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「赤い奇跡」はなぜ起きたのか ソフトバンク、7年ぶりパ・リーグ制覇の真実

WEB新書発売:2010年10月8日
朝日新聞

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真っ赤な本拠で西武を3タテ 歓喜のゴールへ

 2010年のプロ野球パ・リーグは、ソフトバンクが7年ぶりに制した。優勝へのマジックを「1」としていたソフトバンクは9月26日、楽天との今季最終戦に3−8で敗れたが、2位西武が先にサヨナラ負けしたため、試合中に優勝が決まった。前身(南海10、ダイエー3)を含め、14度目。ソフトバンクとしては、初めての栄冠だった。

 ソフトバンクは、球界再編騒動が起きた04年オフにダイエーを買収して誕生。6年目で、ついに頂点に立った。
 今季は9月に入って4連敗するなど一時は首位を明け渡した。ターニングポイントは、18日からの西武3連戦だった。「福岡最終決戦」を前に、球団はファンに赤いものを身につけて来場するよう呼びかけた。7月の「鷹(たか)の祭典」で、「カチドキレッド」のユニホームで西武を3タテ。あの再現を、と願った。そして、真っ赤に染まったヤフードームで3連勝。勢いは衰えず142試合目で再び首位に立ち、先にマジックを点灯させていた西武を土壇場で逆転した。
 楽天との今季最終戦。3回の攻撃中だった。打席には松中。ソフトバンクベンチに、「西武サヨナラ負け」の一報が入る。秋山監督が表情を崩し、大石ヘッドコーチらと握手を交わす。監督、主将の小久保の目が潤んだ。
 この優勝で得たものは大きい。
 優勝の分岐点となった西武戦。最後の3戦目は1点差で逃げ切ったが、三塁の松田が漏らした。「守っていて、緊張感が、正直、怖かった」
 先発野手で優勝を知るのは小久保ら3人だけ。一発勝負のトーナメントのような状況で、若手が勝者にしか許されない経験を積んだ。小久保は言った。「若手が成長した。勝って報われたのは(優勝を逃すのと)えらい違いや」。
 3回の攻撃が終わると、監督の選手への握手攻めが続いた。だが、勝ってレギュラーシーズンを終えることが、一番。5回の攻撃前には円陣が組まれた。8回には3連打と松田の犠飛で2点を返し、最後まで戦う姿勢を貫いた。
 この日、試合のあったKスタ宮城は因縁深い球場だ。08年。王監督のラストゲームはサヨナラ負けで最下位に。昨季はクライマックスシリーズの第1ステージで敗れ、同じ一塁側ベンチで小久保は悔し涙にくれた。
 1年後。痛恨の記憶が刻まれた球場は、大激闘の末につかんだ栄光をかみしめる舞台となった。


〈1〉奇跡の扉を開いた3連戦

 9月18日。2位ソフトバンクは、本拠ヤフードームに優勝マジック4の西武を迎えた。ゲーム差は3・5。最後の直接対決3連戦だ。残り6試合から、奇跡の逆転優勝への扉が開いた。

◎小久保 「相手にプレッシャーを」決勝弾
◆第1戦(9月18日)=延長11回
 西武
 101 020 003 00|7
 000 013 030 02|9
 ソフトバンク

 秋山監督はあきらめていなかった。
 最後の浮上のチャンスとなる西武3連戦の直前、千葉でロッテに1勝2敗。第3戦は零封負けを食らった。
 選手たちの逆転優勝への思いは、なえかけていた。主将の小久保でさえ、「目の前で胴上げを見たくない思いだけで頑張る」ともらした。しかし、秋山監督はあきらめていなかった・・・

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