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朝日新聞社

東国原知事は宮崎に何を残したか  トップセールス・入札改革…

WEB新書発売:2010年10月15日
朝日新聞

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観光・県産品を刺激

 まだ残暑が厳しかった2010年9月下旬。平日にもかかわらず、宮崎県庁には観光客が次々と訪れていた。お目当てはやはり知事。カメラを手にした観光客が、一目見ようと知事室の前を行ったり来たりした。
 就任後、県庁正面玄関に置かれた等身大パネルも人気。観光客は「触ると御利益がある」とのうわさもある額をなで、記念写真を撮った。延岡市の漁業児島正繁さん(32)は「知事のおかげで県に活気が出た」と感じるという。

 県庁に勤めて30年以上という男性警備員は「知事が退任したら、もう県庁に観光客は来んのではないだろうか」と心配する。就任前、県庁を見に来るのは「小学生の社会科見学くらいだった」。
 県総務課によると、県庁を訪れた観光客は、就任直後の2007年度が約40万人、08年度が約42万人、09年度が約32万人。それ以前は統計を取っていなかった。
 警備員は「知事の代になって、正面階段の大理石に含まれるサンゴが注目されるなど、県庁の魅力が再発見された」と振り返る。彼らも観光客のカメラのシャッターを押すなどPRに一役買ってきた。「知事が去り、もし観光客がいなくなっても、我々は通常の警備を続けるだけです」
 県庁そばの「みやざき物産館」の売り上げは、06年度は約1億円だったが、就任後の07年度は約7億円、08年度と09年度はそれぞれ約8億円と増えた。
 就任直後には、知事の似顔絵をあしらった商品がずらりと並んでいた。イラスト入りメモ帳を製造した宮崎市の印刷会社は「多い時で年間100万円ほどの売り上げがあり、看板商品だった」と振り返る。しかし、ブームが落ち着き、09年製造を中止した。
 物産館を運営する県物産貿易振興センターの牧嵜智子営業課長は「イラスト入り商品はかなり減った」と話す。「トップセールスで地鶏やマンゴーなどの良さが伝わり、知事のイラストがなくても十分売れるようになったということではないでしょうか」

知事頼みでない誘致策模索も

 県庁は観光地化されたが、県全体の観光客数は、実はほとんど増えていない。
 県観光推進課によると、06年の県内外からの観光客数は1216万3千人。07年は1234万5千人と増加したが、翌08年は1217万7千人に戻った。同課はガソリン価格の高騰や世界同時不況の影響があると分析するが、県は、知事頼みではない観光客誘致策も打ち始めた。
 「恋」という物語性で、神話にちなんだ縁結びスポットなどの観光情報を発信する「宮崎恋旅(こいたび)プロジェクト」。20〜30代の女性をターゲットに、昨年から観光案内やグルメ情報を載せた冊子を作り、ホテルなどで配布する。担当する福崎寿主査は「知事ばかりに頼っていても仕方ない。『宮崎に来れば恋がかなう』『癒やされる』といったイメージを広め、来てもらう動機を積極的につくっていきたい」という。
 10年は、官民一体で県内のサーフスポットの魅力を発信する「波旅(なみたび)」プロジェクトも発足した。県みやざきアピール課の杉尾大樹主任主事は「いい波がある限り客は来る。知事が代わっても波は変わりません」。サーフショップや住民らと協力し、浜辺の清掃やシャワーの整備などで魅力を高めていくという。
 知事のPR効果を試算したことのある電通九州宮崎営業所の井上知弘所長は「右肩下がりの観光をやや増にとどめたのが知事」と功績を評し、「地鶏や宮崎牛はブランド化し、食べた人には魅力が残るので販売の落ち込みは少ないのではないか」と言う。
 そして「後任が誰になっても、知事のイメージはぬぐいされない。いい意味でも悪い意味でも、東国原色は染みついてしまったと言えるでしょうね」と語った。・・・

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