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朝日新聞社

海に膨張する中国  「尖閣」が日本に突きつけた課題とは

WEB新書発売:2010年10月15日
朝日新聞

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強硬中国、海で膨張

 中国を含む複数の国・地域が領有権を主張するスプラトリー(南沙)諸島やパラセル(西沙)諸島が浮かぶ南シナ海。この海では、中国をめぐる緊張は日常になりつつある。
 2010年6月中旬、ベトナム・トンキン湾沖。ベトナム漁民が長く漁場としてきたこの海域で、いつものように操業していたベトナム漁船が次々と中国当局に摘発された。同月末までに拿捕(だほ)された漁船は31隻にのぼった。中国は4月末、「5月16日から8月1日までは、北緯12度以北の海域を禁漁とする」と一方的に通告してきていた。摘発は、この措置に従わなかったから、ということのようだった。

 だが、ベトナム国内ではこの中国の行動は、一切伝えられていない。中国に反発する在外ベトナム人の団体が情報を入手してインターネット上で明らかにしたことで発覚した。ただ、ベトナム国内からこのサイトや事件を伝えるブログなどにはアクセスできない。
 ベトナム外務省は6月下旬に「スプラトリーとパラセルはベトナム固有の領土である」とする報道官声明を発表した。事件を受けたものとみられるが、中国への言及はなかった。
 中国は、周辺の海に対する支配を広げるために次々と行動を起こしている。経済成長を支えるのに欠かせない海底資源をおさえるため、巧みに既成事実を積み重ねながら、南シナ海で膨張を続ける。同時に空母建造を含め海軍の増強を急いでいる。
 「禁漁通告」は、中国がこれまでも使ってきた手法だ。中国は南シナ海で、1990年代から漁業者の避難施設、海洋調査施設……さまざまな目的を持ち出してスプラトリーの小島や岩礁に建物を造ってきた。軍事転用が可能な施設もある。2001年に突然、「南シナ海での漁業を6月から8月まで禁止する」と宣言し、他国の漁船の排除に乗り出した。
 多数の漁船団を送り込み、それを保護する名目で漁業監視船を派遣するやり方もそうだ。スプラトリー周辺ではいま、多い時には1千隻近い中国漁船が操業し、マレーシアとの間で摩擦を引き起こしている。10年4月からは大型漁業監視船が常時、監視行動を開始。9月29日、広東省湛江市で最新鋭監視船「漁政310」の完成・引き渡しがあった。報道によれば、2500トン級でヘリコプターを搭載できる。
 周辺の東南アジア諸国は緊張を強いられているが、中国への強い抗議や報復措置といった先鋭化は起きていない。「中国と経済の相互依存を深める中、平和や安定を脅かす事態に発展させないことがきわめて重要」とマレーシア海洋研究所のナゼリー・カリド氏は言う。
 尖閣諸島沖の衝突事件は、海に張り出してくる中国が日本の間近にまで来ていることを印象づけた。しかし、南シナ海ではすでに中国、東南アジア諸国、米国の間で攻防が続いている。・・・

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