【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞社

弁護士サバイバル もがく法曹の卵 「お金、もうないよ…」

WEB新書発売:2010年8月20日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加


弁護士になったけど

 昼、東京地裁そばの日比谷公園。スーツを着た30代の男性がベンチに座り、かばんからおにぎりを取り出した。食費節約のため、毎朝、実家の母親に二つ握ってもらう。気ぜわしくぱくつくと、家のお茶を入れてきたペットボトルを傾け、胃に流し込む。
 襟元には、ひまわりのバッジ。弁護士だ。「昼食ぐらい、レストランで食べたいですねぇ」。10分ほどで食事を終え、法廷に向かった。
 2004年度以降に開校した法科大学院74校のひとつに入った「1期生」だ。司法試験はその前から受け続けていたため、2年で修了して合格したときには30歳を超えていた。東京都内で働こうと10カ所以上の弁護士事務所を訪問したが、年齢がネックになり、いったん地方に出た。
 だが、仕事が軌道に乗らない。「東京なら何か仕事はあるだろう」。そう考えて昨年秋、上京したが、甘かった。司法制度改革で弁護士は急増。新米弁護士に仕事は回ってこなかった。
 先輩弁護士の事務所の軒先を借りる「軒弁(のきべん)」だ。机と電話は使わせてもらえるが、給料は出ない。最初の2〜3カ月は収入ゼロ。日中、事務所でネットサーフィンをして過ごすことも多かった。
 春ごろから刑事事件の国選弁護人などの仕事で1件あたり10万〜15万円と少し稼げるようになった。ただ、登録した弁護士の名簿順に仕事が回ってくるため、割り当ては半年に1回程度だ。
 稼ぎを補うため、割り当て分に手が回らない弁護士から譲り受ける。「交代してもらえませんか」。呼びかけメールが、引き受けたい弁護士たちの携帯電話に一斉に届く仕組み。5分ほどで決まってしまうので、すぐに返信する。携帯が手放せなくなった。
 月収は20万〜30万円、年収は300万〜400万円ぐらい。事務所費や弁護士会費などの経費を差し引くと、残るのは半分ちょっとだ。昨年は新たにスーツを買うのも我慢した。仕事に必要な法律書の購入も月に数千円以内にとどめている。「困っている人を助けたい」と弁護士を志したのに、仕事を見つけるので精いっぱいの現実。「こんな生活にはもう疲れました」・・・

このページのトップに戻る