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経済・雇用
朝日新聞社

武装集団マオイスト、政府腐敗で拡大 〜インド経済の実相〜

初出:2011年1月31日〜2月3日
WEB新書発売:2011年2月18日
朝日新聞

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 中国とともに世界経済の牽引(けんいん)役を期待されるインド。だが、放置される格差と政府の機能不全を理由に、持続的な発展に疑問を投げかける声も上がり始めた。

◇第1章 見捨てられた公立学校
◇第2章 ヤミ経済「GDPに匹敵」
◇第3章 国の腐敗、武装集団を伸長
◇第4章 公機能欠く成長に不安


第1章 見捨てられた公立学校

 ニューデリーの中心にある私立学校デリー・パブリック・スクール。3歳から17歳までの児童・生徒を教える一貫教育校だ。毎年約1千人の卒業生のうち2割が名門のインド工科大学、2割が医大、3割が海外の大学に進学する。
 高学年になると、教室で1人1台のコンピューターがあてがわれ、ソフトウエアづくりに取り組む。図書館には、海外から取り寄せた文献がならぶ。ITを中心に台頭するインドの教育を一目見ようと多くの視察者が訪れ、6年前には小泉純一郎首相(当時)もやってきた。
 生徒の7〜8割は高級官僚の子弟だ。残りの多くも医者や大学教授を親に持つ。
 入学の競争率は60〜70倍。学費は年5万〜7万ルピー(9万〜12万円)と、中間所得層にも手が届く範囲だが、サイニ校長は、「選抜にあたっては、親がどんなバックグラウンドを持つのかも重視する」。ここで学ぶのは、恵まれた家庭に育ったほんの一握りの子どもたちだ。
 一方、生徒の約8割が通う公立学校では、まったく異なる光景が広がる。
 人口が約1億7千万人と、国内最大のウッタルプラデシュ州。州都郊外のバデル小学校を訪ねると、140人の児童を1人の教員が教えていた。人手が足りないので五つの学年を3グループに分け、課題を与えながら、ソムラタさん(24)が順番に見て回る。建物は狭く、1〜2年生のグループは校庭にゴザを敷いての授業だ。


 5年生のハシム君(10)にヒンディー語で数字の読み方を聞いてみた。1けたまでなら数えられるが、10を超えると読めなくなってしまった。隣のナズリーンちゃんに聞いても同じだった。「インド人は2けた同士の掛け算を暗算でできる」などという話は、ここでは神話なのだ。・・・

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