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経済・雇用
朝日新聞社

アメリカが日本型長期不況に陥る 「失われた10年」以上に深刻

WEB新書発売:2010年9月17日
朝日新聞

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春先まで復活への出口が近いとみられていた米国の景気に急制動がかかってきた。失業率が10%近い高水準にある中、住宅販売が急激に落ち込み、個人消費がふるわない。米経済が失速すれば、日本経済への影響は甚大だ。変調をきたし始めたアメリカ経済について3人に聞く。


米メリーランド大教授 ラインハート氏


 ――米経済の低迷が長期化すると示唆する論文を、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の目の前で発表しました。なぜそう考えるのですか。

 「日本を含めて、第2次世界大戦後に世界で起きた15の経済危機について、前後それぞれ10年間を分析した」
 「分かったのはパターンが非常に似通っているということだ。危機の前に10年以上かけて借金が大規模に積み上がる。そして、危機後に同じぐらい長い時間をかけて借金を解消していく過程が続く」

 ――借金解消の局面では何が起きますか。

 「経済活動に破壊的な作用をもたらし、低成長、高失業、不動産価格の低迷に陥る。先進国について言えば、危機後の10年間の成長率は、危機前10年間の成長率より1%低くなっていた。不動産価格は15〜20%程度低下し、失業率は5%高くなっていた」

 ――米国のいまの失業率は9・5%。危機前は4〜5%だったから、ぴったりですね。この状態が長期化してしまうということですか。

 「失業者が多い状況や、経済成長の低迷が、近い将来に解消される可能性は低いと思う」

 ――では日本と同じことになると。

 「そうなる可能性は高い。さらに指摘すれば、不況に対処するために財政赤字が拡大し、政府債務が非常に急速に積み上がったが、これも日本の経験にとても似ている。私がハーバード大のケネス・ロゴフ教授と行った調査では、政府債務が国内総生産(GDP)の9割を超えている期間は、歴史的に各国は低成長に陥っている」
 「1997年から98年にかけてのアジア危機の際、アジア諸国は(ほかの地域の景気が良かったので)輸出主導の景気回復を成し遂げられた。今回は先進国の経済が同時に下降している。米国が輸出を通じた景気回復を期待するのは非常に難しい」

 ――米政権は、自分たちは日本より迅速に行動したから、日本のような長期低迷に陥らないと強調しています。

 「その見方には同意できない。(サブプライム)危機が起こってから3年たつが、問題を引き起こしたのは借金なのに、我々はまだ借金の泥沼にはまったままだ。これは(借金過多の)バランスシートの問題だ」

 ――オバマ政権や、FRBはそうした問題を直視しているのでしょうか。

 「(問題の受け入れを)拒絶している状態にあることを非常に懸念している」


家計の借金漬け深刻

〈解説〉教授が指摘するのは、住宅バブルでの借金を急拡大させた米国経済が、その借金を縮小するには長い期間が必要で、その間はリスクを取れず、高失業状態も続いて、経済は低迷せざるを得ないということだ。
 話を聞いて、8月下旬に取材に出かけたノースカロライナ州ウィンストン・セーラム市のことを思い出した。・・・

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