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科学・環境
朝日新聞社

アジア「水」争奪戦 枯渇する中国の水資源

WEB新書発売:2010年10月1日
朝日新聞

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◇水、かき集める北京 900キロ南に巨大ダム建設 追いつかぬ供給量
◇中国成長、水問題に直面


水、かき集める北京 900キロ南に巨大ダム建設 追いつかぬ供給量

 周辺国が警戒するくらい、中国は深刻な水問題を抱えている。
 高さ170メートルを超える巨大ダムから、クレーンがゆっくりと資材を運ぶ。長江流域にある湖北省丹江口市で、かさ上げ工事が進んでいる。最終的に、周辺の34万人が立ち退きを迫られる。
 約900キロ北の首都・北京に水を送る「南水北調」の一端。例えるなら、北海道に琵琶湖2個分ほどのダムをつくり、東京まで運河を通して水を送るような計画だ。


 この夏から本格移転が始まり、年内に10万人が居を移す。「慣れ親しんだ土地を離れるのはつらいが、国家事業に協力できるのは名誉なこと」。地元で食堂を経営する張声均さん(52)は引っ越し準備に追われていた。120キロ離れた隣村に一家6人で移る。市当局から180平方メートルの2階建てをあてがわれた。
 不満の声もある。隣接する河南省の村に住んで20年になる蔡斌さん(36)一家は、土地などの補償が不十分だとしてとどまる。村の約70世帯は2010年7月中旬までにすべて移転したが、蔡さんは「大事な事業だと思うが納得できない」。
 北部の水不足を南部の水で救うという「南水北調」計画は、半世紀以上前の毛沢東時代に持ち上がった。文化大革命などの混乱と資金不足から、一時は暗礁に乗り上げたが、首都の深刻な水不足のために復活した。
 丹江口ダムを起点とする「中央ルート」を含め、計画は3ルート。政府は2002年以降、すでに計約880億元(約1兆1千億円)を投じている。予定通り14年に中央ルートが開通すれば、北京方面に運ばれる水は、数年後に最大で年95億立方メートルになる。
 だが、それでも水不足は解決できそうもない。中国政府に近い研究者の一人は「温暖化で予想される北部での水不足は、供給量を上回る。南水北調は、根本的な解決にはならない」と指摘する。北部の降水量は減少傾向にあるうえ、今後の気温上昇で地表からの蒸発量も増え、水不足がいっそう進むと見るからだ。
 中国の1人あたりの水資源量は、世界平均の約4分の1。北京市では、その10分の1しかないが、水需要はますます高まっており、経済成長を止めかねない。

温暖化で脅威拡大 水確保、さらに困難に
 抹茶のような緑色の湖面。生臭い風が鼻を突く。雲南省昆明市のテン池(ティエンチー)は、中国一汚い湖と言われる。かつては子どもたちが泳いでいたが、1980年代以降の急な都市化と工業化で、未処理の生活排水などが大量に流れ込み、藻の一種アオコが異常発生した。


 中国政府が10年6月に公表した環境白書によると、26カ所の代表的な湖沼のうち、浄化して飲料水に使えるのは6カ所だけ。テン池を含めて9カ所は農業にも工業用水にも使えない。長江や黄河など7大水系も飲料水に使えるのは観測地点の6割しかなかった。
 異常気象も頻発している・・・

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