経済・雇用
朝日新聞社

産地偽装を防げ 氷見ブリ・一色ウナギ・関サバ…

2013年03月29日
(7600文字)
朝日新聞

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〈産地定義〉 あいまいさ、不正生む
〈現代的経営〉 伝統漁、管理は情報戦
〈産地間競争〉 「ライバル」たち熱く
〈透明性〉 「安心」産地表示探る
〈水産資源〉 「取る」から「保護」へ


〈産地定義〉 あいまいさ、不正生む

 玄関口に姿を見せた男性の表情は、少しやつれて見えた。2011年1月25日、県から産地偽装で是正指示を受けた氷見市の魚仲買業者「浅吉」の森谷貞夫代表取締役は「いい魚だったら、氷見沖でなくても氷見産として出していいと思っていた」とぽつりぽつり話し始めた。
 質のいい魚を安く。それが商売の信条だったという。地元老舗の一つに数えられ、役員を含め従業員は10人ほど。2010年7月期の売上高は9億円を超えた。
 森谷代表取締役は言った。「一定の数量があってのブランド。とる場所や定義を決めて範囲を狭くすると、不漁の時に本数が集まらない。あいまいにしてきたのは、そうならないための知恵だ」
 偽装事件が起きた背景には、一業者のモラルを超えて、産地を巡る不確かさが見え隠れする。

箱の管理、仲買業者任せ
 午前7時。ブリの競りが一段落すると、氷見市の魚市場のあちこちに青色の発泡スチロール製の箱が人の背丈よりも高く積みあげられる。業者が流れ作業で、寒ブリを氷と一緒に箱詰めしていく。

 ここでは長年、青い箱に入れて出荷してきた。いまでは、他産地との違いがひと目でわかる氷見産寒ブリの顔のようになっている。
 だが、実態として箱の管理は仲買業者任せ。業者が個々に作り、箱に記される文言も「ひみ」「ぶり」など統一されていない。
 県によると、浅吉は、福井県産と氷見産のブリを一緒に保管し、市場の作業場で浅吉が所有する青い箱に移し替えていた。「青箱」が不正に使われたことについて、氷見魚仲買商業協同組合の松本敏幸組合長は会見で「これまでも、(偽装を)やろうと思えばできただろう」。無念そうに話した。
 一般的に、氷見産寒ブリとは、北海道や東北地方から南下してきた回遊魚で、氷見沖や石川・七尾沖の大型定置網で取れ、氷見漁協卸売市場に水揚げされたものを指す。
 ただ、漁協はこれまで、積極的に氷見産寒ブリの定義づけをしてこなかった。
 「寒ブリ」と呼ぶ時期も、漁協幹部によると「寒の入りをした後。12月から翌年1月ぐらいだが、明確な期間はない」。重さについては「10キロ超でも、太ったものもやせたものもある。何キロ以上とは言えない」(漁協幹部)。森本太郎組合長は「天然ものだけに、線引きは難しい。寒ブリの取引は、業者のマナーで保たれてきたのが実情だ」と語る。

「証明書」手配に追われ
 分厚い雪に周囲を囲まれた、早朝の氷見の魚市場。漁協の一角で、職員が「産地証明書」の手配に追われていた。
 氷見漁協が発行し、市場から買った証拠として魚種や数量などが記される。氷見ブリの偽装疑惑が発覚してから、産地証明書が添付されていないものは、県外の卸売業者が受け取らなくなったという。ある仲買業者は「今まで証明書なんてつけたことがなかった」と嘆く。
 偽装の再発防止策として、地域ブランドの商標登録を目指す漁協では今後、氷見産寒ブリの定義として、海域や魚体の重さなどの範囲を定め、証明用のタグづけをする方針。「青箱」の統一に関してはコストの問題があるとして、仲買業者との調整もあり、今後の課題としたままだ。
 今回、産地偽装発覚のきっかけとなる指摘をした東京・築地。ある卸売業者は、冷ややかに見る。「信頼できない魚は買わなければいい。問題は名前じゃなく、いい品物かどうか・・・

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産地偽装を防げ 氷見ブリ・一色ウナギ・関サバ…
216円(税込)

産地偽装が発覚し、高級魚のブランドに大きな傷がついた氷見産寒ブリ。消費者の信頼をどう回復し、偽装をいかにして防ぐのか――。各地を歩き、再建へ向けたヒントを探った。[掲載]朝日新聞(2011年2月2日〜2月6日、7600字)

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