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朝日新聞社

死刑の現場 刑場潜入ルポ

WEB新書発売:2010年9月3日
朝日新聞

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◇厳粛、死刑の現場 東京拘置所、刑場公開
◇《いちからわかる》死刑制度の現状
◇《解説》裁判員時代、「生の姿」もっと


厳粛、死刑の現場 東京拘置所、刑場公開

 入り口に清めの塩が盛られ、お香のにおいが立ちこめる。東京拘置所(東京都葛飾区)の刑場は、厳粛な雰囲気に包まれていた。2006年12月以降、17人の死刑が執行された場所。報道機関の記者として初めて入り、死刑囚の「最期」の姿をたどろうとした。

 木目調の壁に藤色のじゅうたん。思っていたより「執行室」は明るかった。じゅうたんの中央には、赤い正方形。ガーゼで目隠しされた死刑囚の首にロープがかけられ、立たされる「踏み板」の場所を示す枠だ。よく見ると、赤黒いしみのような跡が三つあった。
 枠のそばから、直径20センチほどの大きな金属の輪が、床から壁を伝うように四つ取り付けられていた。ロープは公開されなかったが、執行の際は直径3センチ、長さ約11メートルのロープが、四つの輪を通して天井の滑車にかけられるという。
 空調の静かな音だけが聞こえる執行室。だが、踏み板が開いて死刑囚が下の部屋に落ちるときは、大きな音が響くと説明を受けた。
 「死刑囚がまさに命を絶つ、きわめて厳粛な場所だ」として、階下の部屋への立ち入りは許されなかった。ただ、検察官ら立会人が執行を見届ける「立会室」からは、コンクリートの床の薄暗い部屋が見えた。かすかな消毒液のにおいが、わき上がる。踏み板の真下には、格子のふたで覆われた排水溝が口を開け、「生と死の境」を感じさせた。
 死刑囚が執行室の隣にある「前室」で拘置所長から正式に執行を告げられてから、この部屋に落ちるまで、わずか数分だという。
 法務省幹部によると、執行当日の朝、多くの死刑囚は、日々を過ごしている「房」から出される際に、刑務官のただならぬ雰囲気で執行を察知するのだという。短い間に自分の身に起きることを、どこまで理解できるのだろうか・・・

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