【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

スポーツ
朝日新聞社

欠陥だらけの相撲監察委員会 八百長監視、機能せず

初出:2011年2月7日〜2月9日
WEB新書発売:2011年2月18日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本相撲協会は八百長問題を受けて、2011年春場所の開催中止を決めた。本場所の中止は65年ぶりだが、不祥事が理由の中止は史上初。力を抜いて相手に勝ちを譲る無気力相撲をチェックするはずの相撲競技監察委員会が、まったく機能していないことをさらけ出した。

◇第1章 取組監視、機能せず/処分なし・公表なし・物言えぬ空気…
◇第2章 発覚の夜、決めた/放駒理事長「中止しかない」/苦心の5日間
◇第3章 頼みは本場所手当/下位力士ため息
◇第4章 新弟子、消えた初土俵/謝罪なし「信頼踏みにじられた」


第1章 取組監視、機能せず/処分なし・公表なし・物言えぬ空気…

 2009年5月24日の夏場所千秋楽。7勝7敗の大関千代大海(現佐ノ山親方)は、すでに負け越しが決まっていた関脇(当時)把瑠都と対戦した。負ければ大関を陥落する千代大海は、突っ張って相手の出足を止め、右に回り込んだ。把瑠都は左手で首を軽く押さえられただけで、自ら体をひねるように土俵下に転げ落ちた。
 千代大海が歴代最多の13度目(当時)のカド番を脱したこの取組後、日本相撲協会の相撲競技監察委員会は「両者とも敢闘精神に欠けていた」として、2人を注意した。だが、「故意ではなかった」として処分はしなかった。
 日本相撲協会は、一貫して八百長の存在を強く否定している。一方で、力を抜いて相手に勝ちを譲るといった「故意による無気力相撲」が起きる可能性は認めている。監察委の制度は、このチェックのため1972年に始めた。負け越しそうな相手に勝ちを譲ったと批判された、前年の大関同士の対戦がきっかけだった。東京場所なら国技館の客席最上段の専用の部屋でモニターと肉眼で監視している。
 今回の八百長問題は、この監視体制がまったく機能していないことをさらけ出した。


 監察委の正副委員長と5人の委員は全員、親方だ。大相撲の世界では、親方になっても現役時代の「番付」や師弟関係で序列が決まる。監察委が「無気力」と判断して注意を決めても、対象力士の師匠が先輩だった場合、監察委の親方が「物言い」をつけるのがためらわれる空気がある。
 09年の秋場所で、十両力士が「無気力相撲を取った」として、監察委員長の友綱親方が力士の師匠の大島親方を通じて注意した際には、眉をひそめる親方がいたという。大島親方は、友綱親方の立浪一門の先輩だからだ。
 正副委員長を除く監察委員は、十両から幕内の結びまで、専用の部屋でそろって監視することになっているが、取組が続いているのに国技館から出る親方もいる。
 さらに、協会は監察委の注意を公表していない。注意した記録もなく、過去の注意件数は不明だ。無気力相撲と認定した力士には、処分を科す懲罰規定もあるが、処分された力士はこれまでにいない・・・

このページのトップに戻る