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朝日新聞社

チープマネーが世界に流れる 金融緩和競争の行き着く先は?

WEB新書発売:2010年11月19日
朝日新聞

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ドル洪水、世界覆う

 米連邦準備制度理事会(FRB)は2010年11月3日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、11年6月末までに6千億ドル(約49兆円)の長期国債(米国債)を金融機関から買い入れることを柱にした追加の金融緩和策を決めた。国債購入を通じて低金利で大量のお金を流し、米国景気を刺激するのが狙い。中間選挙で大敗したオバマ政権に代わり、中央銀行が景気対策を推し進めるかのようだ。だが、米国の金融緩和は世界のマネーの流れをいびつにして、「通貨安競争」や「バブル」といった副作用も生みつつある。

大敗、米政権動けず

 米中間選挙の大敗から一夜明けた11月3日、記者会見に臨んだオバマ大統領は終始厳しい表情だった。「米国民にとってナンバーワンの懸念は、経済であることには疑いの余地がない。必要な前進ができていないという事実に、私には直接の責任がある」
 10年9月の全米の失業者数は1477万人を数え、失業率は9・6%に上る。中間選挙で勝利した共和党のベイナー下院院内総務も「10人に1人が失業している現状は、選挙の勝利を祝っている時ではない」と自戒したほどだ。
 その深刻さは、住む場所さえも追われる人たちを生んでいる。米不動産調査会社によると、10年7〜9月、全米206都市圏の65%にあたる133都市圏で前年よりも住宅の差し押さえが拡大した。
 最悪はネバダ州ラスベガス地域。25軒に1軒が住宅ローンが払えないのに価格下落で売却もままならず、銀行から差し押さえの手続きを受けたという。不動産業を営むサンディーさんは自分が売った物件が差し押さえられていないかを見回る毎日だ。「ネバダ州の住宅の7割は含み損を抱えている」
 高失業と、住宅などの資産価格の下落。余裕のない暮らしが米国の国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費の低迷を招き、米経済の先行きを暗くしている。
 だが、オバマ政権は米中間選挙で経済再建の主導権を失った。米国では「小さな政府」を標榜(ひょうぼう)する共和党を中心に、財政赤字の縮小を求める声が強まっている。米中間選挙で共和党が躍進し、オバマ政権が景気対策のために財政出動するのは難しくなった。
 そこで、期待を一身に集めるのが米国の中央銀行にあたるFRBだ。
 「経済回復のペースを強めるため、証券保有を拡大することを決断した」。FRBは3日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)で、11年6月末までに長期国債(米国債)を6千億ドル(約49兆円)購入する追加の金融緩和に踏み切った。
 国債購入を通じて、低金利で大量のお金を流し込む「量的緩和」で、企業や個人の投資意欲をかきたてようという狙いだ。2008年秋のリーマン・ショック後に導入した後、縮小していたが、再び踏み切った。
 だが、その効果を疑問視する声は根強い。すでに金利は十分下がっており、企業に投資意欲が乏しいことこそが問題だとみられているからだ。
 ラインハート・元FRB金融政策局長はこう代弁する。「財政当局が機能せず、政策を打つ意欲と能力がある当局はFRBだけ。だからやる、ということ」

日銀、通貨安競争を警戒

 しかし、FRBの金融緩和は副作用の危険をはらむ。
 最も大きいのが「ドル安」。金利が下がり、お金が大量に出回れば、ドルを売って他の通貨を買う動きが強まる。通貨高になった国は輸出が伸び悩むため、何らかの対策を打たなければならず、金融緩和と通貨安の競争を生む。主役の一つが日本だ。
 日本銀行はもともと11月15〜16日に金融政策決定会合を開く予定だったが、4〜5日に前倒しした。前々回(10月4〜5日)の会合で総額35兆円の基金をつくり、新たに国債や社債、不動産投資信託など5兆円分を買い入れる追加緩和策を打ち出したばかり。日銀はこの投信の買い方の詳細を早く決めるために前倒ししたと説明するが、市場では「FRBの追加緩和で円高が進んだ場合に備えた」とみられている。

 日銀には苦い経験がある。・・・

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