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朝日新聞社

地デジ難民になりたくない 迫るアナログ停波、現場の対応を岩手で見る

WEB新書発売:2010年10月15日
朝日新聞

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「映らぬ」住民ほんろう

 岩手県久慈市夏井町の山本忠孝さん(67)は2010年7月、地デジ対応テレビに買い替えた。「テレビを換えたら映るものだと思っていた……」。だが、画面は黒いままだった。
 山間部が多い同市内では、山の陰やくぼ地などが原因で地デジの電波が届きにくい地区が約50ある。山本さんの家がある地区も、その一つだ。
 山本さんの家の裏は山、周りにも木が何本もあるため、今付いているアンテナを調整しても受信できない。そこで、電波の届く場所にアンテナを建て、テレビを見られない人たちで電波を共有する「共同受信施設」の設置を検討することとなった。
 9月中旬、総務省県テレビ受信者支援センター(デジサポ岩手)の担当者が、山本さんの家の近くで地デジの電波が良好な場所を探す「受信点調査」を行った。

 今後、設置の予算が分かったら組合を組織する。加盟者で設置費や維持管理費を負担するため、一人でも多くの人に組合員になってもらうために山本さんは1軒1軒訪ねて歩くのだという。地デジが見られるのは、まだ先だ。

9600世帯見られず

 デジサポ岩手によると、県内でアナログが見られたのに地デジが視聴できない「新たな難視地区」は、10年8月末現在で550地区、判明している。世帯数は約9600だ。10年1月には271地区、約3300世帯だったが、受信機の普及で地デジが見られない世帯の存在が続々と明らかになってきている。
 岩手は受信機の普及率は66・7%で全国ワースト2位(総務省調べ、10年3月現在)。全国平均83・8%に比べて低迷していることを考えると、今後も増える可能性がある。
 これらの世帯に対し、共同受信施設の設置は有効な対応策の一つ。県によると、県内ではアナログ放送用の共同施設を地デジ用にすでに改修したのは約6割。新設の共同施設は最終的には100カ所を超える見込みだという。

高負担の世帯も

 設置には、アンテナを建て各世帯にケーブルを引いてと、費用がかかる。国やNHKから補助金が出るが、残りは自治体の補助やそれぞれの組合が支払う。建てる費用は場所によって異なるが、県によると、これまでに設置が決まった施設では、1施設あたり400万円〜1億円程度と、1組合あたりの加盟世帯数などで差が出ている。
 住民経費負担を減らすためには組合の人数を増やせばいいが、「うちは映りは悪いが見られるからいい」「負担額によっては入らない」など、各世帯の判断があり、住民間での協議も難しい。加えて、アンテナから家までつなげるための電柱の維持管理費などは住民が払わなければならない。
 完全地デジ化まで300日を切り、しきりにテレビCMなどで国が地デジ対応をせかすのは、工事などを必要とする対応には時間がかかるから。デジサポ岩手の太田谷夫センター長は「時間にまだ余裕があると思っている人も多いのかもしれないが、地デジの対応は今すぐにでも考えて欲しい」と言う。

 その一方で、10年8月末に久慈市の公民館であった地デジが映らない地域を対象とした説明会に出た住民からは、こんな声もあがった。
 「地デジに変えてくれなんて誰も頼んでいない。今までテレビは見れたのに」・・・

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