【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

政治・国際
朝日新聞社

河村流 リコールの乱 混乱する名古屋市政の行方は

WEB新書発売:2010年9月10日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加


署名集め、総力あげ

 河村たかし・名古屋市長は、どうやって市議会解散の直接請求(リコール)に必要な36万6千人分の署名を集めようとしているのか。その作戦は、地上戦と空中戦の二本立てだ。




 署名初日の10年8月27日午後3時。河村市長の個人事務所前で行われた署名集めの出発式に詰めかけた約70人の中には、市長の衆院議員時代からの後援会「ハトの会」の支援者が目立った。
 ハトの会は、後援会の旅行で「バス50台を動員する」と言われる組織力を誇る。リコールの署名は郵送では受け付けられず、「受任者」が対面で所定の署名簿に書き込んでもらうことが必要。戸別訪問などによる地道な呼びかけがかかせないため、ハトの会のメンバーは、その「実動部隊」の核の一つとなる。
 また、議会解散が実現した場合に行われる出直し市議選に、河村市長が代表を務める地域政党「減税日本」が擁立する候補予定者も署名集めに携わる。市長は約40人を擁立して一気に議会(定数75)の過半数を占めたい考え。関係者は「候補予定者にとっては、自分で集めた署名が自らの後援会名簿にもなりうる。署名集めに気合が入るはず」と説明する。
 河村市長の古巣の民主党からも同党国会議員の秘書数人が派遣され、市長の個人事務所に泊まり込みで署名集めの作業に加わっている。
 こうした地上戦とともに、普段は市政に関心の薄い若年層などに働きかける空中戦にも力を入れる。市長は9月27日までの署名期間中、市長の応援団長を名乗る俳優の菅原文太さんや大阪府の橋下徹知事ら旧知の著名人に次々と応援を要請する方針。自らもできる限り街頭に立って協力を呼びかけるという。
 署名集めの実務を束ねるのは支援団体「ネットワーク河村市長」だ。代表を務めるのは鈴木望・前静岡県磐田市長。市長とは同窓の一橋大の学生時代からの付き合いで、「減税や地域委員会の政策に共鳴」して、リコール運動に参加したという。


市長、署名訴えVS.市議会、非難決議

 名古屋市で河村たかし市長が主導する市議会解散の直接請求(リコール)の署名集めが2010年8月27日に始まったことについて、市議会は同日、議員総会を開き、河村市長の姿勢を非難する決議をした。「議会制民主主義を否定し、憲法や地方自治法の精神を踏みにじるもの」と主張している。
 一方、河村市長の支援団体は同日午後から、市中心部・栄に特設会場を設けて市民に署名を呼びかけるなど署名集めを本格化。夜には市長自身がネオン街・錦三を練り歩きながら「市長を選んだ民意は実現されねばならない」と訴えて回った。


 議会側は9月27日までのリコール署名期間中、市長の政治手法を批判するため、街頭で決議文にある議会側の考えを訴えたり、シンポジウムを開催したりする方針。9月上旬に開会する9月議会で、市長の不信任決議案を提出する動きもある。決議後、横井利明議長は報道陣に対し「河村市長の情報発信力は認めざるを得ない。市民が間違った選択をされることのないよう、我々も街頭に出て市民に訴えていきたい」と語った。
 決議文は、河村市長が首長と議会との「二元代表制」に否定的な考えから議会を解散させようとしていると言及。「本来議論すべき景気対策などの課題が置き去りにされ、市政運営の停滞が深まる」と批判している。


対話閉ざし、一点突破 「議会に話、通じん」

 27日正午、名古屋市・大須商店街の「コメ兵」前。携帯電話のカメラを向ける人だかりの中心に、河村たかし市長がいた。「市民税1割減税は貫かないかんの。ぜひ、署名を応援してちょうよ」


 署名集めの期間は1カ月。そのスタートに衆院議員時代から何度も街頭演説を繰り返してきた定位置を選び、「出陣の声」を上げた。見ていた人たちの顔を見て、手応えを得たように引き揚げていく。
 昨春の就任から1年半。その行動力や発信力で人気を集める河村市長が、市議会解散のリコール戦略を周囲に口にし始めたのは昨秋ごろからだ。恒久減税の実現をめぐって議会と対立を深めていた。
 市長の個人後援会の長谷川守男会長(77)は幾度となく思いとどまるよう説得した。「もうちょっと議会と話し合いして、何とかならんか」
・・・

このページのトップに戻る