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政治・国際
朝日新聞社

「3ない議会」なんて、いらない 全地方議会を調査

初出:2011年2月12日〜2月13日
WEB新書発売:2011年2月25日
朝日新聞

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◇議会の半数、議案丸のみ
◇市長提案、全715議案修正なし
◇首長の多選、区長が代わり変節
◇議案の賛否、一覧公表
◇市の財政、独自に調査
◇地方議員、8年で39%減/一人当たりの報酬は微減
◇直接請求テコに定数減
◇財政悪化で首長も圧力
◇適正規模、住民と探る/意見募り合意づくり
◇議会が住民と向き合い、声を受け止める
◇「見てほしい」試行錯誤/託児室・ネット配信・日曜開催…
◇議員の政策条例、道険し/目立つ「コピー」「宣言」
◇丸のみをやめ、居眠りから脱皮できるか
◇いつでも住民投票、難問/「常設型」条例、設置わずか
◇「自治の主役」議会は自覚を

〈議会の規模〉 ひとけた議会、全国109カ所
〈議員1人あたりの面積〉 北海道、やっぱり広かった
〈議員1人あたりの住民の数〉 得票13票、2票差で当選
〈議員1人あたりの報酬月額〉 県議・指定市議、平均79万円
〈女性議員の割合〉 大都市近郊の街が上位に
〈議長在職年数〉 1〜2年交代、多いけれど


議会の半数、議案丸のみ

 全国の地方議会のうち、首長が提出した議案をこの4年間で一本も修正や否決していない「丸のみ」議会は50%、議員提案の政策条例が一つもない「無提案」議会が91%、議員個人の議案への賛否を明らかにしない「非公開」議会が84%。朝日新聞の全国自治体議会アンケートで、こんなていたらくがはっきりした。いずれにも当てはまる「3ない議会」は全体の3分の1に及ぶ。
 アンケートは2011年1月、都道府県と市区町村の計1797の議会を対象に実施した。回収率は100%だった。
 2007年1月からの4年間で、首長提案の議案数は1議会あたり平均414本。修正または否決が3本以下の議会が全体の82%を占めた。4年間で議員提案の政策条例の制定数が1本以下の議会が98%にのぼった。個々の議員の議案への賛否は、公開している議会は16%しかなかった。
 「行政監視」「政策立案」「情報公開」のすべてが不十分な議会は全国で653議会。京都、兵庫、広島、香川、福岡の5府県議会のほか、県庁所在地では福島、宇都宮、甲府、富山、金沢、和歌山、松江、松山、佐賀、大分、鹿児島の11市議会が該当した。


市長提案、全715議案修正なし
■宇都宮市

 北関東で唯一の50万都市、宇都宮市の議会(定数50)も「3ない議会」のひとつだ。
 ここは議員の本会議での一般質問を年2回までに制限している。理由は議会の「円滑な運営のため」で、4年前に「申し合わせ」で明文化した。気がつけば、4月の任期切れを前に一度も質問に立っていない議員が6人いる。
 この間、市長が提案した議案は715本。すべてそのまま通した。副議長で最大会派の自民党議員会(26人)の金子和義さん(64)はいう。「事前に我々の意見が反映されているから違和感はない」
 議会には自民をはじめ、民主、公明など計七つの会派がある。だが、政策条例を提案した議員はひとりもいない。
 議会広報は議案の採決について、議員個人はもちろん、会派の賛否すら載せていない。これでは市民は、議員の仕事ぶりを評価しにくい。
 こんな議会が2年ほど前、ちょっとした話題になった。
 「市の緊急経済対策に使ってほしい」
 自民党の全議員26人は2008年末、「より市民に役立つ方法」として、月額12万円の政務調査費4カ月分を返上した。無所属議員も応じ、返還総額は1300万円を超えた。
 リーマン・ショック後の一時的な対応とはいえ、住民のための政策を調査・研究する費用の返納に、他の会派からは「議員の仕事を放棄する自殺行為だ」との批判が出た。政調費の使い道について領収書添付が義務づけられた直後で「いい加減な使い方ができなくなり、余っていたのさ」との声ももれた。
 政調費は2010年度から月額10万円に減らしたが、最近は会派の宣伝紙にも使われる例が増えた。2010年末の自民党議員会のそれは8ページでオールカラー。議員の真ん中に市長が座る写真が3枚、全議員の顔写真つきの市の地図もあり、2011年春の統一地方選向けのチラシのようだ。

首長の多選、区長が代わり変節
■東京・杉並区

 全国初の首長の多選自粛条例を制定した東京都杉並区議会(定数48)は2010年末、それを廃止する条例を可決した。
 2010年夏に当選した新区長が廃止を提案した。すると、03年に条例に賛成し、その後もずっと議員だった16人のうち15人が、正反対の趣旨の廃止条例に賛成した。
 「区長の任期を縛る条例の是非は、当事者である区長の意見を尊重すべきだ」。2010年12月、最大会派「新しい杉並」(16人)の藤本直也さん(39)は、会派を代表して賛成意見を述べた。同じ会派で7年前に賛成した議員たちも同感だった。
 そのうちのひとりは「区民にどう説明するか悩んだ」と打ち明ける。そして「議員は地域の声を実現することが大事。そのためには行政とリンクしていく方がいいと考えた」ともらす。区長にすり寄ろうとする議員心理が透けてみえる・・・

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