配した息子が歯科クリニックの知人の歯科医に相談すると、聞いたこともない病名が飛び出した。
 皮膚や口・のどの粘膜がはがれ、やけどのような水ぶくれやただれができる難病。自分の皮膚や粘膜を攻撃する「抗体」ができてしまう、免疫の病気だ。
 知人の紹介で4月下旬、天疱瘡に詳しい慶応大病院(東京都新宿区)歯科・口腔外科の角田和之(つのだかずゆき)さん(44)を訪ねた。舌や歯ぐきのただれを見て、角田さんも天疱瘡を疑った。
 このころ、内ももやひざの裏の皮膚にも、水ぶくれができ始めていた・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

天疱瘡 〜患者を生きる〜
216円(税込)

口に口内炎が次々とできた女性。のどの粘膜がただれていた男性。いずれも天疱瘡という難病でした。皮膚や粘膜が重いやけどのような状態になるのです。「患者を生きる」免疫と病気シリーズ。[掲載]朝日新聞(2012年12月4日〜12月9日、5500字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る