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政治・国際
朝日新聞社

北陸新幹線は、まだ来ない

初出:2011年2月8日〜2月13日
WEB新書発売:2011年2月25日
朝日新聞

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〈敦賀以西ルート〉 幻の西川・橋下会談/「米原延伸」すれ違い
〈政治新幹線〉 政争の具、迫る見返り/もんじゅ「人質」攻防続く
〈福井駅部〉 「800m」縛る都市政策/認可の「担保」足かせに
〈県民負担〉 推進の足元、不要論も/並行在来線、存廃に危惧
〈交通網激変〉 2027年、リニアに「商機」/2014年金沢開業に「危機」
〈問われる展望〉 延伸後、ゆらぐ将来像/民間「公共交通再生を」


〈敦賀以西ルート〉 幻の西川・橋下会談/「米原延伸」すれ違い

 北陸新幹線の県内延伸に向けて「前進」となるはずだった2011年2月3日の行事が、前日に突然キャンセルされた。
 西川一誠知事と大阪府の橋下徹知事が、東京と大阪を北回りでつなぐ北陸新幹線の展望を協議する会談だ。だが、開催に向け、県庁と府庁との調整は難航した。焦点は「敦賀以西ルート」だった。


 北陸新幹線は2014年度中に金沢まで開業する。敦賀までのルートは公表済みで、着工認可を申請中。敦賀以西は1973年に国が決定した整備計画で「小浜市付近を経由する」とされるが、詳細は未定だ。国は現在、「小浜ルート」、琵琶湖西岸を経由する「湖西ルート」、東海道新幹線米原駅(滋賀県米原市)につなぐ「米原ルート」を検討している。

 北陸新幹線の大阪延伸を関西の発展につなげたい橋下知事は、2010年11月の近畿ブロック知事会議で「関西にとって不可欠」と明言した。2011年1月8日、自民党の整備新幹線建設促進議員連盟会長も務めた森喜朗元首相と全国高校ラグビー大会決勝を一緒に観戦した際、「米原ルートでいきたい」と直訴している。
 橋下知事はコスト面で優位な「米原ルート」を本命とし、沿線府県との協議に乗り出す。滋賀とは新年度から協議会を設置する方針だ。滋賀は建設費などの地元負担を理由に同ルート案に難色を示していたが、本来は負担の必要がない大阪や京都が、負担を分かち合う構想を橋下知事は掲げる。福井にも参加を呼びかけるという。
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  事前折衝は「米原ルート」で折り合えなかったようだ。両府県関係者の話を総合すると、沿線府県がルート案を一本化した上で推進運動を進めたい橋下知事に、西川知事が態度を保留したとみられる。府幹部は「『米原って言ってもらわないと意味がない』というのが橋下知事。我々も良い返事がもらえないと会っても仕方がない」と話す。
 大阪と滋賀が協議会を設立する「橋下構想」が報じられた2日、朝日新聞の取材に西川知事は「関西のバックアップは歓迎」としつつ、「ルートは国の責任。我々が決める立場でない」と従来の見解を繰り返し、協議への参加に否定的な考えを示した。
 前原誠司・国土交通相(当時)は2010年8月、北陸新幹線の敦賀以西ルートの見通しも、着工認可の判断材料にする考えを示した。
 ところが、西川知事は県議会で「敦賀以西ルート案を提示し、将来像を明確にすべきだ」と指摘されても、「まず敦賀までの着工認可」と答弁を繰り返し、自身の考えを決して明らかにしていない。
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 2010年末に国交省が県内延伸を見送ったなか、橋下知事が差し伸べる手をなぜ握らなかったのか。「小浜ルート」の切り捨ては、もう一つの政治問題を顕在化させる恐れをはらんでいるからだ。
 「嶺南は新幹線に無関心。ただ、整備計画の小浜ルートを捨てるなら、代わりに快速鉄道の要求が一気に噴き上がる」と嶺南の県議は話す。別の県議は「橋下知事の提案はチャンスだが、西川知事は嶺南の反発を恐れ、踏み込めないだろう」と指摘する。
 快速鉄道とは、JR小浜線上中駅(若狭町)と湖西線近江今津駅(滋賀県高島市)を結ぶ「琵琶湖若狭湾快速鉄道」構想だ。現在1時間55分の小浜―京都間を55分に短縮、大阪は日帰り圏になる。

 嶺南6市町は県を事業主体と想定した建設要望を繰り返している。地元の小浜市によると、424億円の事業費をめぐり、路線の3分の2を占める滋賀との交渉や建設費の地元負担が課題だが、今のところ県から明確な判断は示されず、進展はないという。
 西川知事は4月の知事選で3選を目指し、自民党県連から7日、推薦を得た。ただ過去に副知事の人事案を否決されるなど、県議会多数派の自民党県政会と、良好な関係とは言い難い。議会や国会議員らへの根回しをしないまま、「米原ルート」支持は困難だ。
 西川知事をよく知る経済関係者は言う。「まず、小浜と米原を両にらみできる敦賀まで。その先は建設中に検討するというのが知事の考え。何十年かかるかわからない大阪延伸をいま考えても仕方がない。ましてや選挙前のこの時期、口が裂けても言えない・・・

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