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朝日新聞社

富士登山は「タダ」で良いのか 「環境保全協力金」による有料化

WEB新書発売:2010年9月10日
朝日新聞

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「富士銀座」といっても大げさではないほどに登山者が増えた最近の富士山観光と登山。山梨県側の登山者はすでに23万人を突破。その登山者を対象に、富士吉田市長が2011年7月の実施に向け調整を進めているのが「環境保全協力金」だ。富士山の保全と安全な登山を、と任意で協力金を集める構想だが、これまで「タダ」で登れた富士山が「有料」になることについて、声を拾った。


まずトイレ問題 「議論を」の声も

 10年8月17日。堀内茂富士吉田市長は、8合目あたりまで登って登山道の混雑ぶりやトイレ事情を確認し、自身が言い出した環境保全協力金の構想についても吉田口の山小屋関係者らから意見を聞いた。これに同行した。

 標高は3千メートル近く。市長と山小屋の経営者らとの間では、次のようなやりとりがあった。
 「安全な登山をしてもらうためにも、0泊2日の『弾丸登山』は控えるべきだ。慣れない人が高山病にかかり体調を崩す」
 「協力金を徴収するのは使い道をはっきりと示せるならば賛成だ。6合目にある仮設トイレに代わる、きちっとしたトイレの建設費に充ててはどうか」
 複数の山小屋関係者は協力金採用に非常に前向きな反応を示したが、これは無謀な登山を看過できない山のプロの忠告だと感じる。
 この夏山シーズン中も、7合目下山道トイレは順番を待つ人の長い列ができた。堀内市長は「便器の数が少ないので、別のトイレを新たに設ける必要がある。協力金の導入について関係する自治体や団体から全面的な理解を得たうえで、増設をめざしていく」と喫緊の課題のひとつである認識を示した。
 富士吉田市は、人件費を除く施設などの運営経費で毎シーズン13万円を負担している。ほかに富士河口湖町が7万円、忍野村は3万4千円。西桂や山中湖、鳴沢の町村も負担し、山梨県は241万5千円である。
 吉田口は、静岡県側の登山口と比べても格段に登山者が多く、これから先、ブームがいつまで続くか予想がつかない中、トイレの問題は深刻だ。
 深夜、ご来光を見るため頂上を目指す登山者の頭のライトが、はるか下から延々と続いた。9合目近くから見下ろしたその光景は、夜空の星ほどあるといっても冗談じゃないほどで、驚いた。
 市の協力金導入への基本的な考え方は、こうだろう。
 是が非でも富士山を世界文化遺産登録したい山梨県。そのふもとの富士吉田市が、安全で安心な登山の環境を、訪れる人に提供するのは当然。しかしこの登山ブームをみれば、山への負担はかなり大きく、さまざまな経費をまかなうためには協力金構想の実現が急務になる。
 では、なぜ「入山料」ではなくて「協力金」なのか。・・・

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